環境変化に対応できる処遇改善策を

2018年度の介護報酬改定の方向性では、介護職員処遇改善加算について「加算IV・Vの(経過措置を定めたうえでの)廃止」と「上位区分取得への働きかけ」が提案されました。加算率の微調整はあるかもしれませんが、新たな拡充策は見送りとなる公算が高いようです。

職員の業務負担増は織り込まれているか?

今さらながらの話ですが、処遇改善加算は、その事業所・施設の取得単位数に加算率を乗じることで算出されます。つまり、基本報酬および各種加算に変更が生じれば、おのずと処遇改善加算の取得単位数も変わってきます。

注意したいのは、ここにはもう一つの変動要素があることです。それは、各種加算等を算定する際の要件によって、職員にかかる業務負担が変わる可能性があることです。たとえば、重度者要件が問われる加算を取得する場合、「心身状況のリスクが高い利用者」が増えることになります。仮に、基本報酬が下がり、その分を重度者要件のクリアによる加算でカバーするとなれば、職員の「業務負担あたりの処遇」は低下する可能性も出てきます。

次の報酬改定では、自立支援の強化にかかる加算などを拡充することが想定されています。過去のニュース解説でも述べたとおり、利用者の自立支援を強化するうえでは、本人の主体性を引き出すことが重要なポイントとなります。そのあたりが不十分なまま、機能向上に向けた職員側の焦りだけが高まると、利用者との関係性が悪化して、本人の意欲やQOLの低下につながる懸念も浮上します。

となれば、これまで以上に、利用者と密に向き合う中でのコミュニケーション機会も求められます。ここにも、職員の業務密度を増やす要素が潜んでいることになります。

IV・Vの廃止はやはり慎重を期すべきでは

こうした点を考えれば、基本報酬や各種加算の構造にメスを入れる場合、処遇改善加算の加算率も同時に見直さないと、処遇改善効果がマイナスに転じかねません。全体の報酬構造と処遇改善加算は、常に連動させることが施策上では欠かせない作業となるわけです。

ところが、今回の報酬改定の方向性では、処遇改善加算の加算率の拡充は行わない流れとなっています。見直しのポイントは、加算IV・Vの廃止のみです。IV・Vの廃止については、その取得率の低さが根拠となっていますが、報酬全体のしくみが大きく変わる中ではIV・Vが一つの「受け皿」機能を果たすことも考えられます。特に、事業所規模などによって各種加算算定に格差が生じつつある中では、この「受け皿」を廃止することには、もっと慎重な議論が必要ではないでしょうか。

このように、現場の業務環境や従事者の働き方の方向性が変わっていくという点に目を配らなければ、介護人材の処遇改善も実利に乏しいものになってしまいます。処遇改善の範囲についても同様です。多職種連携が重要課題となってくる中では、職種間の処遇改善策の差異は、チーム内連携をギクシャクさせる懸念をはらみます。つまり、多職種チーム全体での「納得できる処遇の底上げ」が図られることが、地域包括ケアのあり方にも大きな影響を与えることになるわけです。

小出しの処遇改善策で費用対効果は望めるか

以上の点を考えたとき、やはり基本報酬の引き上げをベースとし、新設する各種加算による「業務の手間」を織り込んだうえで、処遇改善の加算率も引き上げを図ることが必要ではないでしょうか。加算適用の範囲については、多職種全体への適用が難しいとしても、少なくとも介護職のキャリアアップの先にあり、地域連携の要となるケースの多いケアマネや相談員には加算の適用が望まれます。

もちろん、財務省などからはNGが出される可能性は大きいでしょう。しかし、「介護人材の確保」が思うように進まない中、小出しの施策を展開するのなら、「基本報酬の引き上げ」等を明言した方が、業界に与えるプラスイメージも含めて費用対効果は大きいのではないでしょうか。仮に、それが消費税10%への引き上げ時であっても、先行きの増収が明確であれば、事業所・施設としても人材確保・育成の先行投資をしやすくなるはずです。

こうした視点を織り込みつつ、次回は「新しい経済パッケージ」でかかげられた「介護人材の処遇改善策」について掘り下げます。

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