ケアマネへの新処遇外しで何が起こる?

2019年10月に予定される介護職員への処遇改善上乗せ策について、介護給付費分科会での議論が続いています。具体的には、介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)に新区分を設けるなど、加算による対応がベースとなります。具体策の議論が始まる前に、現段階で懸念される問題を掘り下げます。

新加算、居宅介護支援のみが「カヤの外」?

10月31日の分科会で提示された論点を見ると、政府のかかげる新しい経済政策パッケージにある「柔軟な運用を認めること」という部分は、「介護以外の職種に配分可能」と位置づけられました。ただし、「経験・技能のある介護職員に重点化する」という趣旨を損なわないことが前提となる点は変わりません。

結果として、現段階では介護職員のいない居宅介護支援事業所は対象外となります。訪問看護も同様とされていますが、注意したいのは、18年度改定で「複数名訪問看護」の区分と要件が変更された点です。新区分IIでは「資格は問わない看護補助者の同行」が要件となりました。ここに勤続10年以上の介護福祉士があてられている状況があれば、看護協会などが新たな処遇改善策の対象とすることを要望してくる可能性もあります。

結局は、居宅介護支援事業所のみが「カヤの外」となる可能性もあるわけですが、そうなると法人側は何を考えるでしょうか。法人内で(新加算要件となる)介護福祉士の長期雇用を進めるうえでは、上級の役職・資格への評価を下げるわけにはいきません。つまり、上級資格となるケアマネの給与にも一定の加算効果が及ぶようにする力が働くわけです。

独立型が縮小していく…だけではない問題も

当然ながら、「複数サービスを運営する事業所」と「独立型事業所」のそれぞれのケアマネで比較した場合、処遇上の格差が生じる可能性があります。病院に併設する居宅介護支援も「新処遇の恩恵がない」という点では独立型と同様ですが、医療法人の規模や資力、今後の職能・業界団体の発言力などを考慮すれば、純粋な独立型事業所だけが不利になるという流れは十分に考えられます。

そうなれば、独立型事業所からのケアマネの流出が生じる可能性もあるわけで、事業所の閉鎖や複数サービスを運営する法人への吸収・合併が加速しないとも限りません。国が進めようとする「ケアマネジメントの公正中立」という施策との矛盾も強まるでしょう。

さらなる問題も考えられます。そもそもケアマネが新処遇策の対象にならないとすれば、法人内の全従事者の中でケアマネ業務に就く人材の比率が高いほど、法人内の従事者への処遇効果は薄くなってしまいます。となれば、居宅介護支援部門を縮小するという経営的な力も働くことになりかねません。

さらに懸念されるのは、居宅介護支援部門を温存するとして、組織内で「ケアマネは営業力(自法人サービスへの誘導)で法人に貢献すべし」という土壌が再び頭をもたげることです。「そうしたコンプライアンス違反に対しては、今改定でも規制が厳しくなったうえ、保険者としても取り締まりを強化するはず」と思われるかもしれません。しかし、地域での同じような立場にある法人同士が「相互にサービスを融通しあう」など、一種の「談合」のような状況が生じないとも限りません。(もちろん、保険者も目を光らせるでしょうが、他業界の企業の不祥事を見ても、ありえないことが起こっているのが現実です)

介護保険制度が根幹から揺らぎかねない

結局は、「優良な居宅介護支援事業所」ばかりがしわ寄せを受ける流れがどんどん強まることになります。「悪貨が良貨を駆逐する」という流れになれば、財務省などが考える「ケアマネジメントへの自己負担導入」への国民理解など到底得られないでしょう。一番怖いのは、国民のケアマネ不信が高まる中で、利用者とケアマネの間の信頼関係という極めて重要な土台も崩れてしまうことです。

以上の点を考えたとき、新処遇策における居宅介護支援事業所の扱いは、介護保険制度そのものの根幹にかかわる問題となりかねません。分科会委員の発言力などによっては、居宅介護支援の医療法人への誘導も強まりかねず、そうなれば「介護保険=第2の医療保険」の流れも加速することになります。

今考えるべきは、居宅介護支援を新処遇策から外すのであれば、同時期の期中改定において「優良な居宅介護支援事業所」への報酬上の評価を速やかに上乗せすることでしょう。制度のゆがみをもたらさないために何をすべきかという、施策者側の力量が問われます。

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