サービス事業所「撤退加速」への備え 

東京商工リサーチが公表したレポートによれば、2017年の老人福祉・介護事業の倒産件数が、介護保険スタートの2000年以降で最多を記録したことがわかりました。介護サービス資源が縮小していく兆候なのでしょうか。仮にそうした時代が来ているとして、現場のケアマネが備えるべきことは何でしょうか。

倒産件数の増加と相関する事業所増加の停滞

倒産件数自体は111件ですが、「事業運営を継続することが困難」という状況においては「氷山の一角」に過ぎません。債務者の決定的な経済的な破たんを「倒産」とすれば、そこに至る前に「撤退」したり、大手事業所との「合併」、グループ内での「統合」といった組織再編を選択するケースも水面下で広がっていることは容易に想像できるでしょう。

倒産件数が目立ち始めたのは、2015年からで、2015~2016年にかけては4割以上の伸びとなっています。また、同時期の介護事業所・施設数の動向を見ると、一定の相関関係が見られます。たとえば、利用者数の多い訪問介護、通所介護(地域密着型含む)、居宅介護支援、特養ホームの推移を取り上げてみましょう。

2014~2015年度にかけての事業所・施設数の伸び率は、それぞれ2.7%、4.2%、3.3%、4.2%を記録しています。これが、2015~2016年度(2016年度は3月末で計算)になると、0.5%、1.6%、1.4%、2.0%と半分以下まで減速します。事業所数自体はまだ伸びているとはいえ、2015年度改定以降の資源拡大は完全に停滞期に入ったことを意味します。2017年度の状況によっては、マイナスに転じる可能性もうかがえます。

サービス資源の偏在が生むケアマネへの負担

倒産という「氷山の一角」から推定される「水面下」での事業所減が本格的に始まったとして、利用者密度の低い地域ではサービス資源が十分に確保できない状況が生じている可能性があります。実際、現場のケアマネからは、「市町村の枠を超えたサービスの“越境利用”が増えている」という話も聞かれます。

こうしたサービス資源の偏在化が進むとして、ケアマネにとっては、現在担当している利用者へのさまざまな影響を想定しなければなりません。たとえば、「今まで利用していた事業所が突然、撤退・閉鎖することになった」、あるいは「ショートステイ利用の意向が生じたが、近隣に該当資源がない」というケース。

この場合、ケアマネとしては、担当区域の内外も含めて「事業所・施設探し」に奔走することになります。また、利用者にとって「なじんでいた事業所・施設が使えなくなる」「在住エリアを超えての利用を余儀なくされる」となれば、一時的でも生活意欲や活動意欲の減退が懸念されます。その結果、ケアマネジメント上の負担も大きくなりかねません。

「ただならぬ事態」という認識共有が必要に

もちろん、居宅介護支援事業所としては、上記のようなケースを想定したうえで(過去の事例経験も含めて)一定の対処法は立てていると思われます。問題は、地域のサービス資源の縮小が今後加速するとして、今までの経験値ではカバーしきれなくなることです。

そこで、改めて以下のような備えを万全にすることが求められます。(1)地域の事業所・施設の定員空き情報(もしくは、縮小や撤退の情報がないか)を定期的に確認し、いざという時のサービスの切り替えに備えておく。(2)利用者がブランクなくサービス継続ができるよう、サービス切り替えを想定した手続き・対応のマニュアルを再整備する。(3)サービス切り替え時の利用者の意欲低下などを防ぐべく、非常時タイミングでのモニタリングのあり方なども再確認しておくという具合です。

ただし、さらにサービス資源の縮小スピードが速まれば、ケアマネ側だけの努力で対処することは困難でしょう。国としては、2021年度改定に向けて、「サービス縮小にともなうケアマネの負担増」を織り込んだ報酬体系を検討することが必要です。また、保険者としては、地域資源にかかる実態把握の精度を上げ、介護保険事業計画において「サービス縮小時代」をにらんだ「非常時対応計画」にまで踏み込んだ対応が必須となるでしょう。

いずれにせよ、(2018年度改定にもよりますが)現場にとっての「ただならぬ事態」が近づいているという認識を、国、保険者、職能団体の間でしっかり共有する必要があります。

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