公正中立に必要なケアマネの地位保全

デイサービスを運営する法人が、法令違反によって指定効力の停止処分を受けました。問題となったのは、同法人で運営する居宅介護支援事業所のケアマネに対し、利用者が同法人のデイを利用したことに関して「業績加算」を支払っていたという事例についてです。

横須賀の違反摘発に垣間見えるメッセージ

今回の違反事例で注目したいのは、法人内の給与体系に「違反」という概念が持ち込まれたことです。今回は、法人内インセンティブにかかる明確な文書が存在したことが決定打となったわけですが、実際には口頭指示のようなグレーゾーンも数多く存在していることも容易に想像できます。

この違反事例を見て感じることは、今後は同様の事例での摘発が増えていくのではないかということです。その背景として、当然ながら今回のケアマネにかかるいくつかの基準改定により、「ケアマネ業務の公正中立」にかか規定が強化されたことがあげられます。

具体的には、利用者に対する以下の説明義務が定められたことです。(1)利用者はケアマネに対して複数のサービス事業所等の紹介を求めることができる。(2)ケアプラン原案に位置づけられたサービス事業所の選定理由についても、利用者はケアマネに説明を求めることができるというものです。これらが遵守されない場合は減算となり、同じ状態が2か月以上続くと報酬算定がなされなくなります。

確かに、今回の違反事例の内容とは、直接的にはつながらない話かもしれません。また、今回の処分通知日は3月29日なので、4月からの基準改定とも関係があるとも断定できません。しかし、公正中立策の強化という点では、先の改定を「厳格に施行していく」という行政側のメッセージが込められていると見ることもできるのではないでしょうか。

依然として残る、公正中立を巡る多様な課題

ケアマネジメントの公正中立に関しては、改定前の特定事業所集中減算に対して、会計検査院から「合理性に欠ける」という指摘がなされた経緯があります。これは、厚労省にも衝撃が大きかったはずで、代替えとなる「合理的な施策」に向けて強い姿勢を打ち出す土台が形成されたと見られます。今後の違反摘発でも、公正中立にかかるものが集中的なターゲットとなる可能性も高いといえます。

もちろん、利用者にかかる不当なサービスの強要など、公正中立を侵すケースについては厳しい対処が必要なのは当然です。今回のように「法人内の給与体系」にまで踏み込むことで、悪意のある法人による水面下での不当な働きかけが減ることも期待されます。

ただし、ケアマネにとっては一つの問題が残ります。今回のようなケースにおいて、ケアマネはあくまで法人に雇用されている立場です。内部告発等の効力が発揮しやすくなるとしても、法人側からの報復的な処遇を受けるといった懸念にさらされるケースは依然として残ります。また、法人が指定効力の停止や取り消しなどの処分を受ければ、ケアマネ自身が職場を失う可能性も出てきます。

やはり、ケアマネ自身の良心と生活が量りにかけられざるを得ない状況の中では、ケアマネに対する一歩踏み込んだ保障・救済策がほどこされる必要があります。そうでなければ、ケアマネジメントの公正中立策もなかなか実のあるものとはなりにくいでしょう。

ケアマネの地位保障こそ合理的施策では?

たとえば、保険者ごとに必ず1つは完全独立型(系列法人等の影響も完全に排除したもの)の居宅介護支援事業所が設けられるよう、国が何らかの財政支援を行なうというのはどうでしょうか。仮に法人所属のケアマネが不当な扱いを受けて離職せざるを得ない場合でも、再就職の「受け皿」となりうるわけです。

また、今回の「業績加算」のような不当なインセンティブが入り込まないよう、ケアマネへの個人給付型の処遇改善「交付金」を設けるという考え方もあります。「ケアマネだけにそこまでの財政負担を行なうわけにいかない」となりがちですが、ケアマネの地位保障を確かなものにすれば、細々とした公正中立策にお金を注ぎこむ必要もなくなるはずです。

さらに、ケアマネの地位保障の強化は、介護人材の「どこを目指してキャリアステップを図るべきか」という道を照らすことにもなります。最終的に「ケアマネになることへの希望と強い安心感」があれば、介護業務への継続的就業や人材参入を図る力にもなるはず。つまり、介護人材確保にかかる予算の効率化も図れるわけです。公正中立策の強化を機に、ケアマネの社会的地位のあり方を根本から見直していく必要があるのではないでしょうか。

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