管理コスト膨張でプラス改定帳消し?

1月26日の介護給付費分科会で、2018年度の介護報酬改定案が提示されました。先に示された基準改定案とあわせ、業務のあり方を大きく変える見直しとなっています。実際の改定に向け、現場として注意すべきことは何でしょうか。少しずつ掘り下げていきます。

基準・加算の見直しで管理者業務が急拡大?

報酬改定率が2期ぶりのプラスとなり、基本報酬もわずかながら引き上げとなっているサービスも見られます。とはいえ、今改定でも、自立支援や重度者対応など重点化部分の加算取得を目指さない限り、特に中小規模の事業所運営などは厳しさを免れません。

さて、運営基準のハードルが上がり、新たな加算取得のための要件をクリアする必要が生じれば、そこには現場の体制整備や見直しを図る必要も出てきます。たとえば、居宅介護支援事業所の特定事業所加算では、「他の法人が運営する居宅介護支援事業所と共同で事例検討会、研修会等を実施していること」という要件が加わりました。具体的な実施頻度などはこれから出される解釈基準などに示されるでしょうが、管理者による渉外業務などが増えていくのは確実でしょう。

また、入院時情報連携加算や退院退所加算での、情報のやり取りの方法・様式も変わってきます。主治医との平時の連携に際して、ケアマネ自身のモニタリング情報のみならず、訪問介護事業者などとの情報連携も必要となります。このあたりの日常業務にかかるしくみをどのように整えていくのか。ここでも管理者による業務拡大が見込まれます。

マニュアル見直しや内部研修上乗せの手間も

さらに、新たな基準や加算要件をクリアするには、現場従事者に対して「仕事の仕方が一部変わる」ことへの周知や、場合によっては新たな内部研修を上乗せする必要も生じます。居宅支援側の加算ではありませんが、生活機能向上連携加算の適用サービスが広がることで、「連携を意識したうえでのサービス担当者会議や、ケアマネ側のモニタリングのあり方」も変わってくる可能性があります。

また、利用者(もしくは家族)にしてみれば、自立支援や重度化防止にかかる加算が増えてくることで、「それにどのような意味があるのか、本人の意思に沿ったケアとなるのか」という点について、(それぞれのサービス担当者のみならず)ケアマネ側に詳細な説明を求める機会も増えることが予想されます。

いずれにしても、新たな基準・加算を日常業務の中で軌道に乗せるうえで、居宅介護支援やその他のサービス事業所の管理者の業務負担がどこまで広がっていくかはなかなか見通せません。基本報酬が多少引き上げられても、管理者への手当てや必要な体制整備のコストで消えてしまうとなれば、事業所運営の厳しさはむしろ拡大します。同時に、管理者の過重労働(さらには、燃え尽きによる離職)も大きな問題になることが懸念されます。

一事業所・一法人では対応しきれない可能性

こうした状況を放置すれば、現場従事者としてはマニュアル修得や内部研修の機会が際限なく増えていき、身近な上司が疲弊しているのを見ることで「キャリアを積む」ことへの意欲も減退しかねません。今必要なことは、地域の事業者・職能同士が危機感をもって今まで以上に密接な「つながり」を築くことです。そのうえで、業務遂行上の知恵や知識をお互いで持ち寄って、地域全体でノウハウを築くことが求められます。いわば、一組織・一法人内にとどまらない、地域ぐるみでのナレッジマネジメントを構築するわけです。

こうした流れを後押しする存在が、本来であれば保険者となります。都道府県としても、地域医療介護総合確保基金などをそこで積極的に活用する機会となるでしょう。国としても、補正予算などを組むことで、現場の運営マネジメントを緊急的に支援する助成金などを今から準備しておくことが求められます。

自立支援の推進にしても、在宅看取りの強化やサービスの適正化にしても、何らかの改革を進めるうえで、現場が動くまでには相応のコストと時間がかかることが必然です。その点を軽く見てしまえば、国が目指そうとする地域包括ケアシステムなども根底から揺らぎかねません。「人」を意識したマネジメントについて少しでも見識があるなら、「2期ぶりのプラス改定で責任は果たした、基準を厳しくし加算をつければ現場は動く」といった発想では済まないことを認識すべきでしょう。

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