ケアマネドットコム

配信日:2019/02/07  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[13886]

ケアマネの処遇改善は制度全体を左右

日本介護クラフトユニオン(NCCU)が「2018年賃金実態調査」の結果を報告しています。これは、介護現場で働く組合員の賃金状況について、定点観測的に行なっている毎年3月と8月の変化などを調査したものです。概要についてはニュースでも取り上げていますが、現在の賃金状況の背景や今後定めるべきビジョンをもう少し掘り下げてみます。

ベテラン従事者に処遇改善の実感はあるか

09年から18年までの賃金の増加額が、4~5万円に至る──これについては、09年に始まった介護職員対象の処遇改善策の効果が表れたことは明らかです。ただし、「それだけなのか」という点にまず着目しましょう。

その着目点とは、介護分野の有効求人倍率が高止まりする中で、事業所や施設として「賃金アップを図らなければ人が集まらない」という事情です。介護人材不足の主たる要因は「(募集をかけても)新規の人材が集まらない」ということであり、これをカバーするうえで新規入職者の賃金を上げる(さらに、その賃金額を募集要項で明記する)ことが、事業者・施設にとっては最優先課題となってきました。

全産業の有効求人倍率が右肩上がりのトレンドを示し始めるのが09年なので、上記の09年から18年の介護人材の賃金の動きと符合することになります。問題は、新規の人材確保が最優先された場合に、入職後の昇給がどこまで手当てされるかという点です。

その間、度重なる基準・報酬改定が加わることで、現場リーダークラスに業務負担の増加(新人の育成やシフト管理、加算要件を満たすための実務など)が重くのしかかってきました。仮に「入職後の昇給や管理業務にかかる手当て」が後回しにされているとすれば、ベテラン組ほど「何のために働き続けているのか」があいまいになりかねません。

ケアマネジメント・スキルから処遇を考える

国としては、このあたりの課題を改善すべく、「昇給要件」を明確にした処遇改善加算の新区分を設けたり、今年10月予定の施策も勤続10年以上の介護福祉士の処遇改善を基本とするしくみとしました。しかし、それで「賃金と業務負担のバランス」を整えるだけの組織内の昇給構造を作り出せるのかといえば、厳しいと言わざるをえません。ここにケアマネの処遇改善の問題がかかわるからです。

そもそも、ケアマネの処遇改善に目が向いていないということは、「ケアマネジメントを昇給要件とする流れ」が視野に入っていないことになります。言うまでもなく、ケアマネジメントの視点はケアマネだけでなく、あらゆる介護職に必須のスキルです。言い換えれば、現場で介護職が培ってきたケアマネジメント・スキルを集大成し、専門的な実務の中で発揮しているのがケアマネとなるはです。

そのケアマネジメント・スキルの一つとなるのが、利用者の(自分は「こうありたい」という)主体性に光を当てることです。たとえば、介護現場における利用者の自立支援や事故防止などにおいても、この主体性という考え方を欠かすことはできません。

機能訓練でも、利用者自身の主体性を引き出せなければ生活行為の幅を広げることは困難であり、その生活行為にかかるADL・IADLの向上も進みません。利用者の主体性が伴わないということは、あらゆるケアの場面で利用者の「協力動作」が得にくくなることにつながり、それはさまざまな事故に直結します。

介護業務イメージUPとケアマネの処遇改善

このように、ケアマネジメント・スキルの育成・蓄積はすべての介護専門職の業務に共通することです。それを太い軸として賃金体系に反映できなければ、現場職員が「何のためにこの業務に就いているのか」という部分があいまいなままとなってしまいます。

この点を見すえれば、「ケアマネの処遇改善がなぜ必要か」に対する答えもおのずと明らかです。もちろん、「介護職がキャリアの頂点として見すえるのがケアマネだから」という進路上の動機づけもあるでしょう。しかし、もっと踏み込めば、「ケアマネジメント・スキルの頂点を目指さなければ、今手がけている日々の介護業務そのものの価値が損なわれる」という根本的な課題がかかわるからです。

国は「介護業務のイメージUP」に躍起ですが、何はともあれ、欠かせないのは「介護業務の社会的価値を明らかにする」ことです。つまり、自分に介護が必要になったとき、「それでも自分らしく生きることをサポートする技術とは何か」を明確に示せるかどうか。その技術の中心こそがケアマネジメントであり、その評価をきちんと定めなければ、介護全体の価値を社会的に示すことは困難でしょう。

こうした視点に立てば、ケアマネの処遇改善「も」必要なのではなく、介護保険制度そのものの持続可能性のために、ケアマネ「だからこそ」処遇改善が必要になるわけです。