リハビリしたら退所?特別養護老人ホームへの入所基準について

  • コラム
  • 宮川明子
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特別養護老人ホームへの入所が要介護3以上となりましたが、これは介護保険サービスの中でどのような位置づけになったでしょうか。恐らく「要介護1・2・3の高齢者にどのようなサービスを提供できるか」が難しくなったと感じています。つまり入所中に介護度が低くなると、退所となってしまう可能性が出てきたのです。このことについて、問題点や対応を考察していきましょう。

必要とする方が特養に入れない

特養入所の基準が「要介護3以上」となってから、要介護度1・2の人のサービスが手薄になったのではないかといわれています。要介護3になって入所した特養で、運動や栄養士が考えた食事を食べるなどケアサービスを受けた結果、改善して要介護2と判定される。これは、本人もスタッフが頑張った結果でしょう。それなのに、手薄とされている要介護1・2と判定されたら場合、「地域で暮らす支援をするように」という理由で退所させることとなったのです。

過去半年~1年における新規入所者の7割以上で要介護4・5の人を入所させれば、介護報酬で高い加算がつきます。これがあるのとないのとでは、経営上で問題が出てきてしまうことにもなりました。要介護3でなくても、徘徊があったり、認知症があったりという理由で、特養入所が適当な人は少なくありません。こうした人も、入所できる可能性が減ってしまっています。とはいえ要介護3と2では、きちんとした線引きができるほど体調に違いがあるわけではありません。特養の入所基準として、本人の心身の容態は確かにもっとも大切な基準でしょう。しかしサービス利用の必要度といったものも、入所要件に加えて欲しいと思います。

例えば大変な家族に寄り添わなければ、追い詰められた家族が要介護者を虐待するというケースもあるでしょう。また、介護離職の問題が注目されていますが、現在示されている介護休業ではまったく足りません。仕事を続けるなら入所施設を利用するしかありませんが、現実的にはなかなか利用できないことになります。働いている人の介護離職を問題にするなら、保育園の入所基準のように、現在正規で仕事をしなければならない家族が主な介護者になってしまうのかという点も入所基準にしてよいと思います。

本来あるべき目的・意義に反する現実

施設のプログラムで、自立度が上がるのは大切なことです。それにも関わらず、「お金にならない」「かえって算定分がなくなるなら、リハビリなど行わず寝かせきりにさせたほうが経営はラクになるのか」なんていうことも、机上では考えてしまいます。いったいケアマネジャーは、どういったプランを立てれば良いのでしょうか。

さらに問題になるのは、家を売って入所費用を捻出した人。そういう人は大勢いるのに、もし退所して地域に戻るというなら、その分お金を返却して地域生活ができるようにしなければどうにもなりません。施設側も、入所金を全額返金は行えないのではないでしょうか。この問題を明確にしておかないと、施設も高齢者本人も家族もお手上げです。

介護保険を利用する目的は“自立支援”のはず。それにも関わらず、「頑張ったのに環境が悪化する」ということになってしまいます。要介護度が低ければ自分の育った地域で暮らすことを目指した在宅介護なのに、一旦特養に入ってしまえば、もう自分が暮らしていた家はなくなっているのです。入所時の生活より退所したことで得られる生活の方がQOLは上がるということを保証しないと、介護保険本来の意義に反してしまいます。

また、介護度4・5の人に対する、入所施設でのプランはどうするのでしょうか。自立支援は目標にできませんし、「安らかに一生を終えられるプラン」を立てるべきだと思います。しかし社会資源は足りず、死生観もまだ確立されていません。場当たり的な対応で現場が混乱しないように、特別養護老人ホームの役割をしっかり整理するべきだと思います。

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