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配信日:2017/12/11  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[1663]

見守り機器導入策に欠けている視点

2018年度の報酬改定に向け、介護保険部会の報告書や日本再興戦略で「課題」と位置づけられたのが、ロボット・ICT・センサー等の導入にかかる評価です。まず具体策として出てきたのが、特養ホームとショートステイにおける「見守り機器」について。入所者の15%以上に設置した場合に、夜勤職員配置加算の要件を緩和することが提案されています。

そもそも最新の見守り機器導入の目的とは?

具体策として「見守り機器」がまず取り上げられたのは、介護ロボット等導入支援特別事業(2015年度補正予算)の活用対象機器で6割を占めていたことが背景となっています。

一口に「見守り機器」と言いますが、その種類は多様です。厚労省が提示している「介護ロボット重点分野別講師養成テキスト」によれば、ベッド上の利用者の動向を検知できるセンサーは、従来型のもので7種類、ロボット技術を使って自動認識機能を進化させたものが5種類示されています。今回の改定案が、どの範囲までを対象とするのかは未定です。仮に従来型のものまで広げた場合、使い方によって「本当に職員の業務負担軽減につながるのか」が不安視されるものもあります。

ちなみに、上記のテキストでは、見守り機器について以下のように強調しています。それは、「見守り(支援)機器は、単に高齢者の状態を常時把握しアラームの発生のつど、対応するためのものではない」ということです。あくまで、「アラームの発生時の状況を分析し、蓄積されたデータを活用することで、現状のケアのプロセスや内容を見直す一助とする」ことを主たる目的としているわけです。

一時的に「手厚い人員」が必要になる可能性

確かに、利用者一人ひとりの夜間における離床等の行動パターンを把握し、いわゆる「先回りの見守り」に向けた業務スキルの共有化ができれば、職員全体の業務負担につながる期待は高まるでしょう。しかし、そこに至るまでには、以下の流れが不可欠です。

(1)データをどうやって蓄積・分析するか。(2)(1)から生じる課題をいかに分析し解決策を導き出すか。(3)(2)をチーム内でいかに共有するか。(4)(1)~(3)をPDCAサイクルにかけ、短期間でいかに修正するかという具合です。

仮に、センサーの高度化(AIとの連動など)によって(1)が省力化されたとしても、利用者の心理・生活状況を反映させて(2)の課題分析を行なうのは人間です。そこから解決策を導き、チーム内で共有し、PDCAサイクルにかけていくとなれば、組織的なマネジメントが必要となるでしょう。ここでも、現場の職員が知恵を出し合い、リーダーが取りまとめて実践につなげる人的ノウハウが求められます。

いずれにしても、この「人の手」による流れを構築するには、現場でのしっかりとした組織づくりが必要です。そして、それなりの現場経験をもった人材が腰をすえて知恵を出し合うという環境づくりも欠かせません。つまり、進化した見守り機器を「現場の効率化」と「利用者の尊厳保持」の両立に結びつけるには、「機器の導入」と「人材の厚みを増すこと」を同時に進めなければならないわけです。

マネジメントを無視した施策では逆効果にも

以上の点を無視して、「最新機器を導入すれば効率化が図れる」という単純思考のもとに施策が進められるとどうなるのでしょうか。当然ながら、人的な介入に向けた環境が整わないまま、極めてバランスを欠いたマネジメントが進行しかねません。結果として生じるのは、「センサーが反応するたびに職員が走り回る」といった「人が機械に使われるだけ」という状況です。最悪の場合、現場職員の業務負担は増え、利用者の尊厳も阻害されるというまったく逆の結果が生じかねません。

いみじくも、今回の施策要件には、「見守り機器を安全かつ有効に活用するための委員会を設置し、必要な検討が行われること」も含まれています。厚労省も、適切なマネジメントの必要性は認めているわけです。となれば、その段階で「必要な人員を手厚く確保していくこと」が前提となっているはず。「夜勤職員配置加算が取りやすくなった」というだけでは、あまりに弱いのではないでしょうか。

結局のところ、「何のために介護ロボット等を導入するのか」という視点が失われたまま、目的と手段が入れ替わっていないか──これが現場の自然な受け止め方でしょう。現場職員と利用者が「導入してよかった」という実感を共有するには、ごく当たり前の組織マネジメントに立ち返らなければなりません。