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配信日:2020/01/15  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[8473]

介護福祉士増やすならケアマネ改革を

今年1月に実施される介護福祉士国家試験の受験申請者数が、8万7599人と前年から再び減少に転じていることが明らかになりました。2016年度から受験要件に「実務者研修」が加わったことによる「半減」から、やや持ち直しを見せていた中での減少となります。

資格取得の意欲が高まらないのはなぜか?

今回の試験は、昨年10月に介護職員等特定処遇改善加算(以下、特定加算)がスタートしてから初の実施となります。この特定加算では、「勤続10年以上の介護福祉士」を基本としたものです。「勤続10年以上」などは事業所の裁量で決定されますが、少なくとも「介護福祉士の取得」は原則です。

こうした施策上のターゲットとなる資格にもかかわらず、介護福祉士受験の希望者が減少に転じるというのは極めて深刻です。やや厳しい言い方をすれば、新たな人材確保策が「介護従事者のキャリア志向」に響かないどころか、受験意欲の減退という逆効果をもたらした可能性もあるといえます。

たとえば、以下のような状況などが考えられるでしょう。(1)現場の人材不足で業務負担が増え、実務者研修を受けている余裕がない。(2)それでも苦労して介護福祉士をとった場合、現場リーダー的な立場を担うことになる。(3)しかし、人材不足が解消されないままでは、リーダーが担うべきマネジメント負担がますます厳しくなるのは明らか。(4)先を見据えても、処遇改善加算による処遇改善と業務負担のバランスがとれそうもない。(4)特定加算も「勤続10年以上」が基本となれば、恩恵を受けるのは「かなり先」となる──こうした流れが透けてしまえば、介護福祉士の取得意欲が高まらないのは当然かもしれません。

加えて、常勤職員がなかなか採用できない中、非常勤職員の採用や派遣社員の活用が進みつつある状況も背景にありそうです。もちろん、非常勤職員や派遣社員にも「キャリア志向」はありますが、その方向性が介護福祉士資格と重なっていない状況がうかがえます。

介護福祉士を社会の中でどう位置付けるか

以前から言われていることですが、介護福祉士については、サービス提供体制強化加算などの加算要件を除けば、「事業運営上の任用要件を構成する資格」になっていません。それゆえに、事業所・施設としても実務者研修にかかる時間を確保したり、費用に関して国の貸付・助成以上の支援を行なうといった意欲がなかなか高まりません。経営状況が厳しい中ではなおさらというところでしょう。

こうした状況を見すえたとき、「介護福祉士を増やす」という施策目的を叶えるのであれば、以下の2つが必要です。(1)介護福祉士を採用しなければ、事業が成り立たない(認可されないなど)という制度のしくみを確立すること(介護保険事業以外も含む)。そのうえで、(2)採用する介護福祉士の人件費・内部研修費等を内包させた(つまり、加算等ではない)事業費や報酬を設定することでしょう。

(1)については、たとえば包括の人員要件に介護福祉士を加えたり、認知症初期集中支援チームに認知症介護実践者研修を修了した介護福祉士を必置とするなどの方法があります。また、介護保険事業以外では、一定以上の高齢者を受け入れる入院医療機関で介護福祉士の配置を義務づけるなども考えられます。自治体窓口などで、援助の必要な高齢者や障がい者の対応を担うために、介護福祉士の公務員採用枠を設けるという方法もあるでしょう。

ケアマネ志向がぜい弱な点にも着目が必要

さらに、「介護福祉士として継続勤務する」ことへの意欲を高めるのであれば、その先のキャリア構築にしっかり希望が持てるような施策上の後押しも必要です。具体的なキャリア構築といえば、やはりケアマネです。

そこで不可欠となるのが、「ケアマネになれば、確実に実務単位あたりの給与が上がる」ことです。もちろん、どんなにケアマネ関連の報酬が上がっても、なし崩し的に実務範囲が拡大したり、医療等の動向に振り回されるのでは、足腰を据えたキャリアビジョンを描くことは難しいでしょう。少なくとも「ケアマネの実務範囲はここまで。それ以上は(より高い報酬のつく)上位資格を設定する」といった制度の構築が望まれます。

ここまでの案を実現するには、相応の予算がかかり、「財政のさらなる圧迫を招く」と思われるかもしれません。しかし、たとえば地域医療介護総合確保基金のように、費用対効果の検証が十分とは言えないまま総花的なメニュー拡大が進むケースなどを見ると、「真に欠かせない施策に予算がかけられているのか」という疑問を持たざるを得ません。

そして、そもそも国は介護福祉士を「社会に有用な資源」と本気で位置づけようしているのかという原点を見つめる必要もあるでしょう。「国家資格だから、誰でも目指そうと思うはず」といった「資格という権威ありき」のビジョンに安住しているとすれば、それこそ「介護福祉士になろう」という意欲を妨げている元凶なのかもしれません。