国会審議で指摘、3割負担めぐる課題

衆議院の厚生労働委員会で、介護保険法等改正案の審議がスタートしました。法案の詳細な中身については踏み込まれていませんが、3月3日の委員会では「3割負担」部分に絡み、野党側から「2割負担導入時の影響はどうだったか」を確認する質問が出されました。

2割負担の影響、受給者数だけで測れるか?

2割負担導入前後の利用者の動向については、昨年8月の介護保険部会に提出された資料が引用されました。それによれば、「受給者数の対前年度同月比(伸び率)をみると、2015年8月の施行前後において、傾向に顕著な差は見られない」としています。加えて、厚労省の老健局長からは、「関係者に対するヒアリングも行なっているが、やはり顕著な傾向変化は見られない」という答弁がなされました。

これに対し、野党側は「受給者数の変化だけでは、1人あたりの利用時間や回数の変化が反映されない。また、負担に耐えられずに特養などを退所しても、すぐに空きが埋まれば受給者数自体に変化は現れにくい」と反論しました。そのうえで、現場実態を反映した詳細な調査の実施を求めています。

利用料滞納や支払い困難による退所のケース

ちなみに、野党側から示されたデータとして、「21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会(以下、老福連)」が今年1月に公表した、全国の特養(7,708か所)・養護(936か所)等を対象した調査結果があります。それによれば、2015年改定以降で「利用料の支払い滞納が生じた」という施設が206、さらに進んで「支払いが困難を理由に退所」というケースが生じた施設が101あることが明らかになりました。その他、「多床室へ移った」が222、「配偶者の生活苦」が311となっています。

調査対象施設で滞納ケース約2%、退所ケース約1%という数字が、果たして多いかどうかは議論があるでしょう。とはいえ、「滞納」や「退所」に至るというのは、すでに負担の限界を超えているケースである点を考えれば、氷山の一角というのは想像に難くありません。

また、認知症の人と家族の会に寄せられた相談事例として、若年性アルツハイマーの夫を介護する人の話が取り上げられました。それによれば、「利用負担が月8万円増え、ショックで自分(介護者)も体調を崩した」といいます。質問者がヒアリングした中では、「年金が介護費用で消えてしまう。払えなくなったら妻を(特養から)退所させて2人で死のうと思っている」という声も紹介されました。

こうした厳しい現状に対する指摘を受け、塩崎厚労相は「全体として顕著な変化はないと認識しているが、必要な人に必要なサービスが行き渡っているか、意を尽くして把握していきたい」と答弁しています。

今後、国から新たな分析データは出てくるか

厚労省が「受給者数の変化」をもって「顕著な変化はない」としている点は、当ニュース解説でも「それでは実態把握として不十分ではないか」という点を指摘してきました。

ただし、受給者数変化のデータだけを見ても、それまで右肩上がりだった短期入所サービスの受給者数がマイナスに転じるなど、利用実態の変化をうかがえる部分もあります。つまり、家族のレスパイト部分での「サービス利用のあきらめ」が生じている可能性があり、高齢者夫婦世帯などが増える中で「介護者倒れ」も進みかねない懸念があるわけです。

今後、審議が進む中で、果たして厚労省側から新たな現状分析の見解が出てくるのかどうか。また、受給者数データだけでも他に読み取れる変化はないのかどうか。このあたりの踏み込みに注意が必要となるでしょう。

いずれにしても、3割負担(プラス今年8月から予定される月あたり自己負担限度額の引き上げ)が導入されるとなれば、水面上に現れる利用者の危機は2割負担の比ではないはずです。国は介護現場にPDCAサイクルを強く求めているわけですから、「制度の見直し」は「既存制度の厳格な検証」が不可欠なはず。今回の制度改正は、単に一つの法案審議にとどまるものではなく、国の検証作業のあり方そのものが問われているといえます。

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