LIFE活用を起動に乗せるには?

新たな介護報酬・基準の適用から、早くも1月半が経過しようとしています。複雑な実務も増える中、混乱の目立つのが「LIFEとのデータ連携」を要件とした加算の取得です。厚労省は、4月算定分のデータ提出についての期限延長を示しましたが、うまく起動に乗せることができるのでしょうか。

8月10日までの猶予期間での対応は可能?

LIFEのホームページ上に示されたFAQ(よくある問い合わせ)数は、5月3日時点で78項目にのぼっています。なお、ADL維持等加算について(データ提出の遅れ等から)「算定基準を満たすことの確認が間に合わない」ケースについては、4月30日付の疑義解釈でも改めて算定の猶予措置が示されました。

ちなみに、FAQで上がっている事項を見ると「セキュリティソフトの担当者や販売元への問い合わせ」を要する旨なども見られます。CVSファイルでのデータ取り込みで、互換性が問題となるケースなどもあります。

こうした状況を見ると、IT系の実務担当者が乏しい法人などで、8月10日までの猶予期間での対応が可能なのかが懸念されます。

現場従事者に与える影響・課題の調査も必要

もちろん、本格的なDB連携は始まったばかりなので、多少の混乱が生じるのは仕方ないという見方もあるかもしれません。問題は、ここまで「LIFE連携」を要件とする加算が増えたことで、仮に混乱が長期化すれば、収支にも影響を及ぼす可能性が出てくることです。

特に現在は、現場が新型コロナ感染症対応に追われる状況もあります。規模の小さな法人では、現場の感染対策を取り仕切る立場にある職員が、同時に「LIFEへの情報登録」を手掛ける入力職員を兼ねなければならない(あるいは、他の職員に入力等の指導を行わなければならない)ケースも見られます。

ここで業務過多によるトラブルなどが生じれば、「収支に影響を及ぼすかもしれない」というプレッシャーも加わって、一定のキャリアを持つ職員がつぶれかねません。厚労省は「2021年度の改定検証(LIFE活用については今年度から)」に取りかかろうとしていますが、LIFE稼働初年度の現場従事者に与える影響・課題も調査対象に乗せるべきでしょう。

CHASE対象調査では楽観論も見られたが…

ちなみに、介護給付費分科会では、2018年度介護報酬改定の効果検証等調査で、改定前からCHASEへの入力を行なっている事業所の状況を取り上げています。すでに当ニュース解説等でも取り上げてきましたが、改めて実務に対する負担感に着目しましょう。

まず、「これまでも継続的に評価・記録を行なってきた項目をCHASEシステムに入力することの負担感」ですが、「大きい」が53%。「どちらかといえば大きい(37%)」という回答を合わせると8割にのぼります。

また、「データ入力への負担を感じる場面(複数回答)」として、「システムへのデータ入力作業」が約8割でトップ。次いで、「システムの操作方法についての理解」が7割、「システム全体の理解」も約4割にのぼります。

一方で、ヒアリング調査では、「今後は負担が軽減される」といった予測も目立ちます。たとえば、⑴「(既存の)介護記録システムで評価・記録しているデータがCHASE(改定後はLIFE)に連携されるのであれば、入力の負担は大きく軽減されると思われる」、⑵「今後システムに慣れることで、短時間での操作が可能になると思われる」といった具合です。

科学的介護に必要な「従事者へのまなざし」

厚労省としては、こうしたヒアリング結果をもって「一定期間を経過すれば、現場も慣れることによって科学的介護は円滑に離陸する」という展望を描きたいところでしょう。しかし、先のFAQと照らしたとき、「本当にそうだろうか」という疑念も浮かんできます。

たとえば、上記の⑴は「CSVファイルでのデータ取り込み」が想定されるわけですが、FAQでも上がっているように「互換性」が問題となるケースも見られます。回答では、「文字コードの変換」や「介護ソフト・ベンダーへの確認」を求めていますが、こうした試行錯誤はしばらく続くことも考えられます。

また、⑵についても、加算算定に必要な様式変更が行われたことで、2018年度改定版では自動変換が行われません(FAQより)。評価項目を追加したり、病名記載でICD10コードの分類単位を参照するケースも生じます。

いずれにしても、「今後も改定のたびに問題が生じる」可能性を考えれば、「慣れれば楽になる」の楽観論で走ることは禁物かもしれません。LIFE入力が現場の課す負担について、定点観測を行なうしくみも求められそうです。

そもそも(特に新型コロナ禍での)現場実務の増大は、長い目で見れば、利用者の自立支援等のケアの質にマイナスの影響を与えることも想定しなければなりません。ICT化によって一人あたりの業務時間が軽減したといったデータはありますが、ここに「LIFEへのデータ提供」も含めつつ、改めて負担の可視化を進めていくことも必要でしょう。

真の科学的介護の実現には、利用者データだけでなく、現場従事者の状況にしっかりまざしを向けることも不可欠といえます。

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