18年度予算案の真テーマとは何か?

年の瀬の12月22日、厚労省の2018年度当初予算案が公表されました。社会保障関係費は、対前年度で4,590億円増(1.5%増)と5,000億円以下に圧縮されています。そうした中、高齢者介護の分野をつかさどる老健局分の予算内容はどうなっているのかを掘り下げます。

新規予算で突出したインセンティブ交付金

今回の予算案に先がけて、2017年8月に厚労省から概算要求が示されています。概算要求はいわば各省庁による予算の見積もりであり、その時々の政府が定める概算要求基準に基づいて行われます。こうして作成された概算要求は、財務省によって精査されたうえで、本予算案の形で定められる流れとなっています。

この流れを頭に入れた場合、概算要求と本予算案を比較すると、財務省が厚労省予算をどのような方向に引っ張っていきたいのかが見えてきます。政府全体が財政上のプライマリーバランス(財政上の収支バランス)を重点課題としている点を考えれば、財務省の考え方が、その時々の政府方針をおおむね反映していると言っていいでしょう。

さて、老健局関連の概算要求と本予算を比較して、まず目立つのは「保険者機能の強化」にかかる予算が大きく伸びている点です。言うまでもなく、本予算で「保険者機能強化推進交付金」(200億円)が創設されたことによるものです。単体項目としての予算としては極めて規模が大きく、たとえば、地域医療介護総合確保基金における「介護従事者の確保に関する事業」における公費90億円と比較しても2倍以上の規模となっています。

生産性向上や科学的介護関連は意外に抑制?

上記交付金は2017年法改正で設定されたもので、自治体インセンティブについて調整交付金の活用は行わない方針もあり、相応の予算額の積み上げが必要になったと思われます。それでも、他の老健局関連予算と比較して「突出」という表現が当てはまるでしょう。

ちなみに、他の新規予算で規模を大きいものをあげると、(1)「介護事業所における生産性向上推進事業」の3億2,000万円、(2)自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現にかかる「科学的介護データ提供用データベース構築等事業」の2億7,000万円があげられます。

ただし、当初の概算要求では、(1)は9億円、(2)は4億6,000万円が計上されていました。特に(1)については、概算要求基準では「推進枠」となっており、厚労省としてもかなりの予算規模を目指していた部分ではないかと思われます。それが、本予算では大きく削減されることになりました。特に「自立支援・重度化防止」に関しては、保険者や都道府県に対するインセンティブの付与の方に、大きな比重をかけたのが今予算の特徴といえます。

この保険者や都道府県へと配分される新規の予算枠では、「高齢者向け集合住宅関連事業所指導強化推進事業」があります。内容は、「(サ高住など)集合住宅等に入居する高齢者にサービス提供する事業所への重点的な実地指導が可能となるよう、都道府県等における指導体制の強化を図るための支援を行なう」というものです。計上額は8,000万円なので予算規模的には大きくないのですが、当初の概算要求と同じ金額である点で、財務省側も費用対効果を認めた項目といえます。

強い「掛け声」の一方で「動揺」も見え隠れ

こうして見ると、介護事業所の生産性向上や科学的介護の実現に向けたデータベース構築に関して、政府としては「(推進枠として打ち出したことも含めて)力を入れている」という姿勢は見せつつも、費用対効果という点で「強い確信」までには至っていないのではないかという憶測が浮かんできます。

そもそも介護現場では、生産性向上にしても科学的介護の実現にしても、調査研究やデータベースのシステム開発にお金を注ぎこむことが、本当に「費用対効果」に結びつくのかは懐疑的な見方もあるでしょう。いみじくも財務省が同じ感覚を抱いているとすれば、今予算の本テーマは「保険者や都道府県の権限強化によって、介護現場への締め付けを強める」ことの方にあるのかもしれません。

確かに不適切な介護事業運営の排除は、利用者の人権や安全・安心の確保のためには欠かせません。しかし、行政権限が肥大化すれば、そこには必ず負の側面も生じます。それを防ぐための「サーモスタット」的なしくみの予算確保も同時に必要となるでしょう。そうでないと、たとえば自治体のローカルルール問題等がさらに拡大しかねません。

政権内でも評価が十分に定まっていない施策に対し、自治体権限の強化でしのぐという流れは、現場の利用者や従事者へのひずみとなって現れます。今予算案が、政府内の「つじつま合わせ」の結果となっていないかどうか、国会でもきちんと審議したいものです。

コメント[9

コメントを見るには...

このページの先頭へ