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配信日:2018/12/13  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[1422]

「法務省令」頼みとなる入管法見直し

12月8日、参議院本会議で改正出入国管理法等が可決・成立しました。これにより、2019年4月に外国人労働者にかかる新たな在留資格が設けられます。衆参両院あわせて、わずか35時間強という異例のスピード審議となったわけですが、こうした経緯もふまえつつ現場として注視したい点を取り上げます。

改正入管法自体に「介護」の文字はない

新たな在留資格は「特定技能1号・2号」です。ここに介護分野が加わることは、国会審議等でも明らかですが、実は法律案自体には「介護」という文字は出てきません。

たとえば、新たな在留資格の法案上で示されている「対象となる特定産業分野の定義」は、以下のようになっています。「人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として、『法務省令』で定めるもの」

さらに、上記の分野で働く外国人の「特定技能」の定義は以下のような具合です。

●1号…「法務省令」で定める「相当程度」の知識または経験を必要とする技能

●2号…「法務省令」で定める「熟練」した技能

見てわかるとおり、法文上はあいまいな表現に終始していて、具体化は法務省令に一任されています。確かに国会の厚労委員会などでは、「特定技能」に必要な日本語スキル等についても議論されました。政府の見解では、1号については14業種が予定されています。

しかし、それはあくまでも法務省による省令改正をふまえた政府の意向であり、(厚労省など)他省庁の管轄に関連する分野では、改正法成立後に「法務大臣が関係省庁と協議して定める」(法案より)こととなっています。

「政府の裁量」で受入れ業種が増やせる?

こうした法案の不明確さについて、法案審議の序盤、野党の国会議員から以下のような質問主意書が出されました。それは、「(改正法が)来年4月に施行されるならば、具体的な受入れ業種を法案に入れるべきではないか」、加えて「受入れ業種を明記しない場合、今後は法改正を経ずに、政府の裁量で自由に受入れ業種を増やせるのか」というものです。

これに対し、政府は以下のように答弁しています。「当該産業上の分野を定める『法務省令』は、改正法案の『成立後』、その施行までの間に定めることを予定している」としたうえで、「『人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野』等の変化に応じ適時に当該産業上の分野を追加し、または削除する必要があるため、(中略)法律で規定することはしていない」とのことです。

ご存じのとおり、省令は国会ではなく各省庁が制定するものです。その制定に向けて審議会等での議論が行われるわけですが、その委員の選定などについて法務省の法制審議会の審議会令を見ると、「学識経験者のうちから法務大臣が任命する」となっています。審議会で業界団体等からのヒアリングが行われる可能性はありますが、どこまで現場の意向が反映されるのかは疑問が残ります。

省令頼みではない「考える」機会が必要

もっとも介護保険制度でも、現場が従うべき運営基準や報酬体系は社会保障審議会(介護給付費分科会)の議論を経て、厚労省令で定められる流れになっています。しかし、たび重なる省令改正に対し、「現場の意向とのズレ」を感じている人も少なくないでしょう。

介護保険がスタートしたとき、「走りながら考える」というフレーズがよく聞かれました。ここで問題なのは「考える」のは誰かという点です。本来「考える」べきは、保険料を負担する被保険者やサービスの利用者、そしてサービスを担う現場の従事者であるはずです。

ところが、実際に制度の枠組みを考える中心は厚労省と審議会の有識者であり、現場は「走らされて」いても、自ら「考える」機会をほとんど与えられません。こうしたすっきりしない状況が、今回の入管法改正後の省令作業でも引き継がれることになります。

今の時代、「世界情勢や社会環境の変化がスピードアップする中、適時の省令制定で対応する方が効率的」という考え方も強まっているようです。しかし、注意すべきは、「その施策が本当に適正なのか」をじっくり検証する機会も同時に薄らいでいくことです。

こうした時代だからこそ、「あえて立ち止まって、現場を含めたより多くの視点で考える」という風潮を取り戻すことが、多くの人の幸せに直結するのではないでしょうか。今回の改正法の施行を先延ばししてでも、慎重な省令制定を進めることが、介護現場の先行きを考えれば有益と思えてなりません。