【結城康博】また無能なケアマネを増やすのか ケアプラン有料化は失策


《 淑徳大学:結城康博教授 》

懲りずに間違った施策を唱え続ける財務省に対し、明確に「反対」と言わせて頂きたい。ケアプラン有料化の話です。ケアマネジャーを性悪説のみで、利用者を性善説のみで語ることに妥当性はあるのでしょうか。【結城康博】

財務省の審議会が先月に提言をまとめ、その中で「居宅介護支援のケアマネジメントでも利用者負担を徴収すべき」と改めて訴えました。今年度の骨太方針には盛り込まれないようですが、それはコロナ禍、選挙前といったタイミングの問題です。2024年度の制度改正をめぐる議論では、ほぼ間違いなく重要な焦点として浮上するでしょう。

次は断行される可能性がこれまでになく高い − 。私はそう思います。もちろんまだどうなるか分かりませんが、現時点ではそう考えざるを得ません。

最大の理由は国の財政状況。コロナ禍で一段と悪化したことは皆さんご承知の通りです。既にかつて無い規模でお金を出しているわけですから、これから非常に厳しい引き締めが待っているとみるのが普通でしょう。ワクチンが行き渡って平時へ戻れる道も見えたとなれば、政府は歳出抑制の圧力をかなり強めてくるはずです。

ケアプラン有料化の財政効果は決して小さくありません。2019年度の居宅介護支援費の全国計は4768億円。仮に1割負担を徴収するとなると、単純計算で476.8億円の支出を毎年削減することが可能となります。

これを取るに足らない額とみなしてはいけません。今年度の介護報酬の引き上げに要した費用(*)の半分以上を賄える規模です。「現役世代の負担軽減につながる」などの主張も一定の説得力を持つでしょう。

* 引き上げは全体で0.7%。給付費の総額を12兆円と仮置きすると、その費用は年間で約840億円となる。

ただ、目を向けるべきは施策の副作用です。これがあまりにも強すぎます。財務省はケアプラン有料化のメリットを、審議会で以下のように説明しました。

「ケアマネジメントには公正中立性の問題が存在する」「利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすることで、ケアマネのサービスのチェックと質の向上にも資する」。

ケアマネ性悪説を完全に否定することは難しい、というのが私の立場です。専門職としての知識、技術が乏しく、そもそも高齢者の生活を守るモチベーションすら持たないケアマネが一定数いることは、やはり事実だと言わざるを得ません。ですからこれまで一貫して、そういうケアマネは速やかに介護現場を去るべきだと言い続けてきました。

財務省の主張で決定的に欠けているのは、必ずしも理想的とは言いきれない利用者・家族がこの社会に少なからず存在している、という視点ではないでしょうか。単に自分が楽をしたいがために介護サービスを使えるだけ使う − 。そういう人が全くいないことを前提として論じているようです。

ただ、やはり現実は"利用者性善説の神話"とは異なります。自立支援の考え方なども踏まえた素晴らしい利用者・家族が本当に大勢いるわけですが、そうでない人も一部にいると言わざるを得ません。

当然、介護サービスの性格上ある程度は仕方がないことです。だからこそ、介護保険にはこのことを念頭に置いた仕組みがたくさん組み込まれていますよね。財務省はそんな基本もお忘れでしょうか?

これぞ現場を知らない空論。目先の数字のみにとらわれた近視眼的な施策で混乱させるのは、もういい加減やめて頂きたい。

ケアプランを有料化すれば、法制度の趣旨を度外視して都合よくサービスを使おうとする利用者・家族が増えてしまいます。これに抗えるケアマネはどれくらいいるでしょうか。なんとか頑張るケアマネが大多数だと思いますが、何も意に介さずただただ迎合する無能なケアマネも増加するでしょう。その方がお客さんに選ばれやすく、経済的な合理性が高いこともまた問題です。

結果としてサービスの適正化は遠のき、給付費の膨張に拍車がかかると言わざるを得ません。目的と全く逆の効果が生じるわけですから、財務省にはぜひ慎重に検討して頂きたい。

日本介護支援専門員協会も反対声明を出していますが、少し迫力にかけますね。今度こそ力技で押し切られてしまうのではないでしょうか。心配です。

改めて明確に言っておきますが、大多数のケアマネは非常に有能で、利用者・家族も素晴らしい人がほとんどです。ただ、著しくモラルに欠ける例外も一定数いるのが現実で、ケアプラン有料化はそういう人を助長する改悪となるでしょう。いわゆる「言いなりプラン」の問題は介護保険の根底を揺るがすリスクを有しており、財務省はそのことをもっと強く意識すべきだと考えます。

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