介護医療院は、老後を明るくできるか

  • コラム
  • 宮川明子
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1993年に医療法が改正されてからできた「療養型病床群」は、現場からは受け入れがたい環境でした。しかし、今の介護・医療の体制ではどうしても必要な施設であり、移行措置を定めてもなくすことはできず移行措置期間は伸びています。このような環境は、介護医療院で解消されるのでしょうか。

一般に知られていない介護サービスの現状

介護医療院は療養型病床群とあまり変わらず、人生の最後を過ごすのに相応しい環境とは思えません。ベッド周りにプライベートなスペースがないのは、今時やはり考えられないでしょう。

苦しいから、あるいは家族や近所の人たちに迷惑をかけるからという理由で、「安楽死を合法にして欲しい」という人たちが増えています。療養病床に入院した後、認知症で人に迷惑をかけたり痛い思いをしたりせずに、人としての尊厳を守りながら最後の日を迎えることができる施設にならなければ、老いに対して恐れることしか思い浮かびません。

老人が悲惨な最期を迎える姿を見ていると、「自分たちの将来は明るくない」と感じてしまいます。その現状を目の当たりにする方が増えている日本は、元気のない国になりつつあるのではないでしょうか。現在は「元気な状態」からいきなり「安楽死」の話になってしまうくらい、高齢者へのサービスが知られていないのです。

ペイン・クリニックが発達してきて、モルヒネなどの鎮痛剤を使用すればほとんどの死苦が解消されるともいわれています。しかしこのことも、一般には知られていません。夢のような話ですが、亡くなる際にきれいな個室で痛い思いはほとんどせず、好きなことをしながら息を引き取れる施設があるなら、ここまで加齢を怖がらずにいられるでしょう。苦しまずに余生を楽しんで最期を迎えることができるなら、もっと人生を明るく考えることができると思います。

介護度が上がると施設も移る

家族など自分に近い人が、ちゃんと痛み・苦しみを緩和してもらって苦しまずに亡くなっていく。そうした姿を見たことがない方々は、恐らく介護医療を信用していません。

マスコミが報道するニュースは、介護疲れによる尊属殺人や孤独死などばかりが目に付きます。しかもその容態は、介護保険を受けていれば防げたものがほとんどではないでしょうか。介護保険で過酷な家族介護を防ぐこともできるということも、きちんと伝えてほしいものです。

介護保険では、症状に合わせて細かいサービスが定められています。しかし人間の身体は、そんなに簡単に数値で表すことはできません。症状の安定している人がいきなり亡くなるわけではなく、転んで骨折をしてしまい介護度が上がってしまう。さらに3か月経ってから施設を退所すると、退院後の行き先が見つからない。こんな環境しかなければ、年をとることは苦しみと恐怖だけになってしまいます。

介護度が上がって転院する場合、中には「知らない変な施設へ行かされる」などと思っている方もいらっしゃいます。設備は新施設の方が良いものの、現在の施設には友達がいるなど、どこにも行きたくないと思っている方は少なくありません。そうした場合に「介護度が上がったら別の場所へ行ってください」というのは、かなり酷ではないでしょうか。入院そのものに対してあまり大きく受け止めていなくても、「別の分からない場所に連れて行かれる」という気持ちはかなり強いのです。

介護度が上がって、医療を中心とする生活になったら介護医療院へ入る。そうではなく、施設そのものを細分化せず、同じレベルのサービスが受けられるようにした方が、老後の安心を信じるために必要ではないでしょうか。人間の身体という数値で表しにくい部分ですから、施設の役割を細分化してしまうのは、あまり良い制度とは思えません。

各個人で状態が変化しても居場所をキープしながら、介護度だけでなく一人の人の人生を縦方向に対応していく。そんな介護サービスを検討していきたいものです。

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