財務省の経営統合案をどう考える?

財務省の財政制度分科会で示された社会保障改革案ですが、介護関連の提案の中に「経営主体の大規模化等を図る」という内容が見られます。「規模が大きいほど経費の効率化余地などが高い」という視点から示されたもので、経営主体の合併・再編をうながす報酬上のインセンティブ策にも踏み込んでいます。

法人規模による報酬上のインセンティブ?

介護サービスの経営主体の大規模化を図るうえで、分科会が提示した介護保険制度にかかる見直し案は、以下の3つです。

第1に、介護報酬の見直しにあたって「一定の規模を有する経営主体」の経営状況を勘案するというものです。これにより、経営主体自体の合併や再編をうながすとしているのですが、もう少し整理してみましょう。

まず、経営主体(法人)の規模(従業員数や売上げなど)が一定以上の事業所・施設をピックアップします。その収支差の平均と全体の収支差の平均を出して比較します。そのうえで、前者と後者の差を介護報酬等の施策に際して勘案するというものです。

単純に考えれば、法人規模が一定以上の事業所・施設に報酬上のインセンティブを上乗せするというイメージになります。「介護報酬等」とはなっていますが、合併・再編への誘導をうながすのなら、やはり報酬上の操作が中心となるでしょう。大幅なプラス改定がなされない限りは、小規模法人の事業所・施設は(報酬ダウンなどの)しわ寄せを受ける可能性が高いわけで、実施されれば特に小規模事業所への影響は計り知れなくなります。

小規模法人が「選択」できる道はどこに?

第2は、「経営主体が一定規模を有すること」や「小規模法人は人事や経理管理の統合・連携事業への参加」を指定・更新の要件とするというものです。後者については、たとえば複数法人が連携して人事や経営管理を担う本部機能を独立させる(そのための新法人を設立させる)というしくみが示されています。

小規模法人としては、先の第1提案で経営がさらに厳しくなるだけでなく、「指定更新を受けられない」という事態も生じることになります。事業継続のためには、上記の「複数法人が連携しての本部機能を設立する」という方法をとるしかありません。しかし、そうした事業統合のノウハウに乏しい法人であれば、「具体的にどうすればいいのか」について途方に暮れてしまうでしょう。

そこで、第3の提案が示されています。これによれば、先の複数法人の統合・連携による本部機能等の設立について、「自治体が目標を定めるなどして進める」としています。注意したいのは、ここに「目標」という一文字が出てくることです。すぐに連想されるのは、保険者機能の強化にかかる評価指標との関係です。つまり、保険者機能にかかるインセンティブに、複数の小規模法人による本部機能の統合推進が加わるというわけです。

経営機能統合のメリットとデメリットを精査

小規模法人の中には「人材の採用や育成を本部機能が担ってくれるならありがたい」と考えるケースもあるでしょう。また、「給付管理業務等の事務機能も本部が一括で担ってくれるなら…」という期待も浮かびがちです。大規模法人による完全な合併・再編に比べれば、小規模法人としての運営の自由度は維持されるという想像が働くからです。

しかし、見落としてはならないことがあります。この提案は、あくまで経営効率化という目的にかかる手段です。経営母体や管理機能の大規模化を図る中で、必ず出てくるのが「採算のとれない事業所の人員整理や撤退・統合がシビアに行なわれる」という可能性です。このことが、地域事情や利用者事情の個別性に合うのかどうかに注意が必要です。

たとえば、人員整理に関しては、分科会資料での事例では「法人間異動も検討」という事業例もあがっています。仮にそれがケアマネであるなら、利用者側から見た場合に「なじみのケアマネが交代する」ことになり、本人の自立意欲にも影響がおよびかねません。

小規模法人の中には、たとえ経営状況が厳しくても「利用者視点に立ったときの個別対応の徹底や独立性を確保する」という強い理念もあるということです。この点をさらに掘り下げれば、そもそも「経営機能の統合や法人の合併・再編」が、国のめざすサービスの公正中立と矛盾しないのかという課題は精査される必要があるでしょう。現場の利用者や従事者に与える影響をつぶさに検証しなければ、地域資源の大きな損実を生みかねません。

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