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配信日:2021/04/22  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[41229]

ケアプラン様式変更、今なぜ?

現場のケアマネには、戸惑いが広がりそうです。3月31日、厚労省が「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正の通知を出しました。ケアプランの標準様式と記載要領の一部見直しです。どのような見直しがなされたのでしょうか。

・厚労省通知Vol.958

1表の「生活に対する意向」に文言追加

主要な見直し部分について確認しましょう。通知の後半(52ページ)から、今回見直しとなった部分を赤字で示した資料があがっているので参照してください。

ケアプランの標準様式ですが、特に大きな点は、1表の「利用者及び家族の生活に対する意向」です。これが「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」という具合に文言が追加されています。

1表の「意向」の時点から、「課題分析の結果を記すこと」について、まず戸惑う人もいるでしょう。もっとも、見直し前の記載要領でも、「利用者及びその家族が(中略)どのような生活をしたいと考えているのかについて、課題分析の結果を記載する」となっています。

その点では、もともとの記載要領の趣旨を様式上で明確に反映させたといえます。

利用者の保有能力の把握に重点が置かれた

ただし、様式の明確化に伴って、要領でも「課題分析」について踏み込んだ追記が行われました。内容は以下のとおりです。(読みやすくするため句読点や「」等を補っています)

(1)課題分析の結果として、「自立支援」に資するために「解決しなければならない課題」が把握できているか確認する。

(2)(1)の(確認の)ために、利用者の主訴や相談内容等を踏まえた、「利用者が持っている力や生活環境等の評価」を含め「利用者が抱える問題点」を明らかにしていく。

ポイントは2つあります。1つは、「自立支援」に資するための課題解決の道筋が記されているかどうか。もう1つは、その課題解決の道筋において、利用者の「している・できている生活」を見極めつつ「利用者が保有している能力」に着目するという点です。

もちろん、「以前からやっていること」というケアマネも多いでしょう。注意したいのは、主訴や相談内容等はあくまで「踏まえる」にとどめている点です。むしろ、「利用者が保有している能力」と「その発揮を妨げている環境因子は何か」を把握することに重点が置かれていると言っていいでしょう。

2表「解決すべき課題」の記載要領も見直し

そのうえで、2表の「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」の要領で追記された部分に注目します。内容は、「優先度合いの高いものから順に記載する」ことについての具体的な考え方で、以下のように記載されています。(ここでも手順を分かりやすくするために、文章の構成を箇条書きにしています)

(1)解決していかなければならない課題の優先順位を見立てる(この点は変わりなし)。

(2)そこから目標を立て、
●利用者自身の力で取り組めること、
●家族や地域の協力でできること、
●ケアチームが支援することで「できるようになること」
などを整理し、具体的な方法や手段を分かりやすく記載する。

(3)目標に対する援助内容では、「いつまでに、誰が、何を行ない、どのようになるのか」という、目標達成に向けた取り組みの内容やサービスの種別・頻度や期間を設定する。

お気づきのように、「解決すべき課題」の部分で、すでに目標や具体的な援助内容の設定まで思考を進める流れが示されています。中には、「記す場所を間違えたのでは…?」などと思う人もいるかもしれません。

AIデータへの取り込みなどが狙いか?

なぜ、あえてここで「目標」「援助内容」の設定まで踏み込んでいるのか。これは、課題設定に際して、常に「目標」「援助内容」との間を行き来する思考を暗に求めている──という見方もできそうです。この部分で項目ごとの連結を強化することにより、思考の論理性を強化し、AIデータなどに取り込みやすくする──というのは考えすぎでしょうか。

加えて気になるのは、目標達成の手段として、(1)介護保険外(インフォーマル)での対応」が優先されている印象を強く受けます。

特定事業所加算の改定で、「インフォーマルサービスを含む、多様な主体等による生活支援サービスを包括的にケアプランに位置づける」ことが要件化されました。そのことを連想する人も多いでしょう。先の「思考の連結」に加えて、「保険給付だけに頼らないアウトプット」を仕掛ける──そうした「ケアマネジメントの再構築」を図ろうとする流れと見ることもできます。そのうえで1表の見直しは、「まず利用者の意向から」というケアマネの思考にメスを入れているのかもしれません。

問題は、そうした流れの中で支援職にとって重要なアドボカシー(利用者の権利・利益を擁護し、代弁すること)機能がゆがめられないかということです。今回の見直しについて、全国と地域のケアマネ関連団体なども議論を重ねていく必要があるのかもしれません。