利用者と従事者の支え合いは可能か

厚労省内で「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」が開催されています。いわゆる「コンビニ受診」(軽症者が自己都合で夜間・休日に救急外来を利用すること)などが、医師の過重労働につながっている状況を改善すべく、国民への啓発を行なうことが目的です。介護現場にもつながる課題を取り上げます。

小児患者の夜間・休日外来が医師の負担に

冒頭で述べた「コンビニ受診」と同様、医師の長時間労働につながる夜間・休日の受診が問題となりがちなのが小児外来です。民間団体の調査によれば、小児の夜間・休日外来の約9割が「入院の必要がない軽症」のケースというデータも示されています。とはいえ、夜間・休日に小さな子どもに発熱や腹痛などの症状が見られれば、保護者としては気が動転し、時間や曜日に関係なく外来にかけこみたくなるのは仕方ない面もあるでしょう。

対策として全都道府県で実施されているのが、子ども医療電話相談事業(#8000)です。これは、地域の小児科医師等が分担しながら、小児患者の保護者などを対象に夜間・休日の電話相談を行なうというものです。この電話相談では、患者の症状に応じた適切なアドバイスとともに、緊急性の有無を伝えることにより保護者の不安解消を図ります。

実施時間帯はおおむね準夜帯(19時から23時)で、深夜帯でも実施している地域があります。もちろん、緊急対応が必要と判断されたケースは「119番通報や救急外来受診」が指示されますが、先に示したデータと同様、そうした緊急ケースは約1割にとどまります。

小児患者の保護者が進める自発的な啓発活動

さて、#8000が全都道府県で利用できるようになったのは2010年度からですが、問題なのは、14年7月時点の世論調査で認知度が1割台にとどまったことです。一方で、地域における小児科医の不足や過重労働による退職は依然として深刻さが際立っています。

そうした中、一部の地域では「子育て中の保護者」による以下のような取組みも見られます。たとえば、医師の負担軽減を目的として、保護者自らが「コンビニ受診を控える」といったスローガンを作成したり、#8000の普及啓発に乗り出しています。また、「子どもの病気について知ったり、医療のかかり方を学ぶ」ために、保護者が自主的に講座や研修を開催するケースも見られます。

つまり、医療を受ける側が、医師の負担軽減のために「自分たちでできることをする」という自発的な動きを見せているわけです。モンスターペイシェントなどが社会問題となっている一方で、患者側が「医師と自分たちの相互の利益のために動く」というのは、注目したいトレンドの一つといえるでしょう。

介護現場の従事者負担軽減と照らしてみる

ここで考えたいのが、介護現場の状況です。介護現場では、処遇改善が道半ばであるうえ、人材不足からくる管理者等の過重労働も問題化しています。加えて、利用者からのパワハラやセクハラなどが労働環境の悪化に輪をかける事態も目立ちます。先の小児患者の保護者による活動のように、利用者・家族の側から「地域の介護人材を守る」という視点で主体的な啓発活動などを広げ、少しでも環境改善を進めることはできないでしょうか。

もちろん、認知症の人と家族の会などから、介護職員の処遇改善に向けた提言などは出されることはあります。しかし、もっと当事者組織のすそ野を広げ、そうした当事者と介護人材がひざを突き合わせて、サービス利用をめぐる理解の推進とマナー、ルールの策定を進める方法も考えられるはずです。

「小児の保護者と要介護者やその家族では、状況も立場も違う」という意見もあるかもしれません。しかし、大切なのは、利用者とサービス提供者がお互いを理解し、制度上の課題を共有する機会を持つことです。その積み重ねが、「主人公となる現場」から施策側も無視できない声を届けるきっかけにもなるはず。その意味で、介護保険制度の閉そく感を解消する一歩として形成したい文化といえます。

たとえば、認知症カフェを拠点とした利用者家族と専門職との交流会や、看取りにかかる(患者側の意思表示等も含めた)勉強会などが、地域でいくつも立ち上がっています。こうした取組みを、「介護人材が働きやすい環境を築くために」というテーマに向けて拡大できないか。地域ケア会議などでも、話し合っていきたい課題の一つでしょう。

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