ケアプラン有料化で認識すべきこと

2021年度に再び介護保険制度の見直しが行われます。中でも、大きな論点となるのが「ケアマネジメントに対する自己負担導入」(以下、ケアプランの有料化)でしょう。長年議論されてきた課題であり、さまざまな意見もある中、頭に入れたいポイントを整理します。

有料化に向けてクリアにすべき課題とは

仮にケアプランの有料化が現実味をおびるとして、その過程ではいくつかの課題をクリアにする必要があります。特に、利用者の負担感に直結する課題として、以下のようなポイントをあげることができます。

(1)区分支給限度基準額との関係
現状では、区分支給限度基準額に居宅介護支援費は含まれていません。しかし、自己負担が発生するとなった場合にどう扱うのかは論点としてあがってくる可能性があります。

(2)利用者一律で1割負担とするのか
現在、サービス利用料については所得に応じて1~3割負担が導入されています。「いきなり最大で3割負担というのはありえない。導入するにしても1割負担ではないか」と思われがちですが、他サービスの負担との整合性をとる中で論点となるかもしれません。

(3)どこまでの報酬を対象とするのか
基本報酬だけか、各種加算まで含めた所定報酬を対象とするのか。特に対医療連携にかかる加算(入院時情報連携加算、退院・退所加算など)まで含めるとなった場合、重度者の円滑な在宅復帰を進めようとしている国の施策ビジョンと矛盾しないかが問題です。

「0が1に」という負担感がもたらすもの

国としては、利用者にいきなり多大な負担感を抱かせる制度設計は避けたいはずです。恐らくですが、(1)の区分支給限度基準額には含めず、(2)は1割負担からとなる可能性が高いと思われます。(3)についても、対医療連携にかかる加算は「含めない」とするかもしれません(このあたりは、医師会などの意向によっても左右されそうです)。

もっとも「最初は負担感を最小限に」という流れになったとして、特に所得の低い利用者にかかる負担の問題は残ります。2、3割負担導入の際、「所得基準ボーダーライン」の利用者の負担感が指摘されましたが、低所得者層は1割負担のままでした。これに対し、ケアプラン有料化が(少なくとも)一律1割となれば負担感増大のすそ野は広がります。

中でも「0が1になる」ことで、特に現在介護保険を使っている低所得の利用者にとっては、数字以上の負担感となりかねません。その結果として、他サービスの利用控えや日用品・食料品等にかかる家計負担を減らすという動きにも注意が必要でしょう。

ちなみに、介護保険部会などでは「低所得者に対しては高額介護サービス費で対処できる」という意見もありました。しかし、高額介護サービス費は原則償還払いなので、一時的な負担増や申告の手間が増える影響も気になります。たとえば、受領委任払いの拡大などを検討する必要があるかもしれません。

ケアマネの処遇改善もセット化が必要に

もう一つ気になるのは現場のケアマネへの影響です。ケアプラン有料化では、「自己負担が発生すると、利用者の意向を反映すべきとの圧力が強まり、御用聞きプランが増える」という意見がありました。そうした影響もさることながら、「利用者からの多様な相談が増えるでは」という予測もよく聞かれます。

核家族化の中の介護世帯は、どうしても内向き傾向によって孤立化が進みがちです。そうした中で、(介護以外のことまで含めて)何でも相談できる人は限られ、その数少ない相手がケアマネとなる可能性は高くなります。

それでも、今までは「些細なことで相談するのは気が引ける」という思いもあったでしょう。しかし、ケアマネジメントに自己負担が発生すれば、お金を払っている分、「気が引ける」といったハードルが下がりやすくなります。その結果、利用者からの電話・メール等での対応や、時には「ちょっと来てほしい」という要望も増えることが考えられます。

ケアマネの中には「モニタリング機会が増える」と前向きにとらえる人もいるでしょうが、それも限界があります。24時間対応のための携帯電話の持ち回りなどが行われていれば、当番ケアマネに夜間の電話がひっきりなしにかかる事態にもなりかねません。

いずれにしても、利用者・家族の心理や行動がどのように変化するのかという事前調査は、議論の進展とともに必須となります。そのうえで、ケアマネへの処遇改善策などもセットで考えることが不可欠でしょう。こうした現場レベルの影響に、厚労省はともかく財務省や首相官邸にどこまで認識があるのか。まず、この点を(国会等の)法案審議の場などで問いただしていくことが求められます。

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