ロボット導入の報酬反映は可能なのか

2018年度の介護報酬改定に向けた論点の一つが、介護ロボットやICT、(見守り等の)センサーなどを活用する事業所に対しての報酬・基準の見直しです。実際にこの部分の見直しが行なわれるとして、どのような具体策が考えられるのか。想定される給付費分科会の議論の流れと課題を予測してみましょう。

「見守りセンサー」の先行研究が進行中

介護保険部会の取りまとめでは、ロボット・ICT・センサー導入にかかる報酬・基準の見直しについて、根強い慎重論や前提としての施策の拡充(導入支援や研修機会の確保など)を求める声もあがっています。一方で、昨年の未来投資会議では、厚労相から「介護報酬等での評価によるインセンティブ付けの検討」が明示されました。政権の意向が強いポイントの一つであることに変わりはないわけです。

では、仮に「活用状況」と「報酬・基準の見直し」を連動させるとして、どのような具体策が想定されるでしょうか。厚労省はすでに「介護ロボット導入効果検証委員会(仮称)」の設立を表明し、まずは「見守りセンサー」にかかる先行研究を実施しています。

ちなみに、この「見守りセンサー」にかかる研究には一つの前提があります。その前提とは、夜間の離床などをアラームで知らせ、そのつど職員が対応するというのでは、「職員の負担はかえって増える可能性がある」というもの。つまり、アラーム発生時の状況分析や蓄積データの活用により、職員の負担軽減のプロセスなどの見直しに踏み込めるかどうか。これを実証研究の軸としているわけです。

仮に加算がつくとした場合の要件とは?

この点を踏まえたとき、介護報酬へと反映させるための考え方はどうなるか。単純に「導入すれば加算をつける」というのでは、職員の負担軽減を担保することにはならないので論外と言えます。では、「負担軽減に向けた道筋」を計画として立案し、これを「加算要件とする」というやり方はどうでしょうか。

厚労省が2016年度までに実施している介護ロボット導入支援事業では、補助金支給の要件として、上記のような「負担軽減のための導入計画」の立案を求めています。しかし、あくまで予算事業における支給要件であり、介護報酬上の評価に結びつけるという点では、費用対効果を実証するうえでは決して十分とはいえません。現行の介護職員処遇改善加算(処遇改善計画の作成などを要件としている)の効果が道半ばである点を踏まえれば、先の計画作成も要件としては疑問符がつきます。

一つ考えられるのは、先の導入支援事業を活用した事業者を対象とし、当初の計画通りの効果が上がっていることをモニタリング実証したうえで、そのプロセス(現場におけるPDCAサイクル)の完成を要件とするものです。つまり、補助金によって機器導入は行なったが、当初の計画通りの効果が証明できなければ加算は取得できないことになります。

ロボット導入は「魔法の杖」ではない!?

ただし、これにも課題があります。ご存知のとおり、2016年度の介護ロボット導入支援事業は申し込みが殺到し、予算オーバーを招く事態となりました。といって補助金規模を縮小すれば、法人規模によって導入格差が生まれやすくなり、それはそのまま加算取得の格差にもつながる恐れがあります。結局、加算自体が、現場の就業環境の格差をさらに広げてしまうというリスクも生じるわけです。

以上の点を考えると、法人規模にかかわらず「きちんとしたケアを行なっている事業所」の経営安定化を図るという前提に行き着かざるをえません。要するに「基本報酬の底上げ」と、「(労働法関係の遵守状況を中心とした)劣悪事業者の摘発強化」を同時に進めたうえで、はじめて「介護ロボット等の導入をめぐる加算措置」が機能するわけです。

結局はふりだしに戻るのか、と思われるかもしれません。しかし、そもそも「介護ロボット等の導入」は、現場課題を解決する“魔法の杖”ではなく基礎となる施策がしっかりしてこそ成り立つものであるはず。その原点回帰の議論につながるのなら、ロボット導入の論点も決して無意味にはならないはずです。

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