今改定は「大きな流れ」の中で精査を

2018年度の介護報酬改定案は、新加算・拡充加算も数多く見られる中、「事業所として算定するか否か」という判断に悩む場面も多くなりそうです。大切なのは、報酬内容だけを切り取って考えるのではなく、「3年後」までに事業環境がどう変わっていくかという点をしっかりと読み込んでいくことです。

通所介護に導入されたADL維持等加算

一例として、通所介護に新たに設けられた「ADL維持等加算」を取り上げます。自立支援・重度化防止にかかるアウトカム評価を用いた加算としては、2006年に予防通所介護・予防通所リハビリで導入された事業所評価加算などがあります。しかし、要介護者が対象で、利用者の自立支援・重度化防止を明確に評価した加算としては初めてのものです。

さて、算定要件ですが、事業所による「クリームスキミング(改善が見込める利用者を選別すること)」を防ぐために一定重度化要件を設けました。そのうえで、Barthel Indexという10項目の指標を用いて、利用者のADL改善を5点刻みで評価していくことが求められています。これを(重度化要件等をクリアした)利用者の9割以上に行なっていくわけですから、かなり手間のいる作業となります。

これらの要件を満たして、算定される単価は最大で月6単位(この単価の場合は、評価修了後にも測定・報告が必要です)。介護現場の慢性的な人材不足状況を考えると、決して割のいい加算ではなさそうです。恐らく、「この加算は自事業所には関係ない。通所介護としては、個別機能訓練加算や生活機能向上連携加算の取得に集中した方がいい」と考えている事業所も多いのではないでしょうか。

保険者の自立支援インセンティブとの関係

しかし、「そうとも言っていられないのではないか」という点を指摘したいと思います。注意すべきは、2017年の法改正で「保険者に対して(介護保険事業計画で)高齢者の自立支援・重度化防止にかかる目標設定」が義務づけられたことです。そして、3年後の次期計画策定までに目標達成の評価が行われ、そこで新設された交付金を活用してのインセンティブが付与されることになります。

当面、ディスインセンティブは導入されないとはいえ、保険者にとっては「評価されること」自体が大きなプレッシャーとなります。そのため、ケアプラン点検を通じて、「自立支援に資するサービス内容になっているかどうか」が細かく精査される可能性もあります。保険者の目標達成に向けたプレッシャーが、今度がケアマネ側に降りてくるわけです。

そこで何が起こるかといえば、「利用者のADL改善に効果のあるサービス事業者を選択する」ことを暗に強要されることです。もちろん、事業所選択は利用者の権利であり、ケアマネもその意向を尊重しながらプラン上の事業者を組み込むはず。しかし、保険者のプレッシャーが強くなると、暗黙のローカルルールが幅をきかせる恐れも出てきます。

小規模な居宅介護事業所などは、「保険者による指導強化などが増えれば大きな負担」となりかません。そこで、(意に反するとは思っていても)「アウトカム評価を導入している事業所なら、保険者のチェックも通りやすいのでは」という意識が働く可能性もあります。

国が今加算のデータをどう扱ってくるか?

もちろん、ケアマネジメントの公正中立を侵しかねない話なので、表立ってそうした動きが出るのは考えにくいかもしれません。しかし、もう少しあり得そうな話をすると、自立支援・重度化防止の目標達成度が高かった自治体事例を国がまとめる中で、「通所介護におけるADL改善等加算の評価状況」がデータで取り上げられる可能性があることです。

これが3年後の改定時の介護給付費分科会の議論で取り上げられたりすれば、加算の引き上げ(極端な話、今回の新加算取得の有無で基本報酬の区分が変わるなど)や対象サービスの拡大の方向が想定されます。

決して根拠のない話ではありません。今加算で使われるBarthel Indexは、通所リハビリの6割がADL指標として利用しています(通所介護での使用は1割にとどまります)。つまり、医療法人が介護保険のリハビリで発言力を強めるという傾向の中、通所介護と指標を合わせることは、自立支援・重度化防止の中心施策としやすい流れにあるわけです。

「自分たちには関係ない」と思っているしくみが、いつしか制度の主流になってしまうことは多々あるものです。今改定の中身一つひとつに注意を払っていくことが必要です。

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