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配信日:2018/05/14  カテゴリ[インタビュー]  閲覧数[2724]

= 日本介護福祉士会・石本会長 = 養成カリキュラム見直しにみる次世代の介護福祉士像 今後果たすべき職責とは?

社会環境の目まぐるしい変化に伴い、高齢者や障害者など支援を必要とする人が抱えるニーズの複雑化、多様化、高度化が進んできた。地域を支える専門職にかかる期待も以前より大きくなっている。

そうした状況に対応すべく検討されてきた介護福祉士の新たな養成カリキュラムが公表された。1年間の周知期間を経て、2019年度から大学や専門学校などでの教育が見直される予定だ。

新たな養成カリキュラムではどんな視点が重視されたのか? 「次世代の介護福祉士はこうあるべき、という将来ビジョンが反映された」。当事者として議論に関わってきた介護福祉士会の石本淳也会長はそう話す。詳しく解説してもらった。


《 日本介護福祉士会 石本会長 》

―養成カリキュラムの見直しはおよそ10年ぶり。出発点となったのはどんな問題意識ですか?

もともとを辿っていくと、やはり深刻な人手不足とサービスの質の向上に行き着くでしょう。この2つの課題を解決していくために関係者が話し合った結果、介護人材の構造を「富士山型」へ移行していくことになりました。新規参入のハードルを下げてすそ野を広げる一方で、専門職の知識・技術の高度化によって頂上を高くしていく― 。個々の能力を勘案した適材適所の配置、人材の機能分化をあわせて推進していくことにより、サービスの量と質を同時に確保しようという構想です。そうした新しい構造に変わるこれからの現場において、国家資格である介護福祉士が担っていくべき役割とは一体なんだろうか? そんな議論がカリキュラムの見直しにつながりました。公表された新たなカリキュラムは、「次世代の介護福祉士はこうあるべき」という将来ビジョンを反映した内容となっています。

―見直しのポイントは?

1つはチームマネジメント。今後の介護福祉士には、現場で中核的な役割を担うリーダーとしてチームを牽引していく素養が求められます。スキルや経験が不十分な職員も含まれる中で、自ら先頭に立ってサービスの質を担保していく専門職は介護福祉士の他にいません。そのため、リーダーシップやフォロワーシップ、人材の育成・有効活用、組織の運営管理、人間関係の構築、コミュニケーションなどに関する授業をより充実させることになりました。他にも例えば、認知症ケアの実践力の向上や介護過程の展開、医療との連携の強化などについての内容も強化されています。

―現場を引っ張っていくリーダーとして活躍できる人材を育てる、ということですね。

それが大きなポイントと言えるでしょう。リーダーに期待されることはとても多いのですが、私はダイバーシティ・マネジメントも非常に重要だと思っています。これからますます必要性が高まっていく視点ではないでしょうか。介護の現場には既に様々なバックグラウンドを持つ方がおられますが、今後はさらに多様な人材が参入してくることが予想されます。そうした人材をうまくまとめて良いチームを作る役割を、介護福祉士が担っていかなければなりません。そのための教養を皆が当たり前のように備えている、という状態にできたらなと考えています。

―今後の課題と考えていることは?

既に現場で長く活躍しておられる介護福祉士など、これから充実される教育の内容に触れていない方へのサポートがあります。いわゆる「実務経験ルート」で資格を取った方が多いわけですが、ネクストエイジが学んでくることを十分に修得していない場合も少なからずあるでしょう。もちろん、誰もが日々の業務に追われているのでやむを得ないことなのですが…。そうした専門職内に存在する「学びのギャップ」のようなものが、今回のカリキュラムの見直しによって広がる懸念があります。我々は職能団体として、研修会の開催などギャップを埋めていく取り組みに一段と力を入れていきます。


《 日本介護福祉士会 石本会長 》

―まだ結論に至ってはいませんが、検討のプロセスで介護福祉士が行える医療的ケアの範囲を広げてはどうかという提案もありました。

利用者さんの生活の質を高めるために我々が担うべき医療行為がある、ということであればもちろん否定はしませんが…。人手が足りないからとにかくやって欲しい、という安易な話であれば慎重にならざるを得ません。改めて言うまでもないことですが、医療行為というのは患者さんへの侵襲も伴う極めて重いものです。国民を危険に晒すことになりますので、決して軽んじてはいけません。どうしても医療的ケアの拡大が必要だと言うのであれば、十分な教育体制の整備をセットで考えていくことが絶対条件です。ただ現状をみると、たんの吸引の実施状況なども明らかにはされていないままです。まずはそうした実態を把握すべきで、その先の話をするのは時期尚早ではないでしょうか。

―介護福祉士が行える医療的ケアの範囲が広がれば、社会的な評価や処遇の改善につながるという指摘もあります。

安価な労働力として都合よく使われるようになるのではないか、という懸念の声もあります。医療職のヒエラルキーの最下層に組み込まれ、医師や看護師の下請けのような位置付けにされてしまうことは容認できません。我々は福祉職。支援が必要な人に寄り添って暮らしを支えることが本来の職能で、医療職とはまた異なる専門性を有しています。彼らとは一線を画しつつ、対等な立場で仕事をしていくことが大切だと考えています。

―会長が今、全国の介護福祉士に呼びかけたいことは?

リマインドですね。介護福祉士っていったい何をすべき専門職なのか、この機会に自分たちで改めて自覚することが大事だと思っています。

―介護福祉士がすべきこと?

心身の状況に応じた介護を行う― 。法律はそう定義しているだけですよね。多くの介護福祉士が介護保険の世界で働いていますが、高齢者への支援だけに仕事が限定されているわけではありません。末期がんの患者さん、障害をお持ちの方、子どもさん、避難所で暮らす被災者の方々…。相手がどなた様であろうとも、心身の状況に応じた介護によってその生活を支えていく使命を担っています。国家資格である介護福祉士は、国民の介護問題について幅広く責任を持っていくべきではないでしょうか。医療や看護の分野と同じ様に、我々の活動も広く国民の福祉に還元されるようにしていかないといけません。それが我々の責務です。

―職責の再確認が大事だということですか?

より深く幅広い知見が求められている、ということですね。職責を全うしていくために足りないことは何か? もっと学ぶべきことがあるのではないか? 研鑽を積み重ねて能力を高め、社会の大きな期待に応えていかなければいけません。そうした努力を続けることが、介護福祉士の価値や自信、社会的な評価を高めていくことにつながると考えています。そのことを今、我々がもう一度リマインドすることが大切ではないでしょうか? 介護福祉士はたくさんいます。全国の登録者数はおよそ150万人。ひとりひとりの意識が変わるだけで、今よりもっともっと大きな力を発揮できるようになるでしょう。支援を必要としている人に寄り添い、その人の暮らし、あるいは人生そのものを支えていくこの尊い仕事を、皆さんと一緒に発展させていければと考えています。