介護人材を擁護する法律もセットで

老施協や老健協など介護にかかわる20団体の連名により、「認知症施策推進基本法(仮称)」の制定を求める要望書が与党・自民党に提出されました。これに先がけて、やはり与党の公明党が認知症施策推進基本法の骨子案をまとめています。これら基本法制定の機運が高まる中で、プラスαで必要なことを考えます。

認知症施策については17年法改正でも言及

今回の要望では、「認知症研究にかかる国による投資の拡充」や「認知症の人の暮らしやすい社会構築に向けて、当事者や家族の声を反映させていくこと」などが盛り込まれています。また、公明党がとりまとめた骨子案でも、ほぼ同様の内容を見ることができます。いわば、政府の定める新オレンジプランの具体的施策を法律で位置づけ、国の責務をより明確にすることが目されているわけです。

もっとも、こうした法律上の位置づけはこれまでも行なわれていないわけではありません。2017年に成立した改正介護保険法の第5条の2では、「認知症に関する施策の総合的な推進等」として、旧法からの拡充が行われています。見直しの概要は以下のとおりです。

(1)国および自治体に対して、国民への認知症に関する知識の普及・啓発を義務づけたこと
(2)国および自治体が取組みに努めるとした「認知症の介護方法にかかる調査研究」に、リハビリテーションを含めたこと。
(3)国や自治体の取組みにおいて、認知症にかかる介護人材の確保や資質の向上に加え、介護者支援にかかる措置を含めたこと。
(4)国や自治体による(1)~(3)の施策の推進にあたって、認知症の当事者やその家族の意向の尊重に努めるよう求めたこと──です。

国会審議では先の法改正の振り返りも必要に

これを見ると、今回の介護関連団体の要望や公明党の骨子案におおむね沿ったものとなっています。もちろん、介護保険法から独立させることで法整備としての強化を図ったり、努力義務がほとんどという中で(介護保険法との整合性を図りながら)、施策の効果を高めていくことは期待できるかもしれません。

とはいえ、すでに同じ趣旨の法律が整備されている中、大切なのは「先の法律がきちんと機能しているかどうか」をまず精査することです。先の改正介護保険法は政府提出法ではありますが、議員内閣制では与党の意向も多分に含まれているはず。その点を踏まえたうえで振り返りを行なわないと、新法が本当に機能するのかがあいまいになりかねません。

たとえば、新法の法案を秋の臨時国会で審議するのであれば、(1)先の介護保険法で足りない部分はどこにあるのか、(2)新法がそれをカバーするものになっているのかどうかのチェックから始めることが望まれます。

その際、(2)の「カバーできているかどうか」について欠かせない視点があります。それは、実際に認知症ケアを担う介護人材が、その職務を遂行しやすい環境に置かれているのかどうかです。改正介護保険法でも、「必要な介護人材の確保」はうたわれています。しかし、「確保」という表現は、どうしても施策者側の目線が前面に出て、実際に現場で働く人の視点の弱さが感じられてなりません。

人材を守る法律と併せてこそ基本法は活きる

たとえば、適切な認知症ケアの手法がどんなに進化・確立しても、それを現場の人材がきちんと身に着けたり実践する余裕がなければ、絵に描いた餅となってしまいます。

事業者や施設が「人材を育てたり、BPSD改善を図る」ための方策が十分にとれないまま、入職間もない人材をいきなり現場に配置したらどうなるでしょうか。人材にかかる負担やストレスは極めて大きくなり、それが不適切なケアに拍車をかける→認知症のBPSDがさらに悪化するという悪循環の可能性も高まります。つまり、介護人材の目線に立って、認知症ケアをめぐる職場環境や教育環境をきちんと整えなければ、せっかくの法理念を実現することなどできないわけです。

この点を考えたとき、先の認知症施策推進基本法とともに、現場の介護人材を擁護するための基本法の制定などが必要になります。

具体的には、介護人材の処遇や入職後の教育体制、職場環境の整備(認知症のBPSD緩和のための環境整備も含む)について規定し、保険者や雇用者である法人にきちんと守らせること。国には、法人が上記を守れるような財政的支援などを義務づけること。これらを基本法に盛り込み、守られない場合の現場従事者の異議申し立ての方法や権利もきちんと保障することが必要でしょう。先の基本法は、こうした法整備との両輪をもって初めて機能するという認識が必要ではないでしょうか。

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