総務省が公表を進める各種調査に注目

総務省の行政評価局が、厚労省の介護施策にかかる取り組み状況の調査結果を公表しました。テーマは「高齢者を介護する家族介護者の負担軽減対策」を中心としたものです。政府が「ニッポン一億総活躍プラン」で「介護離職ゼロ」を打ち出したのが、2016年6月(閣議決定)。その半年後に行なわれたのが、今調査という位置づけです。一連の流れの中で、今回の調査が、これからの厚労省施策にどのような影響を及ぼすのかを考えます。

間もなく発表となる総務省のもう一つの調査

今調査の結果を掘り下げる前に、同じく総務省の統計局が行なっている調査に注目しましょう。それが5年ごとの実施となる就業構造基本調査です。この調査は統計法という法律に則って、国勢調査調査区の世帯員約108万人を対象としたものです。今回の行政評価局の調査で抽出したのが、家族介護者4700人ですから、かなり規模に差があります。

その就業構造基本調査では、「介護と就業」をテーマとした調査項目が設けられています。その中に「家族の介護・看護のために前職を離職した人の数」があり、直近の12年調査では「過去5年間で48万7000人にのぼる」となっています。この「1年で10万人近くが離職」という状況が、政府の打ち出している「介護離職ゼロ」施策の基点となっています。

さて、この「就業構造基本調査」は5年ごととなっており、直近の調査は17年10月に実施されています。お分かりのように、政府が「介護離職ゼロ」を打ち出してから初めての調査となっているわけです。

介護休業制度見直しの施策評価のためには?

さて、この就業構造基本調査の最新結果の公表ですが、総務省から「18年7月13日」というスケジュールが発表されました。今回の行政評価局の調査公表から「ほぼ1ヶ月後」のタイミングとなるわけですが、仮に政府にとって厳しい数字(介護離職の改善があまり見られない、もしくは悪化しているなど)となった場合、行政評価局の調査結果に基づく「勧告」のインパクトはさらに強くなります。

こうした点を頭に入れたうえで、行政評価局の調査結果を見てみましょう。

介護休業制度については、「使い勝手の改善」を狙った改正法の施行が17年1月なので、調査時期とほぼ重なります。つまり、介護休業制度にかかる施策効果については、調査時期的には評価を行なうことは難しいといえます。就業構造基本調査についても「施行から1年足らず」という点を考えれば、やはり十分な効果検証には至らないかもしれません。

この点を考えれば、内閣府等の責任によって「介護離職」にかかる毎年度の調査を行なうことが求められます。毎年、各種調査研究には相応の予算が投じられているわけですから、政府が掲げた「総活躍プラン」に則って優先順位を上げることは可能なはずです。このあたりは、「介護離職ゼロ」施策にかかる政府の本気度が試される部分といえます。

総務省提言が3年後の制度見直しに波及か?

このように、テーマによって調査時期が微妙という点もあるわけですが、タイミング的に「既存施策の検証に資する」というテーマもあります。それが、「介護保険サービスについての認識」にかかるものです。

たとえば、家族介護者の声として最初の方で上げられているのが、「デイサービス等の利用時間が勤務時間より短い」というものです。ちなみに、この調査は15年度改定から2年近くが経過したタイミングで行なわれています。15年度改定では、デイサービスの延長加算の拡充が行なわれましたが、その効果は利用者家族には届いていないわけです。

当然、ここには延長時に配置できるだけの人材の不足という問題が横たわります。もっとも、その後の18年度改定では(わずかに)プラス改定となりました。しかし、この段階での調査を行政評価に使うということは、資源を有効機能させるための人材確保について、総務省提言が入る可能性が出てきたわけです。

何らかの提言が出されれば、介護保険部会や介護給付費分科会でも論点として取り上げざるを得ないでしょう。ちょうど、前回改定の議論の際に会計検査院から「特定事業所集中減算」にかかる提言が出されたのと同じ構図となることも想定されます。

行政機関の間で第三者的なチェック機能が働くこと自体は、望ましいことといえます。一方で、「こちらを立てて、あちらを削る」といったような省庁間の駆け引きで終わってしまっては意味がありません。まずは、7月13日の就業構造基本調査の結果をチェックしつつ、総務省の動きに注意したいものです。

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