【介護報酬改定2019】新たな「特定処遇改善加算」、要件・ルールまとめ改訂版!


《 社保審・介護給付費分科会 》

介護職員の賃上げを柱とする来年度の介護報酬改定―。各サービスの基本報酬や加算の単位数、その算定要件などを規定している告示をどう見直すか、厚生労働省はその全文を13日の審議会で公表した。今年10月1日から適用する。

既に示されている施策の方向性に変化はない。賃上げは新たな加算(特定処遇改善加算)の創設によって具現化される。今回の要件・ルールまとめは、新たな告示の内容を漏れなく加えた「改訂版」。基本から詳細まで、新加算について明らかになったこと全てが分かるように整理した。

賃上げの趣旨

来年10月の賃上げは、介護職員の深刻な人手不足の解消につなげることが目的だ。大きな特徴はベテランが重視されること。辞めずに頑張り続けても給料が上がっていかない―。そうした不満を解消する狙いがある。将来の生活をイメージしやすくしたり、キャリアアップの道筋を分かりやすくしたりすることで、新たに入ってくる人の増加や離職の防止につなげたいとしている。

賃上げの財源

賃上げのために使われるのは毎年およそ2000億円。勤続10年以上の介護福祉士について平均で月8万円の処遇改善を行う―。これがリソースの算定根拠となっている。厚労省は介護報酬に新加算を設けて事業所へ原資を支払う手法を選択。新加算は「介護職員等特定処遇改善加算」と名付けた。

投じる公費は約1000億円で、残りの半分は40歳以上の保険料と利用者の自己負担で賄う。公費の財源には10%へ引き上げられる消費税が使われる。介護報酬の改定率に換算するとプラス1.67%。


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新加算の算定要件

新加算は全ての事業所が無条件に取得できるわけではない。他の加算と同様に算定要件が定められている。既存の処遇改善加算の「加算I」から「加算III」のいずれかを取っていること―。これが不可欠とされた。加えて、

○ 処遇改善加算の「職場環境等要件」を満たす取り組みを複数行っていること
○ 処遇改善の取り組みを情報公表制度やホームページへの掲載などを通じて「見える化」していること

も求められる。居宅介護支援や福祉用具貸与、訪問看護、訪問リハビリテーションなどは新加算の対象外。

厚労省は現在、「職場環境等要件」について現場での実効性を高める方策を検討中だ。新加算を取得する事業所を対象として、新たに必須の取り組みを作ったりメニューを厳選したりすることが念頭にある。具体策は今年度末に示す通知やQ&Aなどで明らかにする。


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新加算の基本的な仕組み

既存の処遇改善加算と同じだ。新加算もサービスの類型ごとに異なる加算率が設定される仕組みとされた。訪問介護が○○%、通所介護が○○%、特養が○○%、といった具合だ。

それぞれのパーセンテージは、「そのサービスに勤続10年以上の介護福祉士がどれくらいいるか」を指標として定められた。経験・技能のある介護職員が多いサービスを高く評価する狙いがある。各サービスの加算率とそれをはじいた算定式は以下の通り。「新加算I」「新加算II」については次のチャプターで。

加算率の算定式
各サービスの勤続10年以上の介護福祉士の人数×8万円を、各サービスの費用額で割って算出している。厚労省はサービスごとのバラつきについて、「勤続10年以上の介護福祉士の人数(分子)や費用額(分母)がそれぞれ異なるため差が出る」と説明した。

同じサービス内での配分方法

上の表のように、厚労省は加算率をそれぞれ2段階で設定している。片一方を少し低くし、その分をもう一方に上乗せする形で差をつけた(*)。質の高い人材の確保・育成に努めていたり、職場環境の改善に力を入れていたりする事業所を、相対的に高く評価するためだ。どうすれば「新加算I」を算定できるのか?

* 2段階の加算率の設定方法
サービスごとに1段階とした場合の加算率を試算したうえで、原則、「新加算II」の加算率がその×0.9となるように設定


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「新加算I」を算定するためには、
○ サービス提供体制強化加算(通所介護など)
○ 特定事業所加算(訪問介護など)
○ 日常生活継続支援加算(特養など)
○ 入居継続支援加算(特定施設など)

のいずれかを取得していることが求められる。ただし、サービス提供体制強化加算は最も高い区分(加算I イ)のみ。特定事業所加算も、介護福祉士の割合など従事者要件のある区分しか認められない。

厚労省はこの要件の設定にあたって、現場にかかる事務負担や現時点で把握できるデータの範囲などを考慮。まずは介護福祉士の配置が手厚い事業所に多くの原資がいくようにした。

上記4加算を取っていないところは低い方の「新加算II」となる。厚労省は2021年度の改定に向けて、各事業所の取り組みをより精緻に評価できる方法について引き続き検討していくと説明している。


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事業所内での配分方法(1)

次は新加算の算定で得た増収分を事業所内でどう配分するかだ。厚労省は施策の趣旨が損なわれないよう、その優先順位を

1. 経験・技能のある介護職員
2. その他の介護職員
3. その他の職種

と定めた。“経験・技能のある介護職員”は勤続10年以上の介護福祉士が基本。ただし、個々の能力や職場内のバランス、人間関係などを勘案した無理のない賃上げが行われるよう、現場に一定の裁量権が与えられることになった。介護福祉士の資格を有することは要件となるが、「勤続10年」の考え方は個々の事業所の判断で決定してよいという。

厚労省が重視しているのは、現場を牽引する「リーダー級の介護職員」の処遇が十分に改善されること。これに該当すると認められれば、“業界10年”の介護福祉士も等しく高い評価を受けられる。介護福祉士になってから同じ職場で10年以上働いた人のみ、という厳格な運用をする必要はない。


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事業所内での配分方法(2)

“経験・技能のある介護職員”のうち、月8万円の賃上げとなる人、あるいは賃上げ後に年収が440万円を超える人を設定・確保しなければいけない、とのルールも設けられた。年収440万円は全産業の平均賃金(役職者を除く)。今の介護職員の平均賃金に8万円を足しても概ね等しい水準となる。その現場でリーダー級の活躍をする人材の賃金を、他の産業と比べても遜色のないレベルまで引き上げる狙いがある。

小規模で開設して間もないなど、やむを得ない事情でどうしても実現が難しい事業所には合理的な説明を求めていく―。審議会ではそんな考えも示された。具体的にどんなケースで例外を認めるのか、厚労省は今後さらに検討を深めるとしている。年度末の通知やQ&Aなどで明らかにする方針だ。

事業所内での配分方法(3)

ルールはまだある。事業所内での配分にあたっては、

○ “経験・技能のある介護職員”の賃上げ額の平均は、“その他の介護職員”の賃上げ額の平均の2倍以上に保つ
○ “その他の職種”の賃上げ額の平均は、“その他の介護職員”の賃上げ額の平均の2分の1を超えてはいけない

の2つも必須とされた。3グループの賃上げ幅を2:1:0.5とする内容だ。あくまでも各グループの“平均”を指標とし、個々の賃上げ額をどうするかは事業者が判断できる。このルールの範囲内であれば、有望な若手などを高く評価することも可能だ。ただし、“その他の職種”の賃上げは年収440万円を超えない範囲でしか認められない。


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実務上の運用ルール

新加算を算定するためには、既存の「処遇改善加算」と同様に計画書の届け出や実績の報告が必要となる。実務上のルールも既存の加算と同様だが独自のものも設けられた。告示の概要は以下の通りだ。

特定処遇改善加算:告示概要

○ 賃金改善に関する計画、その計画に係る実施期間・実施方法などを記載した「特定処遇改善計画書」を作成し、全ての職員に周知し、都道府県に届け出ていること
○ 新加算の算定額に相当する賃金改善を実施すること。ただし、経営の悪化などで事業の継続が困難な場合、職員の賃金水準を見直すことはやむを得ないが、その内容について都道府県に届け出ること
○ 事業年度ごとに事業所の処遇改善に関する実績を都道府県に報告すること
○ これまでに実施した処遇改善の内容を全ての職員に周知していること
○ 処遇改善の内容についてインターネットなど適切な方法で公表していること

厚労省は今後、現場で使える計画書や実績報告書などの様式例を提示する予定。担当者はそのタイミングについて、「今年度末を目指す。できるだけ早く出せるようにしたい」と話している。

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