「自立支援強化」と「利用者の尊厳」

自立支援・重度化防止が主軸の18年度報酬・基準改定案。当事者の自立が進むこと自体は望ましいことですが、忘れてならないのは、あくまで「自立支援」は利用者の「尊厳保持」の手段ということです。ADL等の「自立」だけが極端に目的化してしまうと、時として「本人の尊厳保持」が置き去りになりかねません。

訪問介護の改定で道筋がひかれた自立支援策

今回の報酬改定案において、「自立支援・重度化防止」にかかるポイントはいくつもあげられます。主だったものとしては、リハビリ系サービスのリハビリ・マネジメント加算における医師の関与の強化、生活機能向上連携加算の対象サービス拡大、通所介護におけるアウトカム評価の導入などが見られます。

そうした中で取り上げたいのは、「訪問介護」にかかる自立支援・重度化防止の促進策。具体的には、生活援助の人員緩和・基本報酬引き下げと同時に示された「自立生活支援のための見守り的援助の明確化」です。

言うまでもなく、これは老計10号通知「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の「身体介護1-6」を、より明確に示すことです。これにより、現行の生活援助の中から、「利用者のできる部分は自分でやってもらいつつ、ヘルパーが(見守り等を行ないながら)一緒に行なう」ことが可能なものを抽出すれば、身体介護へと切り替えやすくなる可能性があります。生活援助の新たな人員基準(新研修修了者)への対応が追い付かないケースも想定される中、従来の介護専門職を生活援助に充てざるを得ない事業者は、積極的にかかわることになるかもしれません。

現場に強いジレンマが生じてしまう懸念

ただし、実際にどこまで上記のような流れができるのかは大いに疑問が残ります。仮に上記のような「切り替え」などを行なうとすれば、サ担会議などを通じ、利用者の同意を得ながら、ケアプラン上でも課題分析・目標設定から始まる流れを明確に示すことが必要です。問題は、「利用者の意向」と「事業者の思惑」が対立する状況が生じることです。

たとえば、利用者から「自分でやるなんて面倒だし生活援助でお願いしたい」という訴えがあったとします。ケアマネや訪問介護事業者としては、「自立支援」の観点から利用者を説得することも考えるでしょうが、事業者の思惑も紛れている中では、あまりに無理強いすると「不当な働きかけ」という基準違反にふれかねないという空気が生じます。

結局、ケアマネと事業者に「自立支援に向けたケアマネジメントを実現しよう」という理想があっても、それが利用者の意向と対立し、わずかでも「事業者側の思惑」が紛れこむことで一種の自主規制が生まれるわけです。これでは、国が進めようとする自立支援も、現場にジレンマを生むだけとなりかねません。

自尊心を取り戻すことが自立支援の始まり

ここで何が必要なのかと言えば、当然ながら、早期から「自立支援」に向けた利用者側の理解を得ることです。ただし、自立支援の重要性という理屈だけを展開しても、それだけでは利用者の納得を得るのは困難です。

利用者が介護保険を利用する背景に一つに、現状での「生活のしづらさ」を解消したいという動機があります。もっとも、「生活のしづらさ」の背景をさらに探れば、それは地域や親族からの孤立であったり、自己の承認欲求が満たされないといった「本人の尊厳」にかかわる課題が存在している場合があります。

この尊厳の保持・確保に着目せずに、ただ「自立支援の重要性」を説いても、当事者の心には響きません。専門職が当事者に発するNGワードとして、「このままでは歩けなくなりますよ」といった発言が指摘されることがあります。本人にとっては「あなたの心がけが悪い」と言われているに等しく、これほど尊厳を傷つけられる言葉はありません。

この点を考えたとき、ケアマネとしては「本人が自尊心を失いかけているとすれば、それは何が原因なのか」という点を今まで以上に探ることが必要です。昨年8月の介護給付費分科会での老施協のプレゼンでは、心身機能の向上よりも「活動」「参加」の改善によるQOLの向上に焦点を当てた「伴走型介護」の指標提案がなされていました。つまり、本人にとっての「自己実現」の到達点はどこにあるのかを、本人に寄り添い(伴走)し続ける中で探っていく思考のあり方が、ケアマネジメントではますます重要になるわけです。

2018年度改定の施行を前に、当事者の納得を得られる「自立支援の道筋」とはいうどういうものかについて、事業所や地域の職能団体の中でいろいろ議論してみたいものです。

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