次期改革議論に当事者目線はあるか

2018年度の介護報酬・基準の施行がスタートしたばかりですが、財務省の財政制度等審議会では、早くも次の改定に向けた問題提起が行われています。居宅介護支援にかかる「利用者負担の導入」や「ケアプランの標準化」などもうたわれています。

ケアプランの利用者負担議論に欠けるもの

たとえば、居宅介護支援にかかる「利用者負担の導入」などは、これまでもたびたび提言されては「デメリットも多い」という意見の中で立ち消えとなっていました。今回の財務省側の提起が次期改定では、どのような影響を与えるのでしょうか。現場としても注意を払っていく必要がありますが、ここではそれ以前の課題を一つ指摘したいと思います。

利用者負担の導入の背景として、財政制度分科会の資料では「(現行で)利用者負担がないことで、利用者側からケアマネ業務の質についてのチェックが働きにくい構造になっている」という仮説が示されています。

仮にこれが正しいかどうかという議論を進めるのであれば、「利用者負担がないからチェックが働きにくい」という仮説について、当事者である利用者がどう考えているのかをきちんと把握しなければなりません。当事者が介護保険やケアマネジメントについて抱いている思いを脇におくだけでは、科学的な仮説検証などもできるはずはないからです。

地域ケア会議での当事者のかかわり方とは?

そのうえで前提として考えたいのは、そもそも介護保険の当事者(介護保険料を負担している財政上の主人公でもある立場)から、きちんと声を吸い上げるシステムができているのかという点です。この課題に関連して取り上げたいのが、これから保険者機能の評価指標として重視されていく地域ケア会議での当事者のかかわり方についてです。

地域ケア会議の本来の目的は、個別事例の検討を通じて地域課題を発見し、その解決に資する政策形成へとつなげることです。しかしながら、10月から生活援助の頻回プランの検証が入ってくることにより、個別のケアプラン点検という要素も今まで以上に強くなる可能性があります。このことは、ケアプラン作成を担うケアマネにも見逃せない課題ですが、「プランは誰のものなのか」を考えた場合、利用者も「欠かせないステークホルダー」として位置づけられなければなりません。

この点からつながっていくのは、地域ケア会議は「一部の専門職や行政の施策担当者」のものではなく、「利用者を含めた介護保険の当事者のものである」ということです。もっと言えば、ケアマネが「プランの根拠を説明したり、参加者からの検証を受ける」というのであれば、その流れを当事者もしっかり見極める機会が必要ということになります。

ケアマネと当事者の共通認識を育むとき

具体的に提案するとすれば、各市区町村単位で、1号被保険者と2号被保険者それぞれの当事者組織をつくること。そして、地域ケア会議に際しては、利用者とともに各当事者組織のメンバーを正式な参加者として位置づけることが必要ではないかということです。

もちろん、個別事例の検討が絡んでくれば、個人情報保護の課題も出てくるでしょう。そのあたりも、当事者組織を法的に位置づけたうえで、個人情報保護法の中に組み入れていけば対応できる話です。関係省庁等が努力すれば、さほど大きな壁にはならないでしょう。

こうして当事者参加の枠が広がれば、自立支援・重度化防止なども「なぜ大切なのか」という啓発・普及がしやすくなるはずです。介護保険がスタートして以降、「利用者教育」という話がたびたび出てきますが、行政や専門職による「上から目線」で進めても浸透させるのは困難です。介護現場でも「主体的な気づき」という話題がよく語られますが、気づきの環境を整えたうえで、当事者が専門職等の考え方に歩み寄っていくというのが、制度の健全なあり方ではないでしょうか。

この点を考えたとき、冒頭の財政制度等審議会の提言に足りないものが見えてくるはずです。要は主人公である当事者を絡めるべき論点にもかかわらず、なぜか「ケアマネだけの問題」になってしまっている──これがもっとも指摘されるべき点ではないでしょうか。

仮に「地域ケア会議に当時者が参加する」ことが定着したとき、当事者も「制度との板挟みになりがちなケアマネのつらさ」を理解・共有する瞬間が訪れるかもしれません。「ケアマネは、彼らなりに自分たちのために頑張ってくれている」という理解が生まれたとき、介護保険は当事者と現場従事者の二人三脚によって進化していくのではないでしょうか。

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