新たな在留資格の先を見すえてみる

2018年秋の臨時国会が始まり、首相の所信表明演説では、「外国人人材の受入れ拡大」に向けた出入国管理法の改正や出入国在留管理を行なう新省庁の立ち上げなどの意向が示されました。新たな制度が介護分野にも適用されるとして、課題はどこにあるのでしょうか。

現行の在留資格「介護」にかかる「制限」

出入国管理法(以下、入管法)の改正における「外国人人材の受入れ拡大」に関係した施策としては、2017年9月より施行されている「在留資格『介護』」があります。これは、介護福祉士の資格取得者を対象に最高で5年の在留資格を付与するもので、在留状況に問題がなければ何度でも更新できます。配偶者や子供が「家族滞在」の資格で本人と一緒に在留することも可能になっています。

ただし、在留資格「介護」を取得するには、(1)在留資格「留学」によって外国人留学生として入国し、(2)介護福祉士養成施設で2年以上修学した後、(3)介護福祉士の国家試験に合格することが必要です(介護福祉士養成施設を21年度までに卒業した人については、5年間の経過措置が設けられています)。(1)~(3)を満たしたうえで、在留資格「留学」が「介護」に切り替わることになります。

注意したいのは、あくまで「介護福祉士」としての在留資格であり、かつ養成施設での修学が必要だということです。つまり、実務経験ルートで介護福祉士の国家試験に合格することは対象になっていないわけです。

法案化が見込まれるしくみと現行の違いとは

これに対し、現在法案化(入管法の改正)が目指されているしくみでは、在留資格に「特定技能1号・2号」という新区分を創設するものです。骨子案では、(1)1号の在留期間は最長5年、(2)1号から2号への移行に際しては「所管省庁が定める一定の試験」に合格することが必要、(3)2号資格を取得すれば「家族の帯同」も可能となっています。

このしくみに「介護」分野が含まれた場合、(2)の「一定の試験」として介護福祉士国家試験なども想定されます。そうなれば、現行の在留資格「介護」の対象とならない実務経験ルートでも同等の扱いになると考えればいいでしょう。これが実現すれば、現在の(EPAによる3か国からの受入れも含む)しくみがほぼ統合・上乗せされることになります。

問題は、1号の受入れ要件をどう設定するか(現行のEPAに準ずることとするのか)、現場での業務上のコミュニケーションに必要な日本語能力等をどこでどのように習熟してもらうのかといった点でしょう。しっかりとした制度設計が必要になることを考えれば、いかに人材不足解決にスピードが必要とはいえ、19年4月施行はやはり拙速ではないでしょうか。17年11月施行の「介護」にかかる技能実習制度などの検証もまだ不十分な中、現場に大きなしわ寄せもおよびかねません。

「2号」の要件が介護福祉士となった場合…

上記のような課題に加え、ここでは少し先を見すえた問題にも目を向けてみます。それは、仮に「特定2号」が適用されて継続的な在留資格を取得した場合に、当事者のキャリアステップをどう考えるのかという視点です。具体的にいえば、介護福祉士取得後の業務経験が5年以上経過した場合に、ケアマネ資格の取得も視野に入ってくることです。

仮に「在留資格ではケアマネになれない」となれば、介護にかかるキャリアステップが途絶えるだけでなく、同等の受験資格を得る日本人従事者との間で差別が生じることになります。また、仮に「ケアマネ取得もOK」になったとして、主任ケアマネはどうか、主任ケアマネを取得しての包括勤務は可能か。「まだ先のこと」と思われるでしょうが、日本人従事者なら当然描くキャリアステップに制限が生じることは、「日本の介護現場で働くこと」へのモチベーションにもかかわります。

そもそも、こうしたしくみを導入する際に、「どうありたいか」を表明する当事者の考え、思いをしっかり聞く行程は欠かせないはず。ここで言う当事者とは、現にEPA枠等で業務に就いている外国人人材のみならず、彼らと一緒に働いている日本人従事者も含まれます。職能団体の代表だけではなく、まずは彼らを対象に地域単位での公開ヒアリングを開催するなど、現場レベルでの議論の場を設けるべきではないでしょうか。国籍を超えたケアチームがどうすればきちんと機能するのか。その点を置き去りにしてはなりません。

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