新認知症施策に向けた当事者の「思い」

昨年末、首相官邸で認知症施策推進関係閣僚会議が開催されました。認知症にかかる諸課題について、関係行政機関の連携のもと総合的な対策の推進を目的とした会議です。この場で、現行の新オレンジプランからの「さらに踏み込んだ対策」も示唆されました。

新プランによる「事業」は進んでいるが…

会議では、新オレンジプランの最新の進ちょく状況が示されました。それによれば、主な事業所数は以下のようになっています。

(1)認知症サポーターの養成が、18年9月末時点で1066万人(20年度末目標1200万人)。(2)認知症サポート医の養成が、17年度末時点で8000人(20年度末目標1万人)。(3)認知症初期集中支援チームの設置が、18年11月末時点で1736市町村(18年度から全市町村でスタートする予定だったが、わずかに足りていない)。(4)認知症カフェの設置が、やはり18年11月末時点で1265市町村(20年度末目標は全市町村での設置)という具合です。

これらの数字をもって、「新オレンジプランを契機に新たな取組みを開始した自治体も多く、認知症の方とその家族を支援する地域資源は着実に増加」という講評も示されています。しかし、本当にそうなのでしょうか。肝心なのは、当事者の安心というアウトカムであり、事業数が増えてもそれが本当に機能しているかどうかが重要になるはずです。

当事者の不安は本当に解消されたのか?

ところで、新オレンジプラン策定直前の14年10月に認知症にかかる新たな当事者団体が設立されています。認知症の本人をメンバーとし、認知症の人と社会のために当事者が活動する日本初の組織で「日本認知症ワーキンググループ」(以下、WG)といいます。

このWGは18年10月、「本人にとってのよりよい暮らしガイド~一足先に認知症になった私たちからあなたへ~」を作成・配布しました。このガイドブックは、診断直後に認知症の本人が手にし、次の一歩の踏み出しを後押しすることを目的としたものです。新オレンジプランの柱の一つ「認知症の人やその家族の視点の重視」に合致する好例として、関係閣僚会議の資料でも取り上げられました。

このWGの設立趣意書では以下のような課題が示されています。「早期診断の広がりによって、自分が認知症であることを認識できる『初期』で診断される人が増えている」としつつ、「診断前後から介護保険サービスの対象とされるまでの支援は未整備であり、絶望に陥る人は後を絶たない」というものです。

この課題解決に向け、認知症初期集中支援チームの整備が事業目標にかかげられているわけです。となれば、それによって上記の当事者不安が本当に解消されたのか、解消されていないとすれば課題はどこにあるのか──を検証することが欠かせないわけです。具体的には、集中支援チームからケアマネを経て介護保険サービスへの連携がうまく行っているのか。うまく行っていないとすれば、バトンタッチする側・される側、ケアマネをはじめとする介護報酬面も含めたしくみ等に問題がないのかが掘り下げられるべきでしょう。

19年提出予定法案に寄せられた当事者の声

こうした当事者団体の声については、19年初頭に政府与党が国会提出を目指している認知症施策推進基本法案に対しても数多く寄せられています。たとえば、「認知症の人と家族の会」を含めた4つの当事者団体が18年8月に「認知症関係当事者・支援者連絡会議」を設立し、同法案に細かい意見を付しました。

注目すべきものをいくつか紹介しましょう。まず、法案では認知症施策推進について、政府に基本計画を、都道府県や市町村に推進計画の策定を義務(努力義務含む)づけています。ここに「計画策定段階から認知症にかかわる当事者に意見聴取を積極的に行なうべき」という意見を付しました。当事者による施策立案への早期参加を求めているわけです。

介護現場として注目したい点もあります。法案では、基本的施策の一つとして「認知症の人に対する保健医療サービス、介護サービス(中略)の提供に関する専門的知識を有する人材の確保、養成および資質の向上に必要な施策」をかかげています。この項への意見として、「従事者の労働環境や労働条件の向上なくしては実現できないことを意図した文章を加えること」を述べています。

また、冒頭の推進会議の設置も法案骨子に記されていますが、「関係行政機関」の中に財務省が含まれていない点を指摘しています。施策の費用対効果にかかる責任を明らかにするために、財務省の参加は欠かせないという考え方が見てとれます。このように、認知症の当事者は国の施策の行方を注視しています。新たなオレンジプランがその意向に沿えるのか、上記の法案提出も含めて注目しましょう。

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