新加算が現場リーダーに与える影響

今回の報酬改定案では、自立支援・重度化防止にかかる加算を中心に、(算定するとすれば)現場に新たなマネジメント導入を要するものが目立ちます。「収支改善のために加算をとる」としても、現場の実情にそぐわない拙速な導入はさまざまな副作用を生みかねません。

新加算取得には新たなマネジメントが必要

まず、通所介護を例にとってみましょう。今回、自立支援・重度化防止にかかる新加算としては、(1)アウトカム評価を導入したADL維持等加算、(2)栄養スクリーニング加算があります。また、外部専門職との連携を要件とするものとして、(3)生活機能向上連携加算(個別機能訓練加算とのダブル算定が可能)、(4)(既存の加算ですが)外部の管理栄養士との連携でも要件クリアとなった栄養改善加算も算定意向を示す事業所も出てくるでしょう。

(1)(2)の場合、一定の指標を用いて利用者の状態にかかる評価測定を行なうことが必要です。これを現場の職員に行なわせる場合、そこには「新たな業務」が発生します。

現場リーダーとしては、新たなシフト調整や測定にともなう指導・教育といったマネジメントが必要となるでしょう。「人手不足で(部下を動かすのは)ままならない」となれば、リーダー自身が評価測定という業務を自ら背負わなければならない状況も生じます。

また、(3)(4)のような外部連携を要件とする加算が増えてくると、今度は現場に「渉外」の機能が必要となります。これも現場の職員に任せるとなれば、スムーズな連携のためのインフラ(情報共有のためのツールや新たな連絡手段など)の整備が必要です。結局はこれもリーダークラスが担うわけで、軌道に乗せるまでは、やはりリーダー自らが「渉外」のマネジメントを手がけなければなりません。

今加算は、現場リーダーに負担が及びやすい

通所介護以外でも、たとえば、施設・居住系における身体拘束廃止未実施減算を避けるには、「定期委員会の開催」や「指針の策定」、「職員への研修」などを新たに実施する必要も出てきます。介護保険施設に設けられた排せつ支援加算も、医師や看護師と連携しながらのスクリーニングの作業が必要となります。

当然、これらも軌道に乗せるまで、管理者や現場リーダーが環境整備のためのマネジメントに力を注ぐ場面が増えてくるでしょう。

確かに、これまでの介護報酬における加算類も、そのたびに一定のマネジメントは必要とされていました。しかし、多くは重度化要件のクリアや体制要件にかかる人員確保を必要とするもので、クリアできるかどうかは法人トップの経営判断によるところが大きかった傾向があります。それが、今回の改定では、どちらかというと「現場リーダー」クラスに負担のしわ寄せが行くものが目立つわけです。

リーダー層の疲弊で介護の質はむしろ低下?

ここで問題になるのは、法人トップが現場の実情をよく見ていない場合、無計画に加算の算定を進めてしまうことです。そうなれば、現場リーダーの業務負担が猛烈に増えてしまいます。そこに一定の手当てや昇給が必要となるのは当然ですが、その「新たなコスト」も試算せずに「加算=増収」という安易な経営観で物事を進めてしまえば、現場リーダーの処遇は一気に悪化する懸念があります。

仮に「新たな手当てや昇給」を設けるとしても、業務負担が一定レベルを超えてしまえば、現場リーダーの労働負荷は過剰となります。特にリーダークラスの人材層が手薄となりがちな中小規模の法人であれば、彼らの燃え尽きや離職のリスクも高まりかねません。

「そんな危険を冒してまで、今回の加算取得には乗り出さないだろう」と思われる人も多いでしょう。しかし、仮に加算の取得率が低くても、首相官邸や財務省の意向が強い「自立支援・重度化防止」策については、厚労省もさらなる拡充を目指そうとするはず。それは、今回一気に広がった生活機能向上連携加算の扱いを見れば、十分に予測できることです。

つまり、3年後には「今回新設された加算を取得する」ことが、収支を維持するうえで必須となる──という報酬構造がますます強まることが考えられるわけです。そうなった場合、どんなことが起こるのでしょうか。

現場リーダーを健全に育成することは、本来、国が目指す「介護の質の向上」を高めるうえで絶対欠かせない土台であるはず。その点を視野に入れないままの偏った「加算による誘導策」は、介護資源を壊滅的な状況に追い込みかねません。こうした危険な現場状況に施策者は一刻も早く気付くべきでしょう。

コメント[17

コメントを見るには...

このページの先頭へ