ケアマネ評価こそ介護人材参入のカギ

公益財団法人「介護労働安定センター」が、介護の魅力を発信する動画「介護の仕事を始めよう! 一人ひとりが輝ける場所がある」を公開しました。介護現場における人材確保が依然として厳しい中、こうした情報発信はこれからも増えてくると思われます。

「費用対効果」を考えた場合の情報発信

介護労働安定センターといえば、年間収入の多くが国からの交付金でまかなわれています。厚労省の検討会では、同センターの交付金依存体質等を改善する改革案が示されていますが、それでも18年度予算ベースで交付金比率は約6割(17.6億円)に達しています。こうした点では、今回の動画発信もおおむね「国の事業」ととらえていいでしょう。

現在の国による介護人材確保のビジョンは、15年2月に取りまとめられた報告書「2025年に向けた介護人材の確保」をベースとしています。具体的な方策は3つの軸で成り立ち、(1)参入促進(そのための情報発信)、(2)労働環境・処遇の改善(キャリアパスの整備含む)、(3)資質の向上となっています。今回の動画は(1)の参入促進を目的としたもので、いわゆる「富士山型」の介護人材確保に向けた「すそ野の拡大」を図るべく、幅広い層への興味・関心を克己することが狙いといえます。

問題は、上記でも述べたように、動画を作成したセンターの運営に国の交付金が多く投入されていることです。貴重な税金が投入されることを考えれば、施策パーツの一つであっても「費用対効果」をきちんと検証しなければなりません。つまり、何でも投入すればいいというのではなく、現場従事者や職能団体などが「効果的な方法である」ときちんと認定できる質が要求されるわけです。

参入者が当事者意識を持てるかどうかが重要

そうした視点で考えたいことは、人が「特定の業界・業種に興味をもつ」うえで、何がトリガー(引き金)になっているかということです。人が何かに「興味・関心をもつ」というレベルには2段階あります。

1つは、第三者的な視点(つまり好奇心的なレベル)で何かに目をつけるということ。もう1つは、そこに自分が主体的にかかわるというイメージを持って(つまり当事者的な視点で)、対象に注目するというレベルです。

現代はさまざまな業界・業種の情報であふれかえっています。しかも、労働力が慢性的な「売り手市場」になっている中では、情報発信の競合も激しさを増す一方です。そうした環境下で、前者(好奇心をひくレベル)だけに大量の資源投入を図っても、先に述べた「費用対効果」は極めて悪くなります。つまり、後者の「当事者的な視点でとらえる」というレベルの情報の質が求められるわけです。

では、当事者的な視点とは何か。それは、「自分がその業界・業種に参入した」として、「自分がどのように働き、職業人として成長していくのか」という明確なビジョンを描けるかどうかです。国が示す「富士山型」を例にとれば、すそ野に立ったとき、すでに山頂がくっきりと見渡せる状況を言います。山頂が曇っていて何も見えない(山頂の天候がどうなのかもわからない)状態の中、登山を強行するのは無謀ということになるでしょう。

「山頂」をくっきり晴れた状態にするには?

上記の「山頂」がくっきり晴れた状態を作りだすにはどうすればいいでしょうか。それは、介護にかかる一定以上の職能が、「未来ある働き方」をしている光景がはっきり見えることです。そして、入職→(3年目の)介護福祉士という次のステップビジョンの中心をなすのはケアマネではないでしょうか。 特に居宅ケアマネの場合、在宅のケアマネジメント遂行という「業務独占」があります。介護福祉士の上位資格には認定介護福祉士もありますが、業界内での共通した業務独占はありません(この認定介護福祉士の法令上の位置づけをもっと明確にできれば、これも「有効な情報発信」となるはずですが…)。

「山頂をくっきり見せる」というビジョンに立てば、何よりもケアマネの成してきた実務を評価し、それに見合った処遇改善を図るというのが、情報発信的にも極めて効果は高いはずです。ケアマネの公正中立機能を視野に入れれば、事業所の規模や報酬取得状況等ではなく「ケアマネ個人」の実務を純粋に評価する交付金スタイルが望ましいといえます。名称も、ケアマネ個人が自身の実務にプライドが持てるよう、「ケアマネ実務強化交付金」といった具合にしてはどうでしょうか。

業界のすばらしさを社会に情報発信するのであれば、「先輩・先達者が誇りをもって活き活きと働いている姿」を国が責任をもって作り出すことが一番のはず。そして、費用対効果も高い施策となるのではないでしょうか。

コメント[26

コメントを見るには...

このページの先頭へ