「患者の意思決定」は叶えられるか?

2018年度のダブル改定を頭に入れながら、今回も診療報酬の改定について掘り下げます。今改定のポイントの一つは、主に看取りの段階における「患者や家族の意思決定」に重点が置かれていることです。具体的に、どんな部分に反映されているのか。そこにケアマネ等がどうかかわってくるのかを考えます。

訪問診療の在宅ターミナルケア加算に新要件

ここでは、訪問診療にかかる在宅のターミナルケアを取り上げます。訪問診療では、在宅患者訪問診療料に在宅ターミナルケア加算が設けられています。今回の改定では、算定要件に以下のような一文が加えられました。

それは、ターミナルケアの実施について「厚生労働省『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』(以下、プロセス・ガイドライン)等の内容をふまえ、患者本人と話し合いを行ない、患者本人・家族の意思決定を基本に、他の関係者との連携のうえ対応すること」というものです。 ちなみに、この一文については、訪問看護のターミナルケア療養費の算定においても、新たな要件として加えられています。

では、具体的にどのようにして、患者と話し合い、本人・家族の意思決定に沿ったケアを行なっていくのでしょうか。そこで、先のプロセス・ガイドライン(「等」とはなっていますが、これがベースとなっていくのは間違いありません)の解説版を見てみましょう。何度か改定されていて、最新版は18年1月17日の検討会に提示されています。

最新版のガイドラインに示された考え方

この最新版の基本的な考え方では、患者・家族を支える体制として、医師、看護師、SWなどによるチームが示されています。改定版では、ここに「ケアマネ」が加わりました。そのうえで、チームの責務に追記がなされています。それは、人生の最終段階における医療およびケアの提供にあたり、「患者の意思を尊重する」うえでの以下の2つの考え方です。

1つは、「患者のそれまでの人生観や価値観、どのような生き方を望むかを含めて、できる限り把握する」こと。もう1つは、「患者の意思は変化しうるものであることや、患者が自らの意思を伝えられない状態になる可能性も高いことから、患者が信頼できる家族等を含めて話し合いが繰り返し行われることが重要」というものです。つまり、意向把握に必要な生活歴等のアセスメント共有や、随時の変化を見込んだ「関係者による共有情報」の更新が必要であることが示されているわけです。

18年度の介護報酬改定では、居宅介護支援において末期がん患者を対象としたターミナルケアマネジメント加算が設けられました。要件には、死亡日前の一定訪問と利用者の心身の状況把握、その情報を医師や事業者に提供することなどが位置づけられています。主治医が訪問診療医等である場合は、先の診療報酬における在宅ターミナルケア加算の算定と対応する部分になると思われます。

医師・ケアマネ連携は追いつけるのか?

ここで考えたいのは、先のガイドラインに沿えば、医師や看護師との共有情報の中に、「利用者の人生観や価値観」にかかわる内容が入ってくること。さらに、患者の意思決定については、「繰り返しの話し合い」によって更新される可能性があることです。

ここでは、患者の心身の状況にかかわる情報のみならず、意思決定にかかる情報について、医療側がどこまできちんと受け止める意識を持っているかが重要になります。と同時に、「繰り返しの話し合い」に医師がどこまでかかわってくれるか、ケアマネ側の負担が過大にならないのかという点も考慮が必要です。

つまり、ターミナル期における患者の意思決定については、ただ「ガイドラインに沿って行なうべし」という要件をつけるだけで解決できない課題がたくさんあるわけです。せっかくのガイドラインを活かすなら、そこで生じる一つひとつの「業務」に対して、それが現行の介護報酬・診療報酬できちんと評価できるかを精査することが必要でしょう。

そのうえで、ケアマネや患者本人、家族が「出会えて本当に良かった」と思える医師を一人でも増やしていくことが重要です。何よりも、現代の医療教育の中で、いかに深く人間を考察できるかという方向での人材育成にもっと力が注がれるべきでしょう。「患者の意思決定」というビジョンがいかに重要でも、そこに現場が追い付いていけるのかという点が見落とされては意味がありません。

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