生活支援の適正化で現場はどうなる?

  • コラム
  • 宮川明子
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全国の平均利用回数を大きく上回った生活支援利用を位置づけたケアプランは、今後自治体に届け出が必要となりました。利用者に不安を与えるだけでなく、現場にも混乱と迷いが生じています。これからどう対処していけば良いのか、ここで考えてみます。

月90回以上の利用は「多すぎる」のか?

2016年に開催された厚生労働省の社会保障審議会で、学識者の一部から次のような意見が挙がっていました。

「自立支援につながらない生活援助をやっているのではないか」
「だらだらと生活援助が続くのは見直しが必要」

議論のなかで月90回以上のケースの具体的理由が述べられ、それまで無駄に多すぎるのではという方向性で進んでいた議論が、「やはり生活援助の必要性が高いことには、やむを得ない理由があった」と結論付けられました。そして最終的に、平均利用回数を1カ月当たり要介護1で27回、要介護3で43回などとする方針と決定づけられました。

介護度が軽い人の方が生活支援を必要としている?

地域性が大きく異なるにも関わらず“全国平均”で決められたことも、現場の実態を反映していないと感じます。また、介護度が軽いから回数を減らすという一見安易とも思える考えは、利用者の自立支援につながらないのではと感じました。

介護や制度のことをよく知らない人のなかには、ヘルパーのことを「家政婦」などと言う人もいるようです。しかしヘルパーと家政婦は全く異なります。ヘルパーが行う生活援助はただ家事を行うという単純なものではなく、一緒に料理や掃除などを行う中で介護度を維持または軽減させるための時間であり、重度になれば本人がしたくとも、こうした家事をすることはできなくなります。つまりヘルパーは、「できるところは自分でできるようになるための見守り」という援助も行っているわけです。

生活援助には、認知症の進行を緩やかにする側面もあります。しかし利用制限がかかることによって利用者のADL低下を引き起こすことになってしまうかもしれません。「待つ」「見守る」「できるところは自分でやってもらう」という支援には専門性が必要です。そのため介護度が軽い人の方が、むしろ多くの関わりを持つ必要があるのではないでしょうか。

生活援助に求められる専門性

「見守り」の内容や、どれくらいのサポートがあれば自立して行うことができそうかについては、PTやOTなどの専門家に助言を求め、それに沿って行うようにしたいものです。それに伴う連絡調整をしっかり行うことは、ケアマネジャーの大切な仕事の一つといえます。この調整の目的は、通所リハで行ったことを自宅でも同じようにできるようにすること。在宅介護の職員や通所リハの職員が情報共有し、適切なケアプランをつくるようにしたいものです。

通所で実施したことを在宅で本人が実際に行うと、思いのほか時間がかかることがあります。もちろんどんな介護度でも、できる限り自分でできることを自分で行えるように援助するスタンスは変わりません。しかし、やはり加齢に伴って自立度は下がってしまいます。この場合、ヘルパーの方が手早く行えるため、手伝うことで生活援助の時間が減ることになるでしょう。

しかし、そのように専門性の必要なケアによって自立できるようになったとき、在宅介護の時間を減らすのは難しいものです。例えば使わなくなった介護サービスをあらかじめ点数化しておき、後に加齢で介護度が上がって支援を受けなければならなくなった際に使えるというのも、1つの方法として考えられるかもしれません。

このように考えていくと、介護度が軽い段階で本人と一緒に買い物や料理、掃除などを行うことで状態維持ができるなら、状態が軽度なうちにしっかりサポートすることが重要と言えます。そして通所リハビリテーションと自宅での生活を上手くつなげていくためには、どのサービスにも高い専門性が必要となるでしょう。そのためにはケアマネジャーの連絡調整能力のさらなる向上が求められており、私自身もまだまだ色んなことを身につけなければと感じます。

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