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配信日:2019/01/10  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[6547]

混合介護推進の中で欠かせない議論

いわゆる「混合介護(選択的介護)」について、東京都と豊島区が、現行の規制の緩和を国に対して求めていく方針を固めています。豊島区については、2018年度から訪問介護にかかる混合介護のモデル事業を行なっていますが、今回は通所介護を対象に定めています。

厚労省が18年9月に出した通知を再確認

まず、厚労省が18年9月に発出した通知を改めて確認しましょう。内容は、「介護保険と保険外の両サービスを組み合わせて提供する」場合の取り扱いについてです。

この中の通所介護については、「通所介護としての内容と保険外サービスとしての内容を区分することは、基本的には困難」という認識を示したうえで、例外的に「区分可能」とするケースを以下のように示しています。

(1)事業所内において、理美容サービスまたは健康診断、予防接種、もしくは採血(これらは「巡回健診等」とされる)を行なうこと

(2)利用者個人の希望により通所介護事業所から外出する際に、保険外サービスとして個別に同行訪問を行なうこと(機能訓練の一環として通所介護計画に位置づけられた外出以外が対象。外出中は多様な活動への参加が可能)

(3)物販・移動販売やレンタルサービス

(4)買い物等代行サービス

これら以外に、以下の2つのパターンも想定されています。1つは「通所介護を利用していない休日や夜間等に、事業所の人員や設備を活用して保険外サービスを提供」、もう1つは「通所介護の利用者と保険外サービスの利用者の双方に対してサービスを提供」する場合です。後者は、両者が混在している場合でも、通所介護の利用者に支障がない範囲で体操教室等を行なうことは可能としています。

現場従事者、そしてケアマネの負担は?

その一方、通知では、上記のケースを実施する際の留意事項を細かく定めています。たとえば共通する事項として、(1)通所介護の提供時間には保険外サービスの提供時間を含めない、(2)保険外サービスの前後に提供した通所介護の提供時間を合算する(合算して1回の通所介護の提供として扱う)という具合です。東京都や豊島区としては、こうしたルールの一部緩和を求めることになると思われます。

考慮しなければならないのは以下の3点でしょう。それは、「利用者の利便性」「職員に長時間労働などの負担が生じる可能性」「保険外サービスをケアプランに組み込む中でのケアマネへの負担増の懸念」です。

利用者の利便性については、厚労省通知でも強く懸念されています。そのため、保険外サービスの運営規定について保険サービスとは別に定め、その重要事項を記した文書をもってていねいな説明をするとともに利用者の同意を得ることなどを求めています。

問題は後者の2つです。保険外サービスについては、介護保険の人員基準の枠外となります。介護保険の人員基準も、適正かどうかという議論はありますが、枠外になれば事業所の裁量がさらに広がることになります。もちろん、労基法などは適用されますが、慢性的な人材不足という現場の実情への配慮が足らなければ、現場リーダー等が「(トップ指令に対して)調整的」に長時間労働を強いられる可能性がないとは言えないでしょう。

従事者等の声を代弁する検討機会が必要

この点を考えたとき、混合介護の議論に際しては「それによって現場従事者の負担がどうなるのか」を検証することが欠かせません。

しかしながら、たとえば豊島区のモデル事業にかかる有識者会議のメンバーには、従事者側の代表となる委員は入っていません。被保険者団体として同区の高齢者クラブ連合会会長、関係団体として東京都社協の居宅事業者連絡会運営委員長、東京都の介護支援専門員研究協議会理事長がそれぞれ加わっていますが、あとは学識経験者のみです。

確かに、訪問介護のモデル事業の調査研究では、「介護職員に対して過重な勤務を強いる恐れがある」という意見は出されています。ただし、あくまで訪問介護における「指名」や「時間指定」にかかる意見の一つであり、(利用者保護等に比べると)混合介護全体の構造的な課題としては上がっていません。

一方、ケアマネへの負担増の懸念ですが、上記のようにケアマネ関連の団体代表は委員に加わってはいます。しかし、18年度モデル事業の公募要項では、「保険外サービスのケアプランへの位置づけ」や「研修の実施」、「ガイドラインの作成」、「実地指導やケアプラン点検」など、(混合介護によって)自立支援を阻害しない適切なケアマネジメントへの対応が示されているだけです。これらにともなう、ケアマネの負担増は課題となっていません。

東京都および豊島区の要望を受け、今後、厚労省内で規制緩和に向けた検討会が開催されるのであれば、上記の2つの課題について現場当事者の声を代弁する委員をきちんと立てたうえでの検討が望まれます。