【視点】本質は現場革新にあり 老施協がみた介護報酬改定

いよいよ明日に迫った新年度の介護報酬改定 − 。業界の有力団体として様々なレベルで議論に関わった全国老人福祉施設協議会に、大枠の構図やポイントをどう捉えているか尋ねた。取材に応じた小泉立志理事は、「今回は現場革新の改定」と語った。【青木太志】

※ この記事は小泉氏へのインタビュー取材に基づいてJoint編集部が作成したものです。

「非常にシビアな戦いだった」

今回の改定をめぐる議論は、全体の改定率をマイナスにしてはどうかというところから出発しました。ですから、その多寡はともかく最終的にプラスになったというだけでもホッとしている、というのが正直なところです。

新型コロナウイルスの感染拡大で介護現場は苦境に立たされましたが、非常に困難な状況に陥った業界は他にもあります。国の財政もますます逼迫するなか、財政当局もかなり厳格な姿勢で議論に臨んでいました。なんとかプラス改定にもっていけるかどうか − 。最初のうちは本当にそんなレベルの話をしていました。

そうした中で前回(+0.54%)を上回る結果になったのですから、参議院の園田修光議員をはじめ交渉に尽力された方々に感謝しています。老施協としても当然、介護現場の状況を国に伝えるべく組織をあげて全国的に活動しました。プラス0.7%では「不十分」という声もあるようですが、なんとか理解を得ようと主体的に必死で活動された皆さんのことを思うと、私はそんなことを言う気にはとてもなれません。それほどシビアな戦いでした。

もっとも、深刻な人手不足などもあって経営環境が厳しさを増す中での改定ですから、諸手をあげて喜べる結果とも言えないでしょう。

例えば我々が運営している特養。基本単位数は上がりましたが、そのほとんどは栄養ケアマネジメント加算が包括化されたアップ分となっています。単純に報酬が増えたとは捉えられません。新設された加算を算定する必要があります。しかしながら、LIFE関連の加算を算定するにはそれなりの労力と投資が必要となります。

「ここで変わらないといけない」

今回の改定では、介護現場に求められる仕事が非常に増えたことも重要なポイントです。感染症への対応、自然災害への備え、高齢者虐待の防止といった観点から、委員会の開催や研修の実施、計画・指針の整備などが新たに義務付けられました。これをどうこなしていくかが大きな課題です。

当然どれも非常に大切な仕事ですから、高齢者を守る立場の我々に課されるのは当然のことでしょう。ただ、委員会や研修ばかりしていても良い介護はできません。我々の仕事はやはりご利用者と向き合うことですよね。限られた時間をいかに有効に使うかを真剣に考えないと、本末転倒ということになりかねません。どうすれば効率化できるのか、我々はもっともっと工夫しなければいけないと思います。

今回は介護現場の革新を具体化するための改定 − 。私はそう捉えています。国は実際に柱の1つとして掲げ、多くの施策を打ち出しました。

介護業界はここで変わらなければいけません。私も古い考え方を持った人間ですが、今のままでは新しい時代に対応できないでしょう。ここで思い切って舵を切らないと、我々はいつまでも前向きな変革を起こせないままになると危惧しています。

発想を変えて可能な限り手間を省きましょう。パソコンやタブレットなどを使い、効率化できることはしていきましょう。記録ソフトなどに任せられることは、全て任せてしまいましょう。

本来なら効率化できる仕事に時間を費やしている職員はいませんか? もっと知恵を出せばまだまだ改善の余地があるはずです。業務負担を軽くすることは、人材確保の観点からも非常に重要です。皆が似たような状況にあるのですから、一緒に努力して前進していきましょう。

「一皮むけるきっかけに」

確かに簡単なことではありません。パソコンなどが苦手な職員も少なくないですし、慣れ親しんだ仕事のやり方を変えるには大きな苦労が伴います。軌道に乗るまでに時間もかかるでしょう。

ただ、手間が追加でかかるように感じるのは最初だけです。効率的な新しいやり方が浸透してくれば、必ず成果が見えてくるでしょう。ここが踏ん張りどころです。今回の改定を、我々が一皮むける大きなきっかけにしなければいけません。もちろん、自治体など行政サイドにもぜひ現場革新の対応を十分にして頂きたい。

私も偉そうなことを言える立場ではなく、自分の施設でどういうシステムを作ったらいいか必死で考えているところです。本当にやるべき仕事が増えますので、なんとか効率化して職員がご利用者と向き合う時間を増やさないといけません。

私は今のところ、開催が義務付けられた委員会や研修をできるだけまとめて行っていくことを検討しています。従来からそうしてきたのですが、今後もなるべく少ない機会で集中的に会議を開く方がより合理的なのではないか、と話し合っています。ビデオ会議ツールや記録ソフトなどをうまく活用すれば、更に負担を減らせるかもしれません。

質の高いサービスの標準化も図っていきたいです。ひとつの仕事にすごく時間をかける人と、必ずしもそうでない人がいますよね。ではどっちがいいのか? しっかりと確認して良い方へ寄せていくのはどうでしょうか。同じレベルの仕事を皆ができるようにする過程では、どこに無駄があるのかも自ずと見えてきます。省ける仕事を特定して皆で省いていけば、全体として大幅な効率化が図れるのではないでしょうか。

私も自分の施設のことをもっともっと考え抜いていきます。とても大変なことですが、このタイミングで何としてもやらなければいけない、我々が変わらなければいけないと思っています。

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