「人への投資」こそ施策効果UPの近道

厚労省が、中高年世代を対象に毎年実施している「中高年者縦断調査」。その第13回の結果が公表されました。今回は62~71歳を対象に、健康や社会活動などの状況について尋ねています。今回の結果と、政府が「経済政策の方向性に関する中間報告」でかかげている介護予防施策をリンクさせつつ、これから必要なことを掘り下げてみましょう。

健康に寄与する友達づきあいに必要なのは?

今調査では、日常生活の行動別に見た健康状態が注目されます。行動の選択肢は「近所づきあい」「友達づきあい」「家事」「自分の孫や子供の世話」の4つ。それぞれに「いつもする」「ときどきする」「あまりしない」「しない」の選択肢を設定し、それによる健康状態の「よい」「悪い」の回答を得るものです。

これによれば、健康状態との関連がもっともはっきり出ているのが、「友達づきあい」です。「近所づきあい」による健康の優位性も一定程度認められますが、地縁や血縁ではない「自身の主体性」がもっとも発揮される「友達づきあい」こそが、健康維持の秘訣であることが明らかな状況がうかがえます。

さて、主体的に友達づきあいを増やしていく場合、そこには何らかの条件が必要です。たとえば、友達をつくるには「場」が必要であり、その「場」にアクセスするための「手段」(情報や交通など)が一体となってこそ日常的な友達づきあいへと広がっていきます。

しかし、それだけではまだ足りません。友達に会うには、おしゃれしたり着飾ったりする習慣の維持も必要でしょう。気分がふさいで「友達に会う」ための意欲が減退する点を考えれば、精神的に張りのある生活を整えることも重要です。健康状態が悪い→友達づきあいが減る→さらに健康状態が悪化する、という悪循環を防ぐことがカギとなるわけです。

「掛け声」や「場」の整備だけでは足りない

このように「友達づきあい」を維持していくには、自身の生活をいかに整えるかが問われます。そうした行為が「しにくい」状態になった(病気や障害で「できる範囲」が狭くなった)場合、そこには何らかの支援の介在が求められます。そこに介護保険によるサービスを位置づければ、「友達づきあい」にかかる障壁を取り除きつつ、自立支援・重度化防止を図ることにもつながるでしょう。

以上の点から、「健康のために友達づきあいを増やそう」という掛け声だけでは、施策効果は上がらないことになります。また、「場」や「手段」の整備だけにお金をかけても、「場へのアクセス手段を有効に活用するためのサポート」や「アクセス意欲を高めるだけの心身状況を整える支援」がともなわなければ、費用対効果を上げることはできません。

ちなみに、政府がかかげている「経済政策の方向性に関する中間報告」では、以下のような内容が見られます。それは「高齢者の閉じこもりをなくし、外部と交流する機会を作る」ために、「身近で歩いて行ける範囲に運動を行なう機会の大幅な拡大を図ること」を検討するというものです。

「労働生産性ありき」は逆に効率を下げる!?

問題は、先に述べたように「機会の拡大」を図っても、そこにアクセスするまでの「整え」に力を入れなくては施策効果が上がらないことです。この「整え」に介在するのは「人」であり、「どんな人のどんな貢献に投資するのか」が具体的に示されなければなりません。

この点で、常に前面に出てくるのが財政効率です。つまり、労働生産性にスポットを当て、AIやロボット、IoTなどを駆使し介在者の不足をカバーしていこうという発想です。もちろん、こうした次世代技術を適所に配置する精度が高まれば、介在効率を高める期待はあります。しかし、この中間報告を見ても、そのあたりのビジョンは漠然としています。

たとえば、ある自治体が、地域の買い物弱者解消のため、団地内の公民館に食料・日用品の宅配注文ができる端末を設置するという施策を打ち出しました。しかし、端末操作が難しい高齢者も多く、公民館に「人」を配置して、訪れた高齢者に端末操作の指導をしつつ「注文をサポートする」ことが必要でした。

ちなみに、この「人」の配置は、「そこに行けば担当者にいろいろ相談できる」という副産的なメリットを生み、団地内住民の交流機会にもなったということです。このように、どんなに次世代技術が進んでも「人にきちんと投資する」という点を置き忘れてはならず、逆にその点がきちんと叶えられれば、期待以上の施策効果が上がることにもなるわけです。こうした原点を忘れてはならないでしょう。

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