病床転換がもたらす介護保険への影響

厚労省が、2018年12月31日時点での介護医療院の開設状況を公表しました。18年度からスタートした介護医療院ですが、8か月で7400床を超える開設数となりました。この数字を掘り下げつつ、今から5年後に廃止される介護療養病床からの転換をめぐる動きを探ります。

介護療養病床廃止に向けた転換は間に合うか

8か月で約7400床ということは、単純計算では1年で約1万1000床の設置が予想されます。これを(18年4月から療養病床が廃止される24年3月末までの)6年間で計算すると6万6000床となります。ただし、介護療養病床からの転換は約4600床にとどまります。上記の計算を当てはめれば、6年間では約4万2000床という数字です。

17年度の介護療養病床の実受給者数は8万4100人なので、4万2000床という数字は約半分に過ぎません。厚労省としては、さらに転換に向けた「旗振り」をするのでしょうが、間に合わない場合に介護療養病床ニーズの受け皿はどこに行くのかが問題となります。

ここで振り返りたいのが、介護療養病床からの転換先として「医療外付け型」の介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護。以下、特定施設)が選択肢として示されていることです。これについては、18年度の基準改定で「療養病床等(医療療養病床も含む)から特定施設への転換に関し、人員の兼任・設備の兼用などをOKする特例が示されました。これも転換先の受け皿の一つになるわけで、その調査結果も急がれるところです。

医療外付け型介護付き有料も大きな受け皿に

では、近年の特定施設の状況はどうなっているのでしょうか。18年度の介護サービス施設・事業所調査の結果はまだ公表されていないので、介護給付費実態統計(旧・介護給付費実態調査)の月報に着目します。つまり、その月の受給者数に焦点を当てるわけです。現時点での最新結果は18年8月なので、過去3年の同月の状況で比較してみました。

それによれば、15年8月からの18年8月までの伸び率は、4.5%→6%→5.6%となっています。同じ居住系のGHを見ると、1.3%→3.3%→3.2%。特養ホームでは、2.1%→1.8%→2.5%。後者2つと比べると、特定施設の受給者の伸びが明らかに目立っています。

もちろん、特定施設の受給者の伸びが「医療外付け型」によって押し上げられたとは断言できません。ただし、「介護医療院」や「医療外付け型」にかかる明確な提案が出てきた、療養病床のあり方等に関する特別部会の開催が16年6~12月。その前後の流れと、特定施設の受給者数の伸びが目立ってきた時期が符合します。また、特定施設の主体法人の比率を見ても、営利法人や社福法人より医療法人の割合の伸びが目立っています。

ここで仮説を立ててみます。医療法人としては療養病床からの転換先をどうするかという点は常に解決を急ぐべき課題となっていました。16年の時点では、介護療養病床の廃止は17年度末となっていたからです。結果的にこれが6年延長されたわけですが、医療法人としては「転換先を模索する」動きがピークに達していたと思われます。その際の選択肢の一つが特定施設であり、それが給付費の伸びにつながったのではないでしょうか。

医療保険から介護保険に移行する部分の拡大

ここで注意したいのは、今回の介護医療院の開設状況を見ると医療療養病床など医療保険による病床が約1000床で、すでに介護医療院全体の15%近くにのぼっていることです。医療法人として早期から入念な転換計画が練られていたとすれば、診療報酬改定も横目でにらみながら、「この機会に病床全体の再編も考える」となった可能性も高いでしょう。

となれば、「医療外付け型」の特定施設も、介護療養病床からの転換だけでなく、医療療養病床などからの転換もさらに増えてくることが予想されます。ちなみに、次の診療報酬改定(19年10月分を除く)は介護報酬改定より1年早く訪れます。ここで医療保険の療養病床等にかかる議論の動向によっては、医療療養病床から、介護医療院や特定施設への転換がさらに加速することが考えられます。

問題は、介護報酬改定の議論が真っ只中となるタイミングで、医療保険から介護保険への財政上の「付け替え」が進むことです。これによって介護給付費の増大が確認されれば、他の介護サービスが給付抑制のしわ寄せを受けかねません。なぜなら、病床転換は厚労省にとって大きなミッションであり、介護医療院や医療外付け型特定施設の報酬減には踏み込みにくいと考えられるからです。

いずれにしても、医療保険側の事情で介護報酬のあり方が影響を受ける流れは、さらに加速することになりそうです。介護保険にかかる各審議会の動向に注意が必要でしょう。

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