認知症行方不明ケースと介護現場の関連

警察庁が、2017年における「行方不明者の状況」を公表しました。原因・動機別のデータでは、「認知症によるケース」が1万5,863件、全体の割合で18.7%と(原因・動機に「認知症」を含めた)2012年以降でもっとも高くなっています。介護現場としてこの数字をどうとらえるか、今後の対応にどう活かしていけばいいのかを掘り下げます。

過去最多を記録した背景には複合的要因も

このデータにおける「行方不明者」の定義とは、「警察に行方不明届が出されて受理されたケース」を指します。「認知症による行方不明」も同様ですが、この場合の「届出」は家族等に限った話ではありません。たとえば、認知症の人を対象とした「SOSネットワーク」の場合、初動期から警察がネットワークに加わっていることもあり、その過程で関係機関を含めて届出を受理することも考えられます。

そうした中で、認知症を原因とした行方不明者が過去最高を記録したわけですが、以下のような、いくつかの複合的な要因が考えられます。(1)人口の高齢化により、行方不明リスクのある認知症ケースが単純に「増えた」こと。(2)高齢者のみの世帯の増加で、家族による見守りが厳しくなっていること。もう一つは、(3)上記で述べたSOSネットワークの取り組み等により、家族や身近な支援者だけで早期(たとえば1日以内の)発見につながった場合でも、「警察への届出」につながるケースが増えたという仮説もあげられます。

行方不明者数だけを強調することの危険も

以上の点(特に(1)、(2))を考慮した場合、認知症を原因とする行方不明者が今後も緩やかに上昇していくことは、ある程度予測できます。そのうえで、いかに早期発見につなげるかという点に着目すべきでしょう。たとえば、地域の実情にかかわらず「SOSネットワークの体制整備」が円滑に進められるようにする施策や、ニーズに応じたGPS等の無料提供のしくみなどが課題としてあげられます。

確かに「行方不明」の事例自体が「過去最高」を記録するというのは、社会的にはショッキングな数字と受け取られるかもしれません。しかし、「この数字をいかに減らすか」という点ばかりが強調されると、認知症の人の閉じ込めなど「本人の自由を奪う」ことを正当化する世論も再び生じかねません。

現在、認知症サポーター養成講座を受ける人が1000万人におよぶなど、認知症に対する理解(「閉じ込め」などはBPSDを逆に悪化させ、他の事故リスクを高めるなど)が社会的にも浸透はしつつあります。その半面、「社会に迷惑をかけずに、家族がちゃんと面倒をみるべき」という不寛容な自己責任論も根強く残っています。介護現場としても、「本来、何を議論すべきなのか」を社会に対してきちんと発信していくことが必要です。

早期発見を下支えする介護現場の役割に光を

ただし、もう一つの課題があります。それは、社会への発信を担う「介護現場」自体の疲弊です。今回のデータでは、行方不明者の数だけにこだわることの懸念を述べましたが、その推移については注意が必要です。それは、2015年度の介護保険制度の見直しと報酬改定の直後(15年と16年)に、認知症による行方不明者の増加が加速したことです。

ポジティブに考えれば、地域支援事業の再編によって認知症総合支援事業がスタートし、先のSOSネットワークなどの整備が進んだこともあげられるでしょう。一方で、介護報酬の引き下げにより、地域の介護資源の撤退や従事者不足が加速し、「BPSDの悪化を防ぐケア」が十分に行ないにくくなっているのでは──という仮説も検証する必要があります。

たとえば、通所介護や短期入所での「認知症にかかる個別ケア」を十分に提供できる体制が弱くなれば、本人にとって、長時間事業所にいることが強いストレスになることもあります。その状態で帰宅すれば、心理的な不穏状態が解消されないまま、「家族が目を離したすきに外に出てしまう」と言うケースも増える可能性があるでしょう。

先に行方不明者の早期発見が大切と説きましたが、それとセットになる形で重要なのが「本人のBPSDが極度に悪化することを防ぐ」ことです。たとえば、本人が「一人で外に出た」として、本人の不穏状態のレベルによっては「(特に対応スキルがなくても)近所の人の声かけ」で十分誘導できるケースもあります。つまり、介護現場の下支えがあってこそSOSネットワーク等も機能するわけです。こうした視点から、介護現場の機能を見直していくこともますます必要になります。

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