総合事業等で今後危惧される問題

衆議院予算委員会での厚労相答弁で、昨年4月から完全実施された介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)に関する以下の状況が明らかになりました。いわゆる従前相当サービス(移行前の介護予防訪問・通所介護)の指定更新をしない事業所がある自治体が250にのぼるというものです。

要支援認定者へのサービスは確保されるか

予防訪問・通所介護については、要介護認定期間が最大で12か月ある利用者に対して、2017年度中は経過措置的に予防給付として提供されているケースがあります。しかし、18年度にはそうした経過措置も終了しているため、予防訪問・通所介護は総合事業への完全移行となり、今回の介護報酬案でも予防給付からはすべて削除されています。

18年度からの従前相当サービスについて、国は10月に新単価を試行するとしています(それまでは現行の単価のまま)。ただし、今回のような従前相当サービスの撤退が際立った場合、何かしらの緊急対策(介護報酬がプラス改定となった分を考慮したうえでの引き上げや前倒し策など)が出てくる可能性もあります。とはいえ、「事業継続は厳しい」という事業者判断をくつがえすのは、なかなか容易なことではないでしょう。

問題は、総合事業のうち、訪問・通所ともに「従前相当サービス」が7割前後を占めていることです(16年4月段階)。現行で比率はやや下がっているでしょうが、それでも「指定更新を受けない」事業所が相当数出てくれば、要支援認定を受けた人のサービス利用機会は大きく損なわれる恐れがあります。

残った予防給付も一部で基本報酬引き下げ

確かに、予防給付で受けられるサービスを使うという傾向が高まることも考えられるでしょう。しかし、予防給付は一部で基本報酬が引き上げとなったものの、予防看護、予防訪問・通所リハビリなど比較的利用率の高いサービスの基本報酬は引き下げとなりました。収益悪化を防ぐうえでは加算取得がポイントですが、それでも「予防給付から撤退する」という事業者が出てくる可能性もあります。

このままでは、要支援認定者は「給付サービスが使えなくなる」という状況が目前に迫ることになります。うがった見方をすれば、国もある程度は見込んでいることかもしれません。これにより、軽度者を介護保険から外すという流れが結果的に定着するわけであり、財務省などの思惑と一致するからです。

しかし、利用者や自治体はそうは行きません。地域によっては、基準緩和されたサービスなどを担う母体や人材も不足しているケースが見られます。予防給付サービスも従前相当サービスも十分に使えず、住民主体等の事業も不足するとなれば、要支援者の活動量が低下するのは必然です。国が目指す自立支援・重度化防止とは真逆の状況が生じるわけです。

一方、自治体には、制度改正によって「地域の高齢者の自立支援・重度化防止」に向けた取組みの義務化やインセンティブが導入されました。要支援者に対して「頼みの綱」となるはずの総合事業が弱体化することは、自治体側の責任問題にもなりかねません。

消費被害や認知症のBPSD悪化などへの懸念

ここで、(以前から指摘していることですが)さまざまな問題の発生が危惧されます。

たとえば、いくつかの地域で高齢者を集め、健康体操などの指導を行ないつつ高額な健康器具などを売りつけるというマルチ商法まがいのケースなどを聞くことがあります。仮に、自治体側が「資源不足」に焦るあまり、悪質な事業者をよく精査しないで総合事業の指定や委託をしてしまえば、高齢者への消費被害などを助長する土壌も生じることになります。

また、要支援者にも一定程度認知症の人がいます。十分な知識を有する人材が枯渇する地域で、無理に総合事業のすそ野を広げようとすれば、こうした認知症の人への対応にかかる不適切事例が生じかねません。それが本人のBPSDの悪化につながったとき、仮に要介護となって介護給付サービスにつながったとしても、現場の初期対応への負担が増すことになります。つまり、総合事業側の問題が、介護給付側へも波及することになるわけです。

厚労省は、総合事業にかかる本格的な調査を実施するとしています。その際、「資源が整っているかどうか」という数字上だけのデータではなく、水面下で生じつつある課題をきちんとくみ上げるという手法が必要です。

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