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配信日:2021/04/20  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[6355]

「ダブル担当制」の急増に備えたい

新型コロナ禍で失職者が増える中、政府はそうした人々を介護業界で受け入れる施策に力を入れています。しかし、支援策を拡充しても、その効果に向けた課題は少なくありません。従来の処遇等の課題に加え、新たな「壁」となりそうなのが実は今回の改定です。

LIFEの操作マニュアルを読んでみた…

今改定で、多くの介護サービスに関連するしくみが「LIFE」による科学的介護の推進です。厚労省は、ID・パスワードの発行や情報入力のためのサイトを立ち上げていますが、その中で操作マニュアルも公開しています。

 この操作マニュアルをダウンロードし、ひと通り読んでみました。ひと言でいえばPC操作のマニュアルを読んでいるようで、日常的にこうした操作に慣れていない人にとっては、かなり「手ごわい」イメージがあります。

操作手順書は、大きくは管理ユーザー向けと操作職員向けに分かれていて、管理者だけでなく現場の介護職も習熟が必要です。恐らくは、現場リーダークラスを「操作職員」にあてるとともに、全職員向けの研修等を頻繁に行なうことが必要になりそうです。

ただし、マニュアルを読む限り、「エラーになった場合の対処」などの項目多く、それだけトラブルも想定されているようです。一定規模以上の法人であれば、ヘルプデスクに頼るだけでなく、こうしたシステムに強い人材を採用する可能性も出てきそうです。

LIFEだけではない。今改定で急増する実務

問題は、こうした人材を採用する余裕のない中小規模の法人です。管理者のみならず、現場リーダークラスに早急な習熟を求めるとすれば、その負担は決して小さくありません。その場合の勤務時間や手当て等をどう設定するのかは、大きな課題となってくるでしょう。

要するに、現場実務に「ケア業務」以外の負担が上乗せされる中、その部分をどう評価するかがますます問われるわけです。今改定での「上乗せ」実務は、先のLIFE操作に限った話ではありません。多くのサービスに共通する改定項目を見てみましょう。

たとえば基準改定では、以下のような取り組みの推進が示されています。(1)感染症対策、(2)BCP作成等の業務継続、(3)高齢者虐待防止、(4)ハラスメント対策、(5)施設系サービスを対象とした介護事故防止…といった具合です。

いずれも、委員会開催や研修の実施が定められていますが、それを進めるための担当者の任命が必要です。(4)の相談窓口にも担当者の配置が求められ、(5)では担当者配置を行なわないと減算となる改定も行われました。

いわゆる「渉外担当」も今までと勝手が違う

さらに、施設系では口腔・栄養にかかる加算の一部が基本報酬に組み込まれ、基準上で地域の管理栄養士や歯科医師、歯科衛生士に「協力を仰ぐ」しくみが共通化されました。通所介護の新たな入浴介助加算も、ケアマネや福祉用具担当者と(協力要請に向けて)どう交渉するかがポイントとなってきます。

ここで増えてくる「対外交渉」に向けて、いわゆる「渉外」を担う担当者の役割も増えていきます。これまで特定の管理者が担っていた役割かもしれませんが、それだけは回らない──つまり「渉外分野を細分化して、担当者を増やす」ことも必要になるわけです。

こうした改定の多くは、一定の経過措置が設けられています。しかし、新たな担当者を任命して、きちんと実務を果たしてもらうための時間的猶予は決して多くはありません。

 

近い将来、多くの職員が「ケア業務担当」+「改定による組織マネジメント上の担当」をダブルで担う可能性も高まるでしょう。こうした状況下で、未経験者や研修時間の少ない人材を新たに参入させるとなれば、どのようなことが起こりえるでしょうか。

ダブル担当制下での新規入職支援策への不安

現場は慢性的な人員不足ですから、事業者・施設としては「どんどん受入れたい」という意向もあるかもしれません。しかし、ここで十分な人事・労務管理のしくみを築いていかないと大きな混乱が生じかねません。

たとえば、新規の入職者のための義務づけ研修(上記の(1)~(3)など)も増える中では、研修を担う担当者の負担はさらに増えます。当の入職者側も、人員不足の中では「現場に慣れないうち」に、先に述べた上乗せ的な担当を任されるケースも出てくるでしょう。

新規入所者にしてみれば、事前に描いていた現場業務とは「勝手が違う」と思う場面も出てくるはずです。国は介護現場の魅力発信の事業などを行なっていますが、このあたりの「今までと違う」という部分の周知をどこまで図るかが問われることになります。

このあたりの「これから訪れる実情」を、介護現場への参入促進を訴える人々がどこまで理解しているでしょうか。以前も書きましたが、現場の業務改革等を進めるなら、介護従事者保護の基本法(国会制定法)などをまず定め、現場へのしわ寄せを防ぐ「防波堤」を確かなものにすることが不可欠でしょう。

事業所・施設としても、「これからどんな実務が増えていくのか」、それが「現場従事者にどんな負担をもたらすのか」を見極める課題分析力がますます求められています。