介護保険財源へと波及する新たな懸念

次の介護保険制度の見直しに向け、7月26日に社会保障審議会・介護保険部会の議論が再スタートしました。まず、掲げられたのが「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」についてです。この論点は、制度上でどのような意味を持ってくるのでしょうか。

一般介護予防の機能強化を目指した議論

今回のテーマは、6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2018」でかかげられたものです。具体的には、高齢者を対象に、(1)「通いの場」を中心とした介護予防・フレイル対策、(2)生活習慣病等の疾病予防・重度化予防、(3)就労・社会参加支援について、市町村が一体的に実施するしくみを検討するというものです。

ここで言う「一体的」とは、制度の枠(たとえば介護保険と医療保険)を超えてという意味合いがあります。この課題については、すでに4月19日開催の医療保険部会で取り上げられました。具体的には、「市町村」が主体となった「介護保険における介護予防」と、「健保・国保(75歳以上では後期高齢者医療にかかる広域連合)」が主体となった「生活習慣病対策・フレイル対策」の一体的実施を模索するというものです。

現場レベルでの実施イメージとしては、介護保険の地域支援事業における「一般介護予防」の場に、保健師や管理栄養士、リハビリ職などを派遣します。そのうえで、一般介護予防の「通いの場」で、生活習慣病対策・フレイル対策の機能を上乗せしていくわけです。

地域支援事業への医師会等の関与が急拡大

ここで「一般介護予防」についておさらいをしておきます。これは、介護保険を財源とする介護予防・日常生活支援総合事業(新しい総合事業)のうち、すべての高齢者を対象とした事業です。地域の特性に応じ、「通いの場」を通じた介護予防教室の開催(地域介護予防活動支援事業)などが行なわれています。

注目したいのは、2015年度から新しい総合事業が随時スタートした際に、一般介護予防事業の中に「地域リハビリテーション活動支援事業」がメニューに加わったことです。これは、先の「通いの場」等にリハビリ専門職等を派遣して、地域における介護予防の機能強化を図ったものです。

このケースで派遣される「リハビリ専門職等」は、多くの場合、医療機関等に従事していることが想定されます。この点については厚労省も認識していて、昨年6月に改定された総合事業のガイドラインでは、「地域の医師会等と連携した体制整備」や「都道府県医師会等によるリハビリ専門職等の広域派遣調整」などの実施を求めています。

つまり、17年度の段階で地域支援事業への医師会等のかかわりは、さらに踏み込んだものになったわけです。加えて、今年4月から完全実施された在宅医療・介護連携推進事業でも、医師会等に運営を委託するケースが目立っています。こうしてみると、要介護者向けのサービスで医療のかかわりが随時強化されていく一方、地域支援事業でも医療の役割が大きな比重を占める流れとなっています。

部会の委員からも「財源移管」への懸念が

そして、今回提示されたのが、医療保険(あるいは後期高齢者医療制度の広域連合)が主体となった事業と、介護保険財源による一般介護予防の「一体化」です。こうなると、「介護保険財源に医療資源が参入してくる」という流れはさらに加速することが予想されます。

こうした点について、介護保険部会では日本経済団体連合会(経団連)所属の委員から「懸念」を示す意見書が出されました。それは、「全額公費負担(後期高齢者対象の「高齢者の低栄養防止・重度化予防等の推進」は18年度予算額で3.6億円という公費で実施)で運営されている事業すべてを、介護保険財源に移管する点については賛同しかねる」というものです。経団連としては、2号保険料の負担増につながる流れを警戒したわけです。

いずれにしても、限られた介護保険財源を「どこまで(医療的な施策に)使うのか」という議論がきちんと整理されないと、しわ寄せは要介護者向けサービスにもおよびかねません。医療保険財源のみならず、公費による事業まで「介護保険へと付け替える」という流れが際限なく強まれば、介護保険そのものの存立にもかかわってきます。それが、結果として「重度化防止」を逆行させることにならないか。今後の議論への注視が必要です。

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