= 社保審・介護給付費分科会 =ベテラン介護福祉士に優先配分 厚労省、処遇改善「新加算」の具体像提案 来秋導入

厚生労働省は10月31日、来年10月の介護報酬改定に向けた協議を進めている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)を開催し、介護職員の賃上げの具体的な手法を提案した。

第163回社会保障審議会介護給付費分科会資料

既存の「処遇改善加算」はいじらず、新たな加算の創設によって対応する。勤続10年以上の介護職員がどれだけ働いているかを指標とし、「処遇改善加算」のようにサービスごとの加算率を設定する仕組みを描いた。新加算の増収分を事業所で配分する際も、勤続10年以上の介護福祉士を優先してもらうルールにしてはどうかという。複数の法人を渡り現場を10年以上支えた人も“勤続10年”とみなせるようにするなど、一定の柔軟な運用は認める方向で調整していく。介護福祉士がいない居宅介護支援や訪問看護は新加算の対象外となる。

厚労省はこれから詳細を詰め、年内に具体像を固める予定。

続ければ給料が上がる職場に

来年10月の賃上げは、消費税率の10%への引き上げによって得られる財源で行われる。毎年の費用は約2000億円。このうち公費はおよそ1000億円で、残りは40歳以上の保険料と利用者の自己負担で賄う。

目的はマンパワーの確保。政府は昨年末、10年以上のキャリアを持つ介護福祉士を賃上げのメインターゲットとすることに決めた。多くの経験や高い技能を持つベテランを優遇する構想だ。辞めずに頑張り続けても給料があまり上がっていかない現状を改め、介護の仕事を選ぶ人を増やしたり離職を防いだりする狙いがある。

業界は諸手を挙げて歓迎したが、細部の設計は熟慮して進めるよう要請した。「ケアマネジャーや栄養士、看護師などケアチームのメンバーを除外しないで欲しい」。そんな意見が相次いだ。「若い介護職員を無視するべきではない」「介護福祉士の資格は無いが欠かせない大切な人材がいる」といった声も噴出。関係団体は事業者に一定の裁量を与えるべきだと訴えた。

1法人10年 or 業界10年

厚労省は31日の会合で、あくまでも経験・技能を持つベテラン介護職に重点化した賃上げとしたい考えを改めて強調。一部で柔軟な運用を認めるものの、本来の趣旨を損なわない範囲にとどめる方針を明確にした。

この方針は新加算による増収分の事業所内での配分方法に反映されている。示されたのは“人材のプライオリティのルール化”だ。厚労省は勤続10年以上の介護福祉士に最も多くのリソースを割く(例えば増収分の○○%など)決まりにしたいと説明。次に重要なのは勤続10年に満たない一般の介護職員で、他職種は3番目と位置づける案を提示した。一般の介護職員を2番目としたのは、この賃上げがそもそも介護職員の不足の解消をゴールとしているためだ。他職種に多くの原資が使われると効果が薄れてしまう。

ファーストプライオリティの“勤続10年以上の介護福祉士”の範囲は、事業者がある程度柔軟に捉えられるようにする。「“業界10年”にすべき」との意見が大勢を占めるが、誰もが職歴を証明できる担保はなく技術的なハードルがある。また、厚労省は「形式的な資格だけでなく個々の技能を幅広く評価できるようにすべき、との意見も踏まえる」とも説明。最終的にどのようなルールとするか、今後の大きな焦点だ。“1法人で勤続10年以上の介護福祉士”を基本に一定の例外も認める形が有力、との見方も浮上している。

算定要件に研修体制の構築も

厚労省はこの賃上げのために新しい加算を作ることに決めた。ベテランを優遇したり他職種も対象に含めたりと、既存の「処遇改善加算」とは考え方が大きく異なるためだ。ただし、サービスごとに異なる加算率を設定すること、キャリアパスに関する要件がつくことは「処遇改善加算」と変わらない。

サービスごとの加算率は、“勤続10年以上の介護福祉士”の人数に着目して定められる。ベテランを多く抱えるサービスがより高く評価される仕組みだ。この日の会合では、「同じサービスでも離職防止に努めている事業所とそうでない事業所がある。同じ評価になるのはおかしい」といった異論も噴出した。

厚労省は新加算の要件として、「一定のキャリアパスや研修体制が構築されていること」を求めていく。どこまで踏み込んだ内容とするかは目下検討中。介護職員がより良い環境で働けるようそれなりに厳しくすべき、との主張もある。これも今後の大きな焦点だ。

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