高齢者のみの世帯を個別訪問 介護予防を促すアウトリーチ 練馬区が新たな試み


《 練馬区役所 》

東京都練馬区は今年4月から、高齢者が1人で暮らす世帯や高齢者のみの世帯を個別に訪問する事業を始めた。介護保険を利用している人などを除いたおよそ2万人が対象。地域包括支援センターの職員やボランティアが担い手となり、生活の状況を把握しつつ介護予防の活動などを促していく取り組みだ。スタートした経緯や目指す効果などについて、担当する高齢者支援課の今井薫課長に聞いてきた。(聞き手・編集 Joint編集部 北村俊輔)

―事業の概要を教えてください。

地域包括支援センターの職員と協力してくれるボランティアが連携し、対象者の自宅を個別に訪問しています。本格的に始まったのは今年4月からですが、区内の3ヵ所の包括で昨年度からモデル事業を進めてきました。最初は社会福祉士などが訪ね、専門的な視点で評価します。どんな生活を送っているか、何か問題を抱えていないか― 。ここで見守りが必要だと判断したら、その後もボランティアの方などに定期的に訪問して頂きます。必要があれば介護保険制度につないでいきます。

―特に問題がなかった場合は?

介護予防の取り組みをお勧めします。近くで開催されている活動などの情報を提供し、参加してみてはどうかと呼びかけるんです。

―多くの世帯を回らなければいけませんよね。

訪問担当の常勤・専従の専門職2名を、地域包括支援センターに4月から新たに配置しました。1つのセンターで700人から800人ほどカバーするため、年間で1人あたり約400人を担当する計算になりますね。ボランティアの方には1人あたり多くて5人、平均で1人から2人を担当して頂いています。「買い物のついでに寄ります」などと言って気軽に参加してくれる方が多いんですよ。

―ボランティアは集まりますか?

今、全員で200人程度ですね。70歳前後の方が多いです。事業はまだ始まったばかり。ボランティアにつなぐケースがそれほど多くないため、今のところは不足していません。今後は人数を増やしていこうと考えています。


《 今井課長 》

―取り組みを始めたきっかけ、経緯は?

練馬区は1人暮らしの高齢者が非常に多いんです。今年3月の時点で5万人を超えており、区内の高齢者数(15万8000人)のおよそ3割を占めています。以前とったデータでは、2人以上で暮らす高齢者の要介護認定率が15%弱だったのに対し、1人暮らしの高齢者は30%を超えていました。この差をなんとかしないといけない―。それが最も大きな問題意識でした。高齢者のみの世帯も、日々の暮らしを続けていくうえで何らかの課題、困りごとを抱えているケースが少なくないので、訪問の対象に含めています。

―認定率の格差に着目した取り組みなんですね。

我々はこの事業で、介護予防の活動につなげていくことを重視しています。継続的な見守りも大事ですが、社会参加や介護予防をより活発にしていくことに大きなウェイトを置いています。見守りのための訪問は多くの自治体で行われていますが、介護予防を呼びかけるアウトリーチは珍しいのではないでしょうか。

―効果は出そうですか?

前向きな方は積極的に顔を出して頂ける一方で、本当に来て欲しい方にはなかなか来てもらえない― 。地域の活動にはそんな現実があります。公式サイトや区報なども十分に見られません。必要なところに必要な情報が届いていないことが課題でしょう。そこで訪問です。公式サイトや区報などで発信するだけよりは高い効果が出ますよ。区では2年前から、独自の介護予防の拠点として「街かどケアカフェ」を設置してきました。その事業の中で、職員が1人暮らしの方のお住まいへ行って直接誘うという取り組みを行ったのですが、その時の成功体験がベースになっています。お誘いした人の約4割がカフェに来てくれたんです。

―今後の展望、目標は?

区内の高齢者のみの世帯は今後も増える見通しです。1人暮らしでも安心して住み続けられる地域を作りたい― 。我々はそう考えています。練馬区は地域の活動が盛んで、介護予防の取り組みも積極的に行われています。NPOやボランティアの数も都内では多い方なんですよ。つまり、長く元気でいるために必要な要素は揃っている。あとはそこへどうつなげていくかが重要でしょう。この事業はそうした認識から生まれました。1人でも多くの方が元気でいられるきっかけを作れればと思っています。

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