= 淑徳大学教授 結城康博 =人手不足の大きな要因は介護現場で中間管理職が育っていないこと 外国人受入れでは解決しない

介護サービスの現場で働く外国人を増やしていく―。そんな流れを政府が作ろうとしている。6月に閣議決定した今年度の「骨太方針」に、就労を目的とした新たな在留資格を創設すると明記。昨年11月に解禁した技能実習制度などとあわせ、受け入れを一段と加速させていく構えをみせている。今後さらに深刻化する人手不足の緩和につなげる狙いだ。

この動きをどうみているか、淑徳大学・総合福祉学部の結城康博教授に語ってもらった。2回に分けて伝えるインタビューの後半。外国人の増加で人手不足は解消するのか、というやり取りから話を進めていく。(聞き手・編集:Joint編集部 青木太志)

【結城教授インタビュー:前半】
介護現場への外国人の受け入れ、要件設定を誤れば現場はパニックに陥る


《 淑徳大学・結城教授 》

―新しい在留資格の創設などで外国人の労働者が順調に増えれば、現場の人手不足は解消していくのでしょうか?

私は施設間の格差が大きくなるとみています。勝ち負けがより明確に出ると言い換えてもいい。ダメなところは好転しないでしょう。よく「人材がいない」と言われますが、今だってしっかり確保できているところがちゃんとあるんです。「ウチは足りている」とはっきり言う経営者だっていますよ。

―その分かれ目は?

うまくいっている施設に共通しているのは、どこも非常に力を入れておられるということ。ビジョンを描いて介護の魅力を伝える、研修の機会も用意して丁寧に育てる、給料はできるだけ高くする、休みも人並みに取れるようにする、働く環境の改善にも気を配る、工夫を凝らして求人する―。課題の解決に向けて様々な取り組みをしているんですね。そうして良い職場を作っているところは、職員が外から職員を呼んでくることも多く好循環が生まれます。人を思うように集められない施設は、そうした努力を十分に行っているんでしょうか? ここでいったん立ち止まり、それぞれが自らを省みる必要があると指摘させて頂きたい。もちろん、いくら頑張ってもどうにもならない地域もあるとは思いますが…。

―施設の頑張りが重要だと?

特に今後は一段と努力する必要があるでしょう。そうでないと多くの外国人が来日しても問題は解決しません。日本人でも外国人でも根本は同じではないでしょうか。環境が良ければ高いモチベーションで働いてくれるし、そうでなければ他へ行ってしまう。魅力ある職場を作らないと定着してくれませんよね。それを怠ってしまえば、経験の浅い職員が頻繁に入れ替わる状況が生まれるでしょう。人材難は払拭されず、高いサービスの質を維持するのも難しくなってしまいます。外国人が来ても来なくても結局は同じ。施設の努力は欠かせないんです。

―人材の定着や育成のために、ということですね。

私は経営者や施設長、介護長に問いたい。魅力ある職場を作る努力を重ねてきましたか? これからしっかり取り組んでいく準備をしていますか? 確かにこの国では働き手が減っています。介護報酬も減らされて厳しいでしょう。でも、本当にそうした外的な要因だけが全てですか? 自分の施設の至らない点に目を向けていますか? 内的な要因を解消しておかないと、外的な要因が無くなっても人材は確保できませんよ。

―現状ではやや不安があると?

介護の業界は総じて魅力ある職場を作っていく意識が低い―。他の業界なら当たり前のマネジメントすらできていない施設が少なくない―。私はそうみています。中堅以上になっても知識が不十分な職員が多く、ノウハウも蓄積されていません。

―その要因は?

経営者の責任が大きいですね。加えて、従来の公共政策にも不備があったと言えるでしょう。目先の人手不足をなんとか解消しようと、人材の新規参入や転職者の受け入れなどにリソースの多くを投じてきました。それも大切なことですが、しっかりした中間管理職を育成するプロジェクトもセットで展開すべきだったんです。それを疎かにしてきたために、魅力ある職場を作る能力が現場で培われませんでした。今後は変えるべきです。優秀で人間力のある中間管理職、現場の良きリーダーを育てていく事業を推進すべきでしょう。介護職の魅力ややりがいを伝えられる、仕事を教えるのがうまく後輩を引っ張っていく人望もある、労働法制に関する知識がありその理念や意義を理解している―。求められるのはそんな中間管理職をもっともっと増やすことです。

―それが人手不足の解消につながる?

中間管理職の能力と職員の定着の関係は強いですよ。頼れる先輩がいない施設に入った結果、すぐに仕事が嫌になって辞めてしまう―。私の教え子でもそんなケースが多いんです。優秀で人間力のある中間管理職、現場の良きリーダーが非常に少ないという現状は、人手不足の解決策を考えるうえで最も重要な問題の1つでしょう。国や自治体、施設の経営者などには、人材確保の対策として早急に何らかの手を打って頂きたい。そうでないと外国人をいくら入れても定着せず、十分なサービスを提供できない施設が増えてしまいます。そこに入所している高齢者や家族が、無為無策によって不利益を被らないようにしなければいけません。

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