セクハラを「個人の問題」にしない

UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)が組合員を対象に行なった調査で、3割の介護職員が利用者や家族からセクハラを受けた経験があるという結果が明らかになりました。介護現場ではかなり以前から「セクハラ」のみならず利用者・家族からのさまざまなハラスメントの問題が指摘されています。解決の道筋を考えてみましょう。

セクハラ対応は組織のリスクマネジメント

利用者や家族から介護職へのさまざまなハラスメントを解決するうえで、「利用者・家族への啓もう・啓発を行なう」といった利用者教育にかかる提言が行われることがあります。確かに、利用者・家族を含めた社会全体の認識を転換していくことは、長期的に見れば地道に行なわれるべきテーマでしょう。

しかし、従事者を雇用する運営法人として、社会認識の醸成を待っているだけでは不十分です。こうしたセクハラなどの問題は、現場の介護従事者を追い詰め、その結果として彼らの心身の健康を損なったり、早期離職のリスクを高めたりします。これは法人の安定した介護事業運営を大きく揺るがす要因です。

その点では、現場従事者が受けるハラスメント被害は経営に直結するリスクととらえるべきでしょう。セクハラ等への対策は組織上のリスクマネジメントが必要となるわけです。

組織上のリスクマネジメントの基本は、以下の2つです。1つは、現場で生じているリスクを潜在化させずに組織として掌握し対応策を講じること。2つめは、すでに発生している問題について、当の従事者に解決負担を負わせるのではなく、組織内の専門チームで集中的な解決に乗り出すことで当事者への影響を最小限に抑えることです。

「個人の問題へのすり替え」を防ぐために

1つめの「組織としてのリスク掌握」について言えば、当の従事者が我慢や泣き寝入りをせずに「管理職等へきちんと相談できるしくみ」を作ることが必要です。そのためには、利用者・家族から受けたハラスメントについて、「漏れなく上司や管理職に報告すること」を組織内でルール化することが必要です。

ただし、直属の上司などに報告しても、時として「あなたにも非があるのでは」といった言い方をされることがあります。そこで、「個人の問題としてすり替えたり、当人が報告しづらい風土を作ってはならない(組織として禁止事項とする)」ことを法人トップが組織規定で明確に打ち出さなければなりません。

そのうえで組織横断的な対策チームを作り、直接そこに相談を持ちかけられるしくみを作ります。法人内ネットでの投書で受け付ける形にしてもいいでしょう。一部の大病院などでは、すでに確立されているしくみです。

仮に中小法人で「専門チームを立ち上げる余裕はない」のなら、複数法人による合同実施を考えるべきでしょう。あるいは、保険者が当事者意識をもってしくみづくりを支援することも必要です。(地域の介護人材の損失は、保険者にとっても重要な問題だからです)

被害者に対応させることは二次被害を生む

さて、利用者等によるセクハラに関してよく言われるのが、「それは利用者の寂しさやつらさ、疎外感から生じている。その点を理解したうえでケアのあり方を考えるべき」といった分析です。認知症の人の行為なら、「認知症ケアのあり方を検証する」という流れで解決策が探られることもあります。

確かにそうした対応も必要ではありますが、被害を受けた従事者個人に対応を押し付けたり、技術論的に諭すだけという状況があってはなりません。当の従事者もプロではありますが、すでに精神的ダメージ等を受けている中で、感情との折り合いをつけながら冷静な対応を図ることは、本人にとって厳しい負担となります。その精神的負担は、はっきり言って「二次被害」に通じかねません。

そこで、先にのべた2つめの対応「当事者に解決負担を負わせず、専門チームで集中解決に乗り出す」ことが必要になります。たとえば、(1)従事者側の心のケアを図ったうえで担当部署などを変える(当の利用者と接しない環境を確保する)、(2)利用者へのケアのあり方が解決の糸口となるなら、それは専門チームで課題分析を行ない、利用者本人への対応もそのチームで行なうという具合です。

国としても、介護人材確保のためのイメージアップ戦略などにお金をかけるのなら、「従事者へのハラスメント」にかかる法人への相談員派遣などの事業を展開した方が有効ではないでしょうか。社会保険事業であるなら、従事者個人が「我慢する」だけという状況は、国の責任で阻止しなければなりません。

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