第1回 医療と福祉の連携について

「医療と介護(福祉)の連携」が求められるようになって一体何年が経過したのでしょうか。どうしたら「医療と介護(福祉)」とが連携できるのでしょうか。そして、どうしていつまでも「医療と介護が連携しなければならない」と言われ続けるのでしょうか。

医療と介護(福祉)が連携したら何ができるのか?

なぜ「医療」と「介護(福祉)」が連携しなければならないのかを考えたことがありますか? 「医療と介護(福祉)が連携した」ら、何ができるのでしょうか?

なぜこんなことを問うのかと言えば、私の周りでの「医療と介護の連携」について、どのような方法で、どのような様式を使って、という議論が盛んにおこなわれていますが、医療と介護の連携の目的や効果についての議論はほとんど聞くことがありません。既に議論しつくされていて、関係者間の共通した認識になっているのかと思って近隣の関係者に確認してみますが、誰一人として共通した認識になっているという声は聞くことがありません。

ということは、目的や効果を明確にし、共有していない中で、単に方法論だけを議論しているだけになっているということですし、このような議論では個々の団体や機関の都合が優先され、「自分(たち)にとって都合がよい・悪い」という基準での議論にしかならずに終わってしまいます。

また目的について協議している地域であったとしても「地域包括ケアシステムの推進のため」というような「漠然とした目的」が主で、具体的に何がどうなるのかのイメージの共有ができないままで議論されていることも少なくないような状況です。

だから形(情報提供用紙等)のみが議論され、中身がない「連携」という名前だけの情報提供が多くなっているのではないかと危惧しています。

医療と介護(福祉)が連携をする「目的」とは?

医療と介護(福祉)が連携をする。具体的に「何を目的として」「どのような行動をすることなのか」について改めて考えてみましょう。

そもそも「連携」とは「〔「連絡提携(れんらくていけい)」の意〕 連絡を密に取り合って、一つの目的のために一緒に物事をすること。(大辞林より)」とされています。ここでのポイントは「一つの目的のために」という部分です。

医療と介護が相互に連絡を密に取り合って何を一緒に仕事をするのか、というところが共有されていなければ意味がないということです。

医療と介護の連携の「唯一の目的」というものは、「利用者(患者)の満足した生活が実現するように支援すること」でなければいけないはずです。なぜならばこれがケアマネジメントの目的であり、介護保険の目的でもあるからです。

そして地域包括ケアシステムも、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる(厚生労働省)」仕組みですから、「利用者(患者)の尊厳の保持と自立支援」=「利用者(患者)の満足することができる暮らしの実現支援」であり、それを叶える場所が「住み慣れた地域」であるということになってくるので、これが医療と介護の連携の目的となってくるわけです。

この目的を叶えるために「医療としてはこういう活動を」、「介護としてはこういう活動を」、医療と介護とを結び付けていくためには「こういう活動を」、ということを考えていかないと、いつまでたっても「医療と介護の連携」が形になっていかないということになってしまいます。下手をすると「介護(福祉)は、医療の言いなりになり、医療の指示に黙って従うもの」という形を「医療と介護が連携が取れた形」として認識してしまう結果になってしまうのです。

連携に必要となる共通言語

医療と介護(福祉)が連携していくためにもう一つ必要となってくるものが、医療と介護(福祉)の双方に共通する「基準」です。それを「共通言語」としてみましょう。

医療と介護(福祉)の共通言語になるものは「国際生活機能分類(ICF)」の考え方になります。特に「ICFモデル図」を使って、「健康状態」と「背景因子」の位置関係を置き換えてみれば、「生活機能は現在の健康状態を土台として成り立っている」ことがよくわかります。

そして「現在の健康状態が変化、特に悪化してしまえば、将来の参加=人生の目的=満足することができる暮らし方もまた変化(特に縮小という変化)をせざるを得ない。だから「現在の健康状態の維持増進」のために「医療と介護(福祉)」がともに協力し合ってお互いの専門性を活かしつつ、手を取り合い、役割分担を明確にし、連絡を密に取り合って支援していく体制を作っていくとともに、万が一健康状態が悪化したときの入院時や、健康状態が回復、または落ち着いた時の退院の際の情報提供の方法としての様式を、共通言語とその理念に基づいて作成していくことで初めて「医療と介護の連携」が徐々に作られていくと考えます。

◆著者プロフィール 中村雅彦
1960年生まれ。主任介護支援専門員・社会福祉士。
日本社会事業大学を卒業後、特別養護老人 ホームの生活相談員を経て、介護保険制度施行と同時にケアマネジャーに。
独立居宅の管理者兼介護支援専門員として約15年務め、現在は北アルプス医療センター あづみ病院 居宅介護支援事業所に勤務。
前長野県介護支援専門員協会会長、日本介護支援専門員協会長野県支部代議員、介護支援専門員実務研修・専門研修講師、松本短期大学非常勤講師等を歴任。
日本介護支援専門員協会には幾度となく現場目線からの提言をしている。
優しい眼差しと熱い口調でケアマネの養成に勤めている。趣味はスポーツと読書。

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