地域包括ケアスキルの乏しさはなぜ?

シルバーサービス振興会が実施している「介護プロフェッショナル段位制度」(以下、介護キャリア段位制度)については、現場におけるOJT指導と一体となった評価システムとしての活用が図られています。そのOJT開始前に行なわれる期首評価データにおいて、実践的スキルのうち「地域包括ケアシステム」にかかる実践的スキルが不十分(できていない)という傾向が明らかになりました。

国が目指すしくみと現場の職業風土の間の溝

この「地域包括ケアシステム」にかかる評価項目は4つあります。(1)地域内の社会資源との情報共有、(2)地域内の社会資源との業務協力、(3)地域内の関係職種との交流、(4)地域包括ケアの管理業務という具合です。地域における「切れ目のない支援」のための多職種・多資源との連携にかかるスキルが問われるという中で、その部分の(OJT開始前の)評価が低いことが指摘されているわけです。

象徴的なのは、「経験年数10年」というベテランや「介護福祉士」という国家資格の取得者であっても、「できていない」という比率が6~7割に達している点です。外部機関の多職種との連携が要件となる加算なども増えている中、それでもスキルが向上しないということは何を意味するのでしょうか。

言うまでもなく、「国が目指しているしくみ」と「現場が培っている職業風土」の間に大きな溝があることに他なりません。これは、現状における介護施策が抱えている課題を端的に表していると言えるでしょう。

医療主導のミッションを背負わされる現状

地域包括ケアシステムの理念は、その人が「どんなに重い状態」であっても、「住み慣れた地域でその人らしく生活できる」よう、多職種・多資源による包括的な支援を行なうというものです。ケアマネジメントの視点でいえば、その人の社会参加の姿を「住み慣れた地域」の中に求め、その実現や継続を目標として設定していくことになるでしょう。

ところが、現実のしくみとなると、「どんなに重い状態でも地域に戻す」、つまり「在宅の療養限界点を上げる」ことが「まずありき」の傾向が強くなっています。この場合、表向きは「多職種連携」と言いつつ、実際は「医療主導」のしくみとなりがちです。

18年4月から完全実施となった在宅医療・介護連携推進事業でも、医療・介護間の地道な連携風土が培われていない地域では、どうしても「運営を地域の医師会に丸投げする」という流れになっている傾向が見られます。結果として、それぞれの職種が「お互いの専門性を理解・尊重しつつ、対等の目線で議論する」という風土はなかなか築かれません。

いきおい、「本人の社会参加」よりも「医療主導による本人の療養体制の確保」が優先されがちです。介護職にとっては、生活支援を通じて「本人の社会参加の姿」を追求するという専門性を発揮する以前に、「医療提供に必要な情報収集」という医療主導のミッションを背負わされてしまうことになります。

多職種連携スキルが培われてない2つの背景

今回の期首評価データを見ると、初任者研修修了者において「個別介護計画の立案」や「その計画に基づく支援・モニタリング」なども(「利用者に関する情報収集」に比べて)「できている」が低くなっています。その点では、そもそも「本人の社会参加」というビジョンを見極めるスキルが低いという指摘も否定はできません。しかし、それは「本人の(社会参加に向けて)しようとしている生活」着目したケアを進めるうえで、リスクをカバーできる資源が乏しいという事情もあります。

たとえば、地域というフィールドでのケアを進めるうえで、事故等を防ぐだけの人員が確保できなければ、(現場の支援者が重責を負うというリスクが払しょくできない中で)どうしても「内向きのケア」となりがちです。これをカバーするためには、むしろ医療をはじめとする外部の専門職が介護現場に歩み寄りつつ、介護側が「進めようとしていること」をきちんとサポートする体制が必要です。

要するに、多職種連携スキル等が「できていない」のは、以下の2点が考えられるわけです。それは、(1)介護職が広い視野をもって働ける基盤があまりにぜい弱であること。(2)医療職等が主体的に「介護側に歩み寄る」という意識がまだまだ足らないこと、です。

地域包括ケアシステムという施策上の理念をどんなに積み重ねても、土台が揺らいでいる中で「建物を増築する」ことはかえって崩壊のリスクを高めてしまいます。地面の上だけで立派に見えるしくみは常に危ういもの──国はこの危機感をもっと持つべきでしょう。

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