介護従事者の給与アップの実態とは?

介護給付費分科会で、2015年度の介護従事者処遇状況等調査の結果が示されました。結果は、再編された処遇改善加算I~IVを取得した事業所で、常勤介護職員の月当たり平均給与額は対前年比で1万2,310円の伸びとなっています。この数字を見る限り、処遇改善策が想定に近いレベルで効果を発揮していることになります。実際はどうなのでしょうか。

経営実態調査との照合がやはり必要では?

調査結果を掘り下げる前に確認したい点が一つあります。それは、介護現場の人手不足が危険水域まで達している状況の中、法人としては「人材確保のために給与を上げざるをえない」という圧力がかつてなく高まっている点です。つまり、再編された処遇改善加算を取得する・しないにかかわらず、給与増は至上命題となっているわけです。

ただし、基本報酬が下げられる中、法人側は「収益が厳しい中で人件費コストを上げる」ことを迫られます。次の報酬改定も引き下げ圧力が強まることが想定される中、基本給のベースアップを図ることは、経営基盤そのものを揺るがすことになりかねません。新規で確保した人材を雇用し続けるためには、確実な定期昇給も必要です。その展望も見据えなければならない厳しさがあります。

つまり、今回の調査結果そのものだけを見ても、現場処遇の安定的な発展を推し量ることはできないわけです。それをうかがうには、今後発表される「経営実態調査」の中身と照らしあわせることが必要になります。

定期昇給が急減、手当てで補完が急増!?

その点を頭に入れたうえで、今回の調査結果を見ると、案の定、法人側の厳しい立場がうかがえます。それは、給与等の引き上げ方法です。調査では、(1)給与表を改定しての賃金水準の引き上げ(いわばベースアップ)が17.7%、(2)定期昇給が59.8%、(3)各種手当ての引き上げ・新設が50.7%、(4)賞与等の引き上げ・新設が19.1%となっています。

この結果を、2年前の2013年度に実施された調査と比較してみましょう。すると、(1)は12.7%、(2)は77.3%、(3)は18.4%、(4)は11.2%となっています。調査の客体が異なるのでいちがいに比較はできませんが、2年前に比べて(2)の急減と(3)の急増は明らかです。つまり、処遇改善加算を定期昇給にあてる傾向が減った分、各種手当ての引き上げでまかなうという点が目立っているわけです。

(1)のベースアップも増えてはいますが、それでも1割台にとどまっている状況を見たとき、「基本給外の何かしらの手当て」で補っている様子が見てとれます。では、この「手当て」とは具体的に何か。いくつかの事業所や施設にヒアリングすると、研修手当という回答が目立ちます(内容はさまざまです)。中には、夜勤手当を引き上げたという話があり、この場合に職員の過重労働が問題になっていないのかどうかが気になるところです。

現場従事者の給与構造がますます不安定に

手当ての中身については、引き続き調査し、機会を改めて当コーナーで報告したいと思います。厚労省としても、手当ての中身をもう少し精査した調査が求められるでしょう。

さて、問題は「定期昇給にあてる」傾向が抑えられたことで、一定年数勤務しているベテラン従事者の処遇がどうなるのかという点です。調査では、10年以下の勤務経験者の月額給与のアップはおおむね1万円を超えていますが、これも定期昇給ではなく手当てで上乗せされている可能性があります。

いずれにしても、現場の給与自体は上がっていても、その構造が「手当てに頼る」という不安定なものになっている状況は明らかです。ちなみに、基本給を見ると(加算I~IV取得のケースで)介護職員の常勤の増額は3,000円に達していません。こうした給与の不安定構造が強まる中で、「介護従事者の給与が想定とおりに上がった」と手放しで喜ぶことができるのか。そして、「不安定構造でも構わない」と業界参入する人材が本当に増えるのか。法人の経営体質が限界に達する前に、より根本的な対策を考えるべきと思われます。

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