保健・予防一体化と総合事業の関係は?

1月17日の社会保障審議会・医療保険部会で、健康保険法等の改正案が示されました。間もなく召集される通常国会に提示される予定です。介護保険法関連では、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施などが中心となっています。この法案の施行(一部を除いて4月1日)に向けた課題を掘り下げます。

医療保険部会に示された改正法案を整理

上記の「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」について、おおまかなしくみは以下のようになります。まず、市町村が地域に保健師、管理栄養士、歯科衛生士等の医療専門職を配置します。この医療専門職は、事業全体のコーディネートや地域の健康課題などのデータ分析のほか、高齢者の「通いの場」等にも積極的に関与するという位置づけです。

ちなみに、この「通いの場」とは、主に、介護予防・日常生活支援総合事業における「一般介護予防」(すべての高齢者が利用できる)の一つとして位置づけられるものです。ここに、先の医療専門職がかかわることで、以下のようなメリットが想定されます。

(1)一般介護予防の現場でも参加者に対する健康相談が行なえる、(2)社会参加を含むフレイル(虚弱)対策を視野に入れた取組みができる、(3)フレイル状態にある高齢者等を、適切に医療サービスにつなげることができるという具合です。また、こうしたしくみがプラスされた「通いの場」への参加に向けて、かかりつけ医が参加を促したり、今事業についての助言を行なうことも示されています。

思い起こされる「総合事業のCサービス」

さて、総合事業において、保健師等の医療専門職がかかわってくるしくみで思い出すのが、介護予防・生活支援サービスの訪問・通所型サービスで定められている「短期集中予防サービス」(C型)です。これは市町村の直接実施もしくは委託によって保健・医療の専門職がかかわり、機能訓練や栄養改善、相談指導などを行なうというものです。

他の訪問・通所型サービスが、予防給付からの基準緩和やボランティア等が主体となっているのに対し、C型は保健・医療の専門職が集中的にかかわります。ただし、3~6か月の短期となっているため、いわゆる「卒業後」のフォローアップをどう位置づけるかという問題が残ります。仮にリスクが軽減されて「一般介護予防」に移ったとして、今回の改正案によるしくみで医療専門職による継続的なフォローが可能となる──こうした「受け皿」機能も期待されることになります。

ただし、このC型がきちんと機能しているのかどうかについて、十分な分析がなされているとは言えません。総合事業の実施状況にかかる調査は行われていますが、公表されている最新調査は2017年10月時点までで、C型だけを取り上げた「利用者の状態変化」を示したデータはありません(示されているのは、介護予防訪問・通所介護から多様なサービスへと移行した利用者のデータだけです)。

既存施策との連動を意識した制度設計を

もちろん、「高リスク者が対象となる介護予防・生活支援サービスと一般介護予防は別ものであり、そもそもC型サービスと今回の新たなしくみに関連はない」のかもしれません。しかし、今回の改正案が、高齢者の保健事業と介護予防の「縦割り」をなくしてきめ細かな支援の実施を図ることが目的とされているなら、既存の施策の効果を測定しつつ、そこにきちんと連動させる設計が必要でしょう。

ちなみに、先のC型(短期集中予防)については、訪問型で700、通所型で2349の事業が実施されています。これはB型(住民主体の支援)よりも多い数字です。市町村としては、それなりに力を入れている資源分野であり、それだけ「重度化予防効果」に期待を寄せている現れとも言えるでしょう。

今回の改正案のベースとなっている「まち・ひと・しごと創生基本方針2018」(18年6月閣議決定)では、保健事業と介護予防の一体化について、以下のように述べています。「疾病・介護予防や健康増進に向けた取組みを自立・継続しうるものとするためには、地域全体の資源や知恵を活用して総合的に取り組むなど(中略)が重要」という具合です。

この理念にのっとるのであれば、市町村がどこに「地域全体の資源や知恵」を投入しえいるのかを掘り下げつつ、既存の総合事業のあり方をもう一度洗い直す必要があります。ただ医療専門職の参入を上積みするだけでは、かえって市町村側の混乱を招きかねません。施策者自身が「これまで行なってきたこと」を振り返り、現場に求めているPDCAを自らにかけていく──改正法をまとめあげる前に取り組むべきことではないでしょうか。

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