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配信日:2017/01/10  カテゴリ[インタビュー]  閲覧数[2350]

介護保険制度改正、利用者の視点でどうみるか 家族の会が抱える「強い危機感」 認知症の人と家族の会常任理事 花俣ふみ代


認知症の人と家族の会常任理事 花俣ふみ代

3年に1度のサイクルで行われる介護保険制度の改正が迫っている。来年の通常国会における審議に向けて、国は実現を目指す内容を大筋で固めた。

軽度者の生活援助は原則として自費にすべき―。地域支援事業に移すサービスを増やすべき―。財務省などが訴えていたこうした改革は、業界の抵抗もあって採用を見送られることになった。一方で、利用者の自己負担を今より重くするという。現役並みに所得のある人を3割とするほか、介護の出費が家計を圧迫し過ぎないように設けている「高額介護サービス費」も見直し、ひと月の上限額を一部で引き上げるとした。加えて、2018年度に控える次の介護報酬改定への反映も視野に入れつつ、給付を抑制する施策を引き続き協議していく方針も示されている。

こうした中身をどのように捉えているのか。社会保障審議会・介護保険部会の委員として議論に参加し、利用者の立場で発言してきた「認知症の人と家族の会」の花俣ふみ代常任理事に聞いた。家族の会の役員をボランティアで務めながら、訪問介護のサービス提供責任者やケアマネジャーとして現場に関わり続けており、高齢者に寄り添ってきた経験は非常に豊富だ。

花俣常任理事は、今後の制度の行方に「強い危機感を持っている」と吐露した。サービスの縮小や負担増が続いていき、「制度がなかった昔の時代にどんどん戻ってしまう」と懸念しているという。(聞き手・編集:Joint編集部 青木太志)

「国は青写真を変えるつもりはない」

-審議会での一連の議論を振り返っていかがですか?

当初はかなり思い切った改革を求める声も出ていたので、一体どうなることかと思っていたのですが…。我々と同じような意見を持っている委員もいて、少し安心した面もあったんです。財務省などが主張していたことも、最終的にはほとんど見送られることになりました。強引にすべて実施されるようなことはなかったですから、一定の理解を得ることはできたのかもしれません。

-見直しの中身はそれなりに評価できると?

いえ、評価まではできません。そんなに楽観的ではないです。今回に限っては思ったよりひどくならなかった、というだけの話ですね。我々は今も強い危機感を持っています。

-今後のことですね?

国の「青写真」は何も変わっていないというか…。給付を縮小していく流れですよね。そこに向かっていることは間違いない。今後も検討を続けていく方針がはっきりと示されています。訪問介護の生活援助などがターゲットになるでしょう。そうした流れを転換させるまでには至っていません。今回でちょっと足踏みしたのかな、という印象は持ちましたけどね。必ずしも予定通りにはいっていないな、というか。でもやっぱり、国は青写真を変えるつもりはないんだろうと受け止めています。

「新しい総合事業は机上の空論」

-生活援助は引き続き焦点になりそうですね。人員基準を緩和して報酬を下げる。そんな案が浮上しています。

生活援助ってとても大事なサービスですよね。生活援助より身体介護の方が重要性が高い? 本当にそうでしょうか? 私は2つを分けて考えること自体に違和感を覚えます。からだの衰えた高齢者は、ちょっとしたことがきっかけで急速に重度化してしまうことも多いですよね。在宅で自立した生活を支えていくためには、生活援助も身体介護も同じように必要なケースがほとんどです。仮に報酬をもっと下げてしまえば、生活援助から手を引く事業所がさらに増えるかもしれません。本当に大丈夫なんでしょうか。

-要介護1、2も地域支援事業の「新しい総合事業」に移す構想がありますね。

掃除や洗濯なら誰にでも任せられる、という感覚なんだと思います。でも現実はかなり難しいと思いますよ。今の要支援1、2だけであっても、うまくいかないところが続出するでしょう。

-市町村に大きな負担がかかると言われています。

それもそうですね。地域の担い手をどう確保するかも大きな課題です。中高年や元気な高齢者に活躍してもらうと言ったって、そんなに大勢の人が現場に来てくれるでしょうか? 皆それぞれの生活がありますからね。知らない高齢者のために、しかも安い賃金で働いてくれる人ってそんなにたくさんいますか?

-元気なうちはなるべく稼いでおこう、という方も少なくないはずです。

そうですよね。仮にボランティアがそれなりに集まったとしても、主力として期待するのは無理があります。当たり前の話ですけど、1人の人間を支えていくというのはとても責任の重い仕事なんですね。要支援・要介護の高齢者の生活を、それぞれが余っている時間だけを使ってうまくサポートするなんて、本当に成り立つんでしょうか。無責任な結果を招きかねません。そもそもの構想自体が間違っている。机上の空論。言い過ぎだと叱られそうですが、現時点ではそう思っています。

-審議会の議論の中でも、地域支援事業はきちっとした検証が必要だとおっしゃっていましたね。

はい。もしうまくいかないとなると、それは家族に重い負担がかかるということなんです。「介護の社会化」。そもそもの理念とは相容れません。それどころか、制度がなかった昔の時代にどんどん戻ってしまいます。今の流れってそうですよね。逆戻りです。「介護離職ゼロ」という目標にもまったく合っていません。政府はどう説明するつもりなんでしょうか。

-生活援助は自立支援につながっていない、という指摘も出ています。

制度がスタートした時に、保険料を負担してもらうことへの理解を得なければいけなかったという事情もあり、国はややサービスを気前よく展開し過ぎたのかもしれません。今思えば大盤振る舞いだったというか…。その副作用として、利用者や事業者の中である種の誤解が生まれてしまいました。一部の利用者が、ヘルパーを家政婦のように使っているという実態もあると認識しています。

-そうおっしゃる方って多いですよね。

ただし、たとえ一部にそういうケースがあることが事実だったとしても、給付を思い切ってやめてしまえというのは乱暴です。その主張は受け入れられません。必要なサービスまで切られてしまうからです。より大きな問題が生じますよね。早く重度化する人が増えてしまうでしょう。ムダを無くしたいというのであれば、適切なケアマネジメントの推進やより丁寧な説明、保険者機能の強化などで対応すべきです。

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